メッシ(左)との比較で試合前は散々持ち上げられていたディバラ(右)だったが…【写真:Getty Images】

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昨シーズンのCL準々決勝再現とはならず

 9月12日、17/18シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第1節のバルセロナ戦に0-3で敗れたユベントス。16/17シーズンの準々決勝ではバルサを2戦完封していたが、今回は3ゴールを許してしまった。ユーベの強固な守備組織はなぜ崩れてしまったのか。戦術的なアプローチがうまくいっていたなかで生じた誤算とは。(文:神尾光臣)

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「Barca senza pieta, Juve senza Messi(バルサに手心はなく、ユーベにはメッシなし)」

 CLバルセロナvsユベントス戦から一夜明けた13日、ガゼッタ・デッロ・スポルトの中見出しである。2得点を許し、かつイヴァン・ラキティッチのゴールにも絡んだリオネル・メッシ一人にやられた(採点は9)と言わんばかりのタイトルだ。

「メッシは天上にまばゆく輝く星、一方で(パウロ・)ディバラはまだ地球に近い衛星に過ぎない」などと、試合前に「メッシの後継者は彼だ」などとメディア自らが散々持ち上げていたユーベの新10番をこき下ろした。

 ユベントスの地元トリノを本拠とするトゥットスポルトはもう少し露骨である。1面で「CAMP NOOO! のと見出しとともに、アレックス・サンドロ、メディ・ベナティア、ゴンザロ・イグアイン、ドゥグラス・コスタ、そしてディバラの5人に採点4を付けたことを写真入りで掲げた。

「ユベントスには多くの選手が(故障で)欠けていた。それは事実だ。しかし、言い訳にはならない。今度ばかりはアッレグリ監督の謀略でもあまりに足りず、ブッフォンも奇跡は起こせず、期待の集まっていた男2人も裏切った。ディバラは溺れ、イグアインは消えた。幻想は前半だけで終了し、あとはメッシにやられた」。こちらは、コリエレ・デッロ・スポルトによるマッチレポートの一節である。

 それにしても、どうしてこのように崩れたのか。昨シーズンのCL準々決勝の2戦で見せた強固な組織サッカーは、なぜ今回はバルサの前に機能しなかったのだろうか。当時と比較し、レオナルド・ボヌッチやダニエウ・アウベスが抜け、この試合ではマリオ・マンジュキッチも故障で欠場となった。やはり彼らが不在だと、昨季のようなサッカーの実現は不可能ということなのだろうか?

戦略は正しかったが…前半に生じた決定的な誤算

 前半に限れば、ユーベはそれほど悪い試合運びをしていたわけではなかった。むしろ、戦術的なアプローチはうまくいってさえもいた。

 マッシミリアーノ・アッレグリ監督は、組織守備のやり方自体は大きく変えてはこなかった。表記上は3ボランチにディバラとドゥグラス・コスタの2シャドーを敷いてはいたが、守備にはドゥグラス・コスタは中盤へと引き4-4-1-1という形を取る。ウイングハーフを使いフラットに並べた中盤でゾーンを敷き、しっかり引いて守備を整えるというアプローチは昨季の試合と同様だった。

 しかも、バルセロナの攻撃に対してもきちんと人を合わせることはできていた。ウスマン・デンベレが前線に張りネルソン・セメドがフォローに来る右サイドには、アレックス・サンドロとドゥグラス・コスタが縦に連動して対応する。

 一方、ジョルディ・アルバのオーバーラップ主体となる左サイドには、マッティア・デ・シーリオがその動きを見る。そして先発起用されたロドリゴ・ベンタンクールはアンドレス・イニエスタを見て、積極的に中へと絞った。

 中央ではスペースを収縮させ、メッシが前線から中盤に落ちてくる動きも消して警戒。最後にはミラレム・ピャニッチがボールを拾って攻守を切り替え、両サイドのスペースを逆に突いた。新戦力のブレーズ・マテュイディも、タフな守備のみならず素早い攻撃の切り替えという点でもチームに貢献を果たしていた。

 バルサに6割がたボールを持たせる一方で、相手にシュートまでいかせず逆にカウンターでチャンスを作る。ユーベの前半のシュート数そのものも、また枠内シュートの数もバルサ上回っていたことは、彼らが正しい戦略のもとで試合を運んでいたことを証明している。

 だが、決定的な誤算はその前半に生じた。まずは言わずもがな、攻撃陣が6つはあったシュートチャンスを決めきれなかったこと。そしてもう一つは、機能していた組織守備が45分に少しほころびを見せ、そこをメッシに突かれたということだ。

なんとも不得手な失点後の試合運び

 ワンツーを要求した味方に正確なリターンで応えたルイス・スアレスと、非常に速いパスアンドゴーから正確極まりないシュートを放ったメッシを褒めるべきシーンではある。だが問題はその前にあった。

 攻守が入れ替わり速攻を喰らっていたユーベは、左サイドから組み立ててきた相手の攻撃を遅らせることに失敗し、帰陣が乱れた。中盤ではピャニッチが中央から少しやや左に流れたメッシに寄った一方、中に入れ替わろうとしていたベンタンクールの動きが遅れる。ユーベのCB陣の前にはぽっかりとスペースができており、メッシとスアレスにそこを使うイメージを描かれてしまった。

 そして堅守からのカウンターというユーベの戦略プランは、先制点を食らった時点で崩れた。後半は当然逆襲に掛かるため、しっかり引いていた最終ラインの選手たちも前がかりになってしまう。

 そんな形でバルセロナ相手にスペースを与えれば、攻撃を喰らうのは自明。おまけにデ・シーリオの故障で、右サイドバックにはMFのステファノ・ストゥラーロが緊急コンバートされる始末だ(シュテファン・リヒトシュタイナーはUEFAの選手登録リストから外されていた)。先制点を奪われて守備ブロックを前に上げなければならなくなった時点で、勝負は決してしまったのである。

 それにしても、ゴールを奪われた後の試合運びは昨シーズンに引き続きなんと不得手なことか。昨季のユーベの堅守は、堅実に自陣に引いてコンパクトな守備組織を作ることで保たれていたもの。

 同点に追いつくところまででエネルギーを消費し、足の止まった後半にレアル・マドリーに畳み掛けられたCL決勝と試合の流れは異なるが、相手を戦術にはめて先制点を奪わないと苦しいという点では共通している。8月のスーペルコッパ・イタリアーナでも、やはりラツィオに先制され最終的に敗れているのだ。

「ショックは引きずらないよ。今日の間違いを糧に、次からはもっとアグレッシブに戦ってゴールを奪うまでだ」とピャニッチは強気に語った。ただ、立て直しは効くのだろうか。

(文:神尾光臣)

text by 神尾光臣