幸福度ランキング1位のデンマーク。彼らの生き方から学べることとは

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夫婦でリクルートを辞め、家族で世界を旅し始めてから3カ月が経ちました。現在までに欧州とアフリカを含め10カ国を旅して来ましたが、今回は北欧のデンマークを訪れて、僕が感じたことをご紹介します。

デンマークといえば「幸福度ランキングNo.1」ということでも知られていますが、僕らが学べることがあるとすればどういったことか、「働き方」「教育」「家族」という観点から考察してみました。

佐藤邦彦(Kunihiko Sato) | Sato’s Adventure (Facebook Page) |

新潟県出身。33歳。早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、2008年に(株)リクルートホールディングス(旧(株)リクルート)に入社。人材領域で営業やマネジメントを経験後、シェアリングエコノミーの海外事業開発、リクルートグループの働き方改革を担い、2017年4月に退職。5歳の娘、4歳の息子、同じくリクルートを退職した妻と4人。ひょんなことから1年間の世界放浪の旅に出る。民泊をしながら現地の人たちと触れ合い、時には企業などのインタビューを通じて、現地の”働き方” “家族” “教育”について学んだこと、気づいたこと発信中。

高福祉社会がもたらす生活レベルの安定性

Photo: 佐藤邦彦

デンマークの「幸福度ランキングNo.1」を支えるのが、”高福祉社会システム”です。

消費税率は25%と世界3位の高さで、所得税は40%〜60%で概ね給料の1/3が控除されるなど、日本と比べると非常に税率は高いです。

そう聞くと「高すぎるのでは?」と思ってしますが、僕が話を聞いたデンマーク人たちは皆、すべからく納得していた様子でした。なぜかと聞くと、教育費は大学まで無料。医療費も無料。そして、出産費も無料。保育施設利用料の2/3は国がまかないます。

さらに介護も行政がおこなうため、まさに”死ぬまで無料”が続きます。なるほど高額な税金を納めるかわりに、これだけ自分に税金が還付される感覚を普通の生活の中で持てれば、納得できる話かもしれません。

もう1つの焦点は”累進課税ではなく一律課税である”という点です。要は「年収300万円の人も1000万円の人も等しく税金取りますよ」という話。それでいて「その税金は必要な人に分配してあげましょうね」という考え方で、税制が敷かれています。

例えば先ほどの医療費などは、家庭医と呼ばれる主治医が国民ひとりひとりに割り当てられ、主治医が判断した場合に限り病院で診療を受けられるという仕組み。税金の無駄遣いを防ぎ、必要な人に使うという合理的なシステムの例です。

そういう社会システムに触れた上で、一般的なデンマークでの”働き方”に話を移します。何人かの人に話を聞いてみたのですが、皆口を揃えて「17時には仕事は終わるよ」と言っていました。法律で労働は週37時間までと決められているのだそうです。つまり、週5日勤務なら1日あたり約7時間。残業という概念は、ほぼ存在しません。

同様に、年間6週間の有給休暇を取る制度も定められており、普通に取得が可能です。仕事は効率的にやってこそ、という意識が高いようです。誤解を生まないように触れておくと、仕事はどうでもいいのではなく、効率的に仕事ができる人ほど優秀であるという意味合い。

確かに16時過ぎになると、車よりも多いんじゃないか? という勢いで道路は自転車で埋めつくされ、スーパーには奥さんからお使いを頼まれたのか、男性がレジに並ぶ姿が多いのが印象的でした。

さて、これは何を意味するのでしょうか。デンマークの社会システムは、高福祉国家の名の通り、みんなが一定の生活水準を保障される環境にあります。話を聞いた人たちの言葉を借りれば、「必要以上に頑張らなくても、生きてはいける」という、経済的不安が比較的小さい社会であるということが見えてきます。この社会システムの存在、そしてそれが国民も納得の上に運用されていることが、幸せ度ランキング1位の大きな要因であるということは言い過ぎではないでしょう。

「どうしたいか?」であり、「こうしなさい」ではない教育

Photo: 佐藤邦彦

デンマークで1週間ほど民泊させてもらった家があります。Aninja Larsenさんの家です。仕事はセラピストをやっていて、ドラッグやアルコールに悩む老若男女の更生の手助けをしています。彼女には2人の娘たちがいて、13歳になるEmmileaはアルバイトをしながら、中国の学校へ転校したいと勉強中。

将来は母親のようになりたくて、デンマーク語や英語に加え、第3言語に中国語を選び、より多くの人を助けたいのだそうです。13歳でそれだけのことを考えて行動ができているとは、学校の中でもさぞ珍しく意識の高い子どもなのだろうと思いましたが、そうでもないといいます。

デンマークの教育の特徴は、”小さい頃から親や先生に「あなたはどうしたいの?」と問われながら育つ”という点にあります。義務教育は10年間ですが、「○歳になったら一律進級」という制度はなく、子どもの成長に合わせて進級も選択するそうです。

小中学校ではテストで序列化することは禁止。指導内容は国が一律で決めずに、各学校が決める。そもそも”義務教育”は学校に行くことでは無いので、学校に行かずに親が教育するとしてもよい。高校以上になると学校は資格を取得する場になり、就職にも直結するのだそうだ。

「自分がどうしたいか?」の意思表示を求められる環境で育てる。そのためには重要な前提条件があると思います。それは”みんな違ってそれでいい”というカルチャーが染み付いているということ。

たとえば子どもが留年を選択することは、デンマークではネガティブなイメージはありません。しかし、日本では”○歳になったら、みんな○年生になるもの”という偶像があるので、そこからは外れにくし、暗黙的にそれが「恥ずかしいこと」「劣っていること」という心象をも持たせる傾向があります。教育が生み出す風土が、まったく違うのです。

高福祉国家がもたらす? ”家族の在り方”

image: Vetreno/shutterstock.com

みんなが経済的不安の小さい社会システム。みんなそれぞれ違うということがカルチャーとして受け入れられ、自分がどうしたいのか?を問われる文化。そんな話を聞くと、なんて素敵な国だ!それに比べて日本は…などと思いがちですが、ここに別の側面も存在します。それは離婚率50%(デンマーク統計局)という数字。

Aninjaもバツイチで、娘たちは隔週で父親の元で過ごす週と、母親の元で過ごす週を分けていました。彼女は自分の元に娘たちがいない週は、夜21時くらいまで仕事をし、娘たちがいる週は14時に仕事を切りあげる日をつくるなど、仕事の時間を切り盛りして働いています。周りにバツイチであることは開示しており、職場の理解も得られているからこそ可能なのだそうです。

この離婚率の高さの背景の1つには、女性の就業率(15〜64歳)が約75%(デンマーク統計局)と高いことが挙げられそうです。「企業は産休明けから復職する女性は産休前と同じポジションに戻す義務がある」というのも、当たり前のようで、それが法律で定められている言うから驚き。要は、女性の経済的自立が確立されているので、女性はその点において男性に頼る必要がないのです。教育費も医療費もかからない上に、協議離婚はオンラインで約1.5万円で済むこともあるといいます。離婚へのハードルが非常に低いわけです。

かつてGoogle、Microsoftで働いていたOle Stormさんもまた、離婚をしています。彼の場合、デンマークでよくある働き方とは逆行するようですが、家族のためにと思って毎日深夜まで働いていました。それが結果的に夫婦間での理解にズレが生じて、離婚を選択。今はアスリートのドーピング検査を支援する協会に所属し、全世界のトレーナーのマネジメントをデンマークで担っています。いつでもどこでも働ける”働き方”を手にしました。

さて、この離婚というテーマにもデンマークらしさを感じます。

社会的に見ると離婚が増えて出生率も低くなるからマズイだろという話もあるように思いますが、離婚=悲観ではないと捉える人も多いようです。自分たちのありたい姿に向けて離婚という選択ができたという捉え方で、「離婚=選択の自由」だと、前出の2人は言います。

また、離婚後となれば夫婦の関係には一線が引かれ、子どもたちが週末に親権を持たない親元に会いに行くのが日本の典型例だと思いますが、隔週で子どもたちの時間をシェア(ちなみにペットの犬もシェア)をし、昔の親友のように家を出入りするのを見るにつけ、新鮮な感覚を覚えました。

これもまた、女性の経済的自立により男女平等のメンタリティが強いからこそ、可能な家族のカタチかもしれません。

”働き方の選び方”のパラダイムシフトを

さて、僕がデンマークから日本が学べると思うこと。それは”働き方の選び方”をパラダイムシフトするということです。

自分が働き方を選択する時に、”暗黙のべき論”に囚われていないか? それに気づくことが大切だと僕は思います。昔ながらの例でいえば「偏差値の高い大学に行って、名のある大企業に就職して、出世すること」がそれであり、最近の例でいえば「働き方をパラダイムシフトしなければいけない」という風潮がそれです。

主語を個人においた時、「リモートワークをする」「副業をする」「フリーランスで働く」などは手段ですが、それが目的化されたり、あたかもそれが”これからの正解”であるかのように日本では語られやすいのです。

自分が決めているというよりは、誰かが決めている”べき論”に囚われてないか? その問いこそが、”働き方の選び方”をパラダイムシフトさせる起点になるのではないでしょうか。

では、具体的にはどうしたらいいのか? 1つの方法は「どうありたいか?ではなく、なにが問題なのか」を考えるということ。デンマークのような社会福祉制度と教育風土がない日本で育った人にとって、「どうありたいか?」を考えることは意外と難しいのではないかと思います(もちろん、自身で確固たるありたい姿が描ける人もいますが)。

実はデンマーク人に聞いても「けっこう難しいんだよね」と答える人は少なくありません。彼らはその時、変わりたいと思う動機、つまり問題や漠然とした不安を捉えることから始めるのだそう。

Aninjaにとっては「(高社会福祉が与えられることで)人に優しくなれない自分を変えたい」からセラピストであり、Oleにとっては「幸せな時間をマネジメントできる自分になりたい」から今の働き方がある。そして、離婚という選択肢も自ら積極的に”選んでいる”。

残念ながら、時間軸を考えると日本では、国や企業が個人の自立的な選択を後押しする環境を整えるのを待つ余裕は無いでしょう。環境を変えるためにも、個人が変わっていく必要があると強く思います。

その意味において、北欧の小国デンマークから学ぶべきところは多くあるのではないでしょうか。

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Photo: 佐藤邦彦