UEFAチャンピオンズリーグが開幕し、グループリーグ初戦でバルセロナがユベントスを3-0で下した。


メッシの活躍でユベントスに大勝したバルセロナだが......

 昨季の準々決勝の再現となる顔合わせで、拮抗した接戦が期待された強豪同士の対決も、終わってみればバルサの大勝。華麗なる”メッシ・ショー”となった。

 リオネル・メッシは自ら2ゴールを決め、残る1点も、メッシのクロスが相手DFにはじかれたところをイヴァン・ラキティッチが押し込んだもので、実質メッシのアシストと言ってもいい。つまりは、2ゴール1アシスト。この日のバルサのチャンスは、ことごとくメッシのプレーから生まれていたことを、数字もしっかりと物語っている。

 結果的に大差となったこの試合において、勝負の流れを大きく決定づけたのは、前半終了間際に生まれたメッシの先制点だろう。

 メッシは中盤で縦パスを受けると、前を向いてそのままドリブル。ペナルティエリア手前でルイス・スアレスとの高速ワンツーを決め、左足で豪快に蹴り込んだ――と、文字にすれば、簡単そうなゴールである。

 しかし、メッシがドリブルをしている時、ペナルティエリアからバイタルエリアにかけてのゴール前には、十分にユーベDFの数が揃っていた。そこにシュートまで持ち込めそうなスペースは見当たらなかった。

 ところが、メッシはスアレスとのパス交換によって相手DFを少しだけ動かすと、左足を一振りだけできる時間と空間を確保。まんまとワントラップシュートを決めてしまうのである。

 優れたストライカーを評する時、「一振りで試合を決められる」という表現が用いられることがあるが、この日のメッシはまさにそれ。電光石火の一振りで勝負を決定づけてしまった。

 とはいえ、終わってみればメッシ・ショーとなってしまった大差のゲームも、内容的に見ればスコアほどの差があったとは思えない。特に前半のユーベは、ボールポゼッションでこそバルサに上回られていたものの、バルサにほとんど良さを出させず、うまくボールを奪って効果的なカウンターにつなげていた。メッシに先制点を許すまでの44分間は、ユーベペースで試合が進んでいたと言ってもいい。

 中でも、組織的な守備は非常によく機能していた。

 バルサが低い位置でボールを回している時には、横に広く、ゆったりと形成されている守備ブロックが、前線の選手のボールへのアプローチを合図に、ブロックがきゅっと縮まり、ボールを囲い込みにかかる。特にスタンドから見ていると、ボールの位置によって伸縮自在の守備ブロックがバルサボールを網にかけていく様子が、非常によく分かった。

 これによって、ボールの近くに複数の選手がいる状態を常に作れるため、数的優位でボールを奪いにかかれる。仮にメッシがドリブル突破を試みてひとりがかわされても、2人目、3人目が襲い掛かってボールを奪い取っていた。

 さすがのメッシもボールを奪われるシーンが多く、たまらず下がってボールを受けに来る回数が増え、ユーベの守りに手を焼いている様子だった。

 前半のバルサは、ユーベの守備ブロックの外でボールを回す時間が長くなり、ブロックの中でパスを待っているのは、スアレスひとりだけ。これでは攻撃をスピードアップさせることはできず、効果的な崩しが生まれるはずもなかった。

 ただ、ユーベに残念だったのは、完全に狙い通り網にかけて奪えているはずのボールを、個々の選手がトラップミスしたり、つなごうとしてパスミスしたりと、自らの失策によってフイにしてしまうことが多かったことである。せっかく組織的な守備が機能しながら、試合の主導権を決定的につかみきれなかった要因だ。

 センターバックのメディ・ベナティアが楽にカットできたはずのボールを処理し損ねてメッシに拾われ、2点目を失ったシーンなどは、まさにその象徴だった。

 また、メッシに先制点を決められて以降、メッシがボールを持った時にユーベDFの足が止まるようになったことも、バルサの攻撃を勢いづかせた。メッシに網を破られたイメージが強すぎて、ポジションを動かすことが怖くなってしまったのだろう。もちろん、体力の低下もあっただろうが、まるで金縛りにあったかのようだった。

 後半に入ると、足が止まって穴だらけになってしまったユーベ守備網に対し、バルサは本来のリズムでパスを回せるようになった。こうなってはもう、ユーベはお手上げだ。

 それを考えると、ユーベの主力選手にコンディション不良や出場停止によって、欠場者が相次いだことは痛かった。結果的に、いかに組織で上回ろうとも、選手個々の能力にねじ伏せられてしまう。そんな切ない試合になってしまった。

 大雑把に言えば、優れた個人能力の有無、すなわちメッシの存在が勝敗を分けた。あるいは、メッシとパウロ・ディバラの差が勝敗を分けたと言ってもいいかもしれない。ディバラが何度か訪れたチャンスをひとつでも決めていれば、試合がまったく違う流れになっていた可能性はある。ユーベには悔やまれる敗戦だったに違いない。

 しかし、裏を返せば、バルサの勝利はメッシ頼みだったということでもある。

 バルサがテンポよくパスを回し、どこからでも崩せる攻撃力を備えていたのは、もはや昔の話。メッシ、スアレス、ネイマールの強力3トップが、最大の武器にして頼みの綱となり、そして今季は、その一角であるネイマールがクラブを離れた。

 こと点を取るということに関して言えば、今季のバルサにメッシ依存の傾向が強まったとしても不思議ではない。メッシが抑えられれば、メッシがコンディションを落とせば、たちまちバルサの得点力は低下することになりかねない。

 確かにこの日、メッシはスゴかった。ひとりだけ、次元の違うスピードとテクニックを見せ、イタリア王者を相手に堂々とショーの主役を務めあげた。

 だが、それを手放しに喜んでいていいのかどうか、その判断は難しい。

 メッシ頼みのバルサと、組織の構築が進んでいるユーベ。まだ始まったばかりの長いシーズン全体を見通した時、どちらがより多くの収穫を手にしたかは、3-0のスコアからは見えてこない。