北勝富士(右)は“無意識”のうちに横綱日馬富士を破った

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■大相撲秋場所4日目(13日、両国国技館)

 「意識が飛んでしまい、当たった瞬間のことしか覚えてない」

 子供のころからの夢だった結びの一番で日馬富士を寄り切り、先場所の鶴竜に続き金星を挙げた北勝富士はそう振り返った。

 「十両のときにも同じ経験がある。今日は気がついたらお客さんのワーッという声が聞こえ、目頭が熱くなった。いまになって写真のように、一つ一つの場面がつながってきた」

 無意識のまま勝って、わしづかみにした懸賞金は26本。手取り78万円の荒稼ぎだ。

 埼玉県所沢市出身では初の幕内力士。幼いころからいろんなスポーツに親しみ、相撲は小4のときから、地元の相撲クラブで手ほどきを受けた。

 はじめはお世辞にも強いといえず、監督から「見込みがない」とまで言われた。しかし、大の負けず嫌い。歯を食いしばって稽古し、所沢・南陵中3年で全国中学選手権で優勝し「中学横綱」に輝いた。

 さらに埼玉栄高3年で高校総体を制し「高校横綱」。日体大に進むと2年で全国学生選手権で優勝し「学生横綱」とアマの実績は申し分ない。

 「北勝富士は10代の頃は、けっこうかわいい顔をしてた。いまは目の上がこぶみたいに膨らんでいる。稽古でかましすぎて変形してしまった。いってみれば稽古の“勲章”みたいなものだ」とは関係者の内緒話だ。

 最大のライバルは東洋大出の御嶽海。大学4年の学生選手権準決勝で敗れ、有効期間1年の幕下付け出し資格「学生横綱」を再取得できず、プロでは前相撲からのスタートになった。「いまだに夢に見るほど悔しい」とか。

 御嶽海はひと足先に役力士になったが、初の上位総当たりとなった先場所は1横綱2大関を撃破し、存在感では負けないほどになった。

 「思い切りがいい。体にも恵まれている。器用なところがあって、ときどき差したりするが、突き押しに徹すればもっとよくなる」とは藤島審判副部長(元大関武双山)。上位陣が休んでいる間に、楽しみな若手が着々と力をつけていく。