今年7月、政府は原子力発電に伴って出るゴミの処分に関する「科学的特性マップ」を公表しました。

 そもそもゴミはあまり考えたくない話題。特に原子力のゴミについては、政府あるいは電力会社の責任で対処すべきと突き放される方も多いかもしれません。とはいえ、わが国が原発のメリットを享受してきた見返りとして、既にゴミは存在しています。今回は原子力発電のゴミについて考えてみたいと思います。

 原発は、ウランでできた核燃料を燃やして蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して電気を起こすのですが、核燃料は一度使ってもまだ多くの資源を含んでいます。日本は石油や石炭などの化石燃料も輸入に頼っていますが、ウランも海外に依存しています。原発を始めた当初は特に、長期的にウラン価格が上昇していくと予想されていました。そうした背景から、一度使用した核燃料をリサイクルして再び使う「核燃料サイクル政策」の実現を目指したのです。

 再処理する工程で、放射線の非常に強い廃液が出ます。この廃液をどうするか。これまで複数の処分方法が検討されましたが、溶けたガラスと混ぜ合わせて形状を安定させ、分厚い金属で覆うなどしたうえで、地下300メートル以深に埋めてしまう地層処分が最も妥当であると考えられています。しかし、どこに埋設するのかの決断は容易ではありません。諸外国を見渡しても、決定済みなのはフィンランドやスウェーデンなど一部の国のみで、米国、イギリス、ドイツそして日本はどこに処分するか白紙の状態です。

 フィンランドやスウェーデンは、なぜ処分場の場所を決めることができたのでしょうか?

 以前来日したスウェーデンの処分施設建設予定地の市長は、決定プロセスの公開性・透明性や安全面に関して国の規制当局が適切に関与していたことに加えて、処分場が立地するメリットを市民が共有できたことを、挙げていました。政府からの補助金で市の財政に余裕ができるだけでなく、“ハイテク技術が集まる工業地帯”になることを期待して、誘致したというのです。単に土を掘って面倒なゴミを埋めることではなく、高度な安全管理に関する技術や、後世に危険物がそこにあることを伝える社会文化的手法など、さまざまな知見を必要とする未来に向けた事業だ−。そう考えていると聞きました。

 実はこうした考え方は北欧に独特というわけでもなく、カナダでは処分場の誘致に22もの自治体が手を挙げ、現在そのうちの9自治体で調査が行われています。しかし逆に、米国やドイツでは候補地と呼ばれるところがあったものの、拙速な判断が災いして、頓挫してしまいました。

 海外の経験に学ぶのであれば、まずネガティブ情報こそ開示すること、そしてプロセスの透明性を確保し、自治体の意思を尊重する姿勢が必要でしょう。悪い情報を伝えないということが、いかに信頼を損ね、のちのコミュニケーションを阻害するか、日本の原子力関係者は学んだはずです。半面、私たち国民も、この社会の一員として、解決に向けて取り組む姿勢が求められるのではないでしょうか。

 目の前のエネルギー確保を優先し、処分場も決めずに原子力の利用を始めたのかと先人を批判しても詮無いこと。解決に向けた努力をしないのであれば、私たちも後世の人たちからの批判を甘受せねばなりません。問題を先送りせず、解決に向けた努力したという姿勢を後世に示すためにも、しんどい課題こそ議論する社会でありたいと思いませんか?