『わたしの主人公はわたし 他人の声に振りまわされない生き方』(平凡社)

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 ストレス社会と言われ、うつ病が(予備軍も加えると)10人に1人と言われる日本。2017年のWHOの報告によれば、世界的に見てもうつ患者数は3億人を上回り、年間80万人がうつ原因で自殺している。

 そんな時代に大ヒットしたコミックエッセイに『ツレがうつになりまして。』(細川貂々/幻冬舎)がある。ツレ(夫)のうつ発症にともなう戸惑いや苦悩を妻の視点から等身大に描き、うつに戸惑う人々を励まし続けるロングセラーだ。その著者がこのたび初のエッセイを上梓した。『わたしの主人公はわたし 他人の声に振りまわされない生き方』(平凡社)だ。

 うつ病を患ったのはツレ(夫)さんであったが、実は著者も長年「自分が大嫌い、私なんてどうせダメ」というネガティブ思考にはまって苦しんでいた。うつ病ではないが、うつの夫と酷似した考え方をしており、生きるのが辛くて仕方なかったという。

 50歳を迎え、やっとそんな生き方を脱するコツが分かってきた。自分の人生なのに、周囲に翻弄されるばかりで全然納得がいかない。自分が何をすべきか、何がしたいのかわからない。そもそも自信が無いから新しいことにチャレンジするのが怖い。そんな苦境の克服法が、可愛らしいイラストとともに、1つずつ紹介される。

 著者の試行錯誤を長年見守ってきたツレさんのコラムも掲載されており、その温かくも客観的な視線に「悩む人と暮らすコツ」を垣間見ることもできる。

波に溺れていい。いつか乗りこなせるようになるから

 本書はまず人生の波を乗りこなせなくても大丈夫、という気づきからスタートする。生きていれば不本意なことは必ず起こる。ムカっとするし、時には大きな怒りも湧いてくる。逆に喜びに舞い上がることもあるが、これはこれで大きな波なので翻弄されてしまう。とにかく、生きていると溺れてしまった、波に乗れなかったと落ち込むことは多い。が、そもそも溺れることは恥ずかしいことなのだろうか? 波を乗りこなしたいなら、一度はひどく溺れるのではないか? 失敗していいし、溺れていいのだ!

 あなたがもし今溺れているなら、そんな自分を責めず、辛さを誰かに話したりしつつ次の手を考えてみよう。焦らなくていいが、やってみないと分からないことも多いから少しずつ動いてみる。いろいろなアドバイスが耳に入るかもしれない。しかし世間にムリヤリ合わせることはない。頑張りすぎず、行き詰まったら身体を整えてみるのもよい手だ。もちろんやってみて達成できないこともあるが、大丈夫。今は難しくても、タイミングがあったらできるかもしれない。だから、力を抜いて、ふわっと…やってみよう。

 ここではまとめて紹介したが、本書では一つひとつのコツが丁寧に語られる。毛布や温泉のようにじわっと温かく、沁みる文章だ。近著『それでいい。』(水島広子との共著/創元社)もあわせておすすめしたい。

文=青柳寧子