ヴェンゲル監督(中央)は今季ラカゼット(左)とコラシナツ(右)を獲得したが…【写真:Getty Images】

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唯一の希望はサンチェスの残留。補強は進まず穴だらけ

 現地時間8月31日、欧州主要リーグの移籍市場が締切を迎えた。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はアーセナルの補強を読み解く。

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 昨季まで19年間続いてきたチャンピオンズリーグ出場を逃したアーセナル。アーセン・ヴェンゲル監督は昨季終盤から導入した3-4-2-1を今季も継続していくことに決めたようだ。

 このフォーメーションの生命線となるのは、エクトル・ベジェリンと新加入のセアド・コラシナツが担う両サイドだろう。1年間チームのクオリティを維持するためには、サイドで決定的な仕事ができる人材の補強を進めるべきだあったが、結局コラシナツしか獲得できなかった。とはいえシャルケから加入した筋骨隆々のファイターは持ち前の推進力を随所に発揮しており、すでに自身の獲得は間違いではないことを証明している。

 昨季44失点を喫した守備陣の立て直しも今夏の課題であったはずだが、CBの補強はうまく進まず。4バックでは高い対人能力とカバーリング力を発揮していたシュコドラン・ムスタフィは3バックへの適応に苦しんでおり、今季限りでの現役引退を表明しているペア・メルテザッカーも身体的な衰えは否めず、年間を通しての活躍は厳しくなってしまった。

 現状は守備の柱であるロラン・コシエルニーと、レンタルから復帰したロブ・ホールディング、サイドバックが本職のナチョ・モンレアルが3バックを構成しているが、計算できる控えはカラム・チェンバース以外にいない状況も大きな問題だ。守備陣はいつ崩壊してもおかしくない状況である。

 そしてプレミアリーグ第3節でのリバプール戦で早くも困難な現実を突きつけられた。接戦が予想されたものの、蓋を開けてみれば0-4の大敗。開幕からの4試合ですでに2敗を喫しており、ヴェンゲル体制22年目は厳しい船出となってしまった。

 今夏唯一の朗報は、アレクシス・サンチェスの残留だろう。移籍が濃厚とされたエースのモチベーションを維持できるかは気がかりだが、メスト・エジルとのコンビは攻撃の絶対的な軸であり、彼らが欠けてしまうと著しくクオリティが低下してしまう。

 昨季新加入のルーカス・ペレスがことごとく期待を裏切った前線には、リヨンからフランス代表のアレクサンドル・ラカゼットを獲得した。しかし、マンチェスター・ユナイテッドのロメル・ルカクや、マンチェスター・シティのセルヒオ・アグエロとガブリエル・ジェズス、チェルシーのアルバロ・モラタ、トッテナムのハリー・ケインらと比べると小粒感は否めない。

 とはいえ背番号9を与えられたラカゼットはプレミアリーグ開幕から4試合で2ゴールを奪って好スタートを切っている。フランス1部で3年連続20得点の実力を発揮できれば、代表でもチームメイトのオリビエ・ジルーとのポジション争いでも優位に立てるだろう。

 ヴェンゲル監督はこのまま3バックを続けるのか、それとも別のフォーメーションを採用するのか。そして新戦力と既存の選手たちを組み合わせて魅力的な攻撃ユニットを作り、守備の不安を払拭できるか。CL出場権奪回を目指す戦いは前途多難だ。

補強・総合力診断

IN
DF セアド・コラシナツ(シャルケ)
DF カラム・チェンバース(ミドルスブラ/期限付き移籍期間満了)
MF ジャック・ウィルシャー(ボーンマス/期限付き移籍期間満了)
FW アレクサンドル・ラカゼット(リヨン)
FW チューバ・アクポム(ブライトン/期限付き移籍期間満了)

OUT
GK エミリアーノ・マルティネス(ヘタフェ/期限付き移籍)
DF ガブリエウ(バレンシア)
DF キーラン・ギブス(ウェストブロムウィッチ)
DF カール・ジェンキンソン(バーミンガム/期限付き移籍)
MF アレックス・オックスレイド=チェンバレン(リバプール)
FW ヤヤ・サノゴ(トゥールーズ)
FW ルーカス・ペレス(デポルティボ・ラ・コルーニャ/期限付き移籍)

補強評価:E

 新フォーメーションの生命線であるサイドのスペシャリストとしてコラシナツの獲得は重要な成果。また、ラカゼットの加入も攻撃陣の戦力アップには繋がるだろう。しかし、アーセナルが期限付き移籍からの復帰以外で新たに獲得した選手はこの2人のみであった。

 補強ポイントのはずだったセントラルMFやCBの補強は全く進まなかった。今季こそ大型補強か…と思われたものの、結局財布の紐の固さは例年通り。ポジションごとの戦力バランスに不安がある現状のまま優勝を狙うことができるのか大きな疑問が残る。もはやCL出場権を獲得できるトップ4入りは厳しい。

総合評価:E

 今季アーセナルの1トップを争うのはラカゼットとジルー、そしてウェルベックだろう。だが、どの選手も優勝を争う他のライバルチームのストライカーたちと比べた時に見劣りするのは間違いない。一方で2列目のクオリティはA・サンチェスの残留によって維持できそうだ。ただしエジルとサンチェスが怪我なく年間を通して安定したプレーができるかに、チームの浮沈が左右されるだろう。

 コシエルニーを中心とした最終ラインに関しては、3バックを任せられる選手が少ない致命的な欠陥を抱えている。夏の移籍市場で戦力的な上積みはほぼなく、不安は解消されないままとなった。

 全体として、優勝を狙うチームに仕上がっているかと問われれば、ノーと言わざるを得ない。昨季終盤に解任論が噴出したヴェンゲル監督に、もはや失敗は許されない。名将の名に恥じない意地を見せ、アーセナルを再び高みに導きたいところだ。

text by 編集部