米アラバマ州出身のトランスジェンダーモデル、ダスティ・ローズ(2017年9月5日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ダスティ・ローズ(Dusty Rose)はモデルになるのに1年もの時間を費やした。幾度も壁にぶつかりながらもようやく、トランスジェンダー(性別越境者)に特化したモデル事務所の創設者、ペッシュ・ディー(Peche Di)の目に留まり幸運をつかんだのだ。

 19歳のトランスジェンダー女性であるローズは、保守的な米アラバマ州(Alabama)南部で生まれ育った。インスタグラム(Instagram)を通して、2015年に創立されたこの事務所を見つけたときは大喜びしたという。「『このような人たちに出会うことこそが、私がニューヨーク(New York)に来た理由だ!』と思った」。身長185センチのモデル志望者は、ジーンズとピンクのスニーカー、黒のタンクトップ姿で語った。

 今年2月にフランス版ヴォーグ(Vogue)の表紙を飾ったブラジルのヴァレンティナ・サンパイオ(Valentina Sampaio)や、ファッションウィークのランウェイを歩いたアンドレア・ペジック(Andreja Pejic)といった数人のトランスジェンダーモデルが成功を収めている一方で、多くは偏見の壁に直面し続けている。

 高校に在学中の15歳で性別移行を始めたダスティによると、トランスジェンダーの人々に寛大なニューヨークでもそれは問題なのだという。「母親と共にここへやって来た時、誰かが私に向かって『オカマ』と叫んだ。母が『なんてこと、ここはニューヨークよ。こんなことが起きるべきじゃない』と驚いていたが、『どこでも起きることよ』と私は答えた」

■「こいつに触られたくない」と侮辱されて

 ニューヨークのヘアサロンで働いているダスティ。「中には『これには頼みたくない』『これに触られたくない』と言ってくる顧客もいる。『彼女』や『彼』でさえない、『これ』呼ばわりをされる。そういったことに嫌悪感がある」と彼女は語る。顧客に帰るよう頼んだことが一度あるという。

 27歳のペッシュに出会う前、ダスティは履歴書をいくつかのモデル事務所に送った。毎回、アラバマ出身の若いトランスジェンダー女性だと自己紹介したが、成果はなかった。「トランスジェンダーであるため多くの身体的特徴と闘っている。求められることが多くなるからだ。小柄でなくてはならないとか、痩せていなくてはならないとか」と彼女は言う。「トランスジェンダーは典型的に大柄だから、それはどうしようもない。男性的すぎたり、女性らしくないのも仕方ないこと。『だめだよ、私たちが必要なのは女性モデルだけなんだから』と言ってくるフォトグラファーたちには『オーケー、分かった』と答えるしかない」

■トランプ政権の大きな影響

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がトランスジェンダーの軍入隊を禁止したことも問題に拍車をかけた。「彼は国民に『私は大統領だ。私が人々をこんなふうに扱えるのだから、君たちもできる』と示した。そのせいで憎しみを隠さない、正当な理由のない攻撃が増え、人々は『それでもいいんだ』と感じている」。

 同じくトランスジェンダー女性であるペッシュは、グリニッジ・ヴィレッジ・スタジオ(Greenwich Village Studio)での撮影で初めて顔を合わせた時、すぐさまダスティを安心させた。ペッシュはタイからの移民で、世界で初めてトランスジェンダー市場に特化したモデル事務所「トランス・モデルズ(Trans Models)」を立ち上げる際に、同じような困難を経験していたからだ。 ペッシュが立ち上げた事務所には現在、男女19人のモデルが所属しており、数人の男性を除きほとんどが女性だが、中には自身を男でも女でもないと考えるモデルも抱えている。タイで10年前にモデルを始めた当初と比べ、「もちろん、進歩は感じている」とペッシュは語る。「トランスジェンダーモデルたちは今でさえ活躍しているが、以前は受け入れられなかった」

「ナイキ(Nike)」、「メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)」、「スミノフ(Smirnoff)」、トランスジェンダーと公表しているモデルのハリ・ネフ(Hari Nef)がアメリカで広告塔を務める「ロレアル パリ(L'Oreal Paris)」といった有名ブランドに引っ張りだこのペッシュ。しかし米大統領について語るときは言葉を詰まらせる。「恐ろしいわ。政府が私たちを受け入れていないように感じる。どうやって生きていけばいいの?」

■華やかなショーモデルを目指して

 子どもの頃、女性になりたいという欲望を隠し通してきたペッシュは、出会い系アプリ「ティンダー(Tinder)」がトランスジェンダーをブロックしたことを受けて、出会いアプリ「ティーデート(Teadate)」を立ち上げた。このアプリは既に2万5000人のユーザーを抱える。

 ニューヨーク・ファッションウィーク(New York Fashion Week)では、さらに多くのショーに登場することを、そして最終的には事務所のモデルたちをランウェイに登場させるのがペッシュの目標だ。長期的な目標は、ボディーローションやシャンプー、ボディーウォッシュといった商品の広告キャンペーンに、トランスジェンダー男性とトランスジェンダー女性を出演させることだ。トランスジェンダーの人々をスクリーンで見ることは「人々の心を強く動かすだろう」と信じている。「全裸ではなく、部分的に」彼らのナチュラルビューティーを見せたいのだと言う。 そしてダスティの夢は、米国で最も競争率の高い、モデルにとって名誉ある有名なショー「ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria's Secret)」のエンジェルになることだ。
【翻訳編集】AFPBB News