有害鳥獣として駆除したニホンジカを有効活用するため、鹿肉をペットフードに加工して販売する小諸市の事業が、新たな野生鳥獣対策として注目されている。

 捕獲した鹿の大半はこれまで、焼却処分されていたが、命を無駄にせず、処理経費の削減にもつなげようと同事業を導入した。2年目となる今年は、本格的に商品製造を開始し、捕獲した鹿のほぼ全てがペットフードとして活用されている。

 小諸市は、県内の多くの自治体と同様、ニホンジカなどによる農産物の食害といった農林業被害が深刻化している。このため、平成23年度には、地元の猟友会に捕獲を依存してきた態勢を改めようと、市職員でつくる「実施隊」を結成し、被害防止に取り組んできた。

 市によると、鹿の捕獲頭数は、22年度の48頭から、28年度には310頭に増えた。頭数が増大したのに伴い、22年度は914万円だった有害鳥獣による被害額が、28年度には139万円に減少したという。

 捕獲した鹿は、焼却処分されるか、市内の動物園でライオンの餌にされるケースが多く、焼却処分には、1頭当たり1万〜1万5千円の経費がかかっていた。

 鹿肉は、低カロリーで高たんぱくなため、食肉の需要が高い。ただ、人間の食用にするには、品質を維持するために素早い処理が必要になる。ペット向けなら、処理時間をこれほど気にせずに済むため、市は昨年、県内の自治体で初めて、鹿肉をペットフードにする事業に乗り出した。

 市は、地方創生交付金などを財源に約6千万円費やし、処理・加工施設を整備。施設には、精肉用の金属探知機や放射性物質検査機を備え、安全面にも配慮した。加工作業は食肉処理会社に委託し、最大で年間700〜800頭を処理できる。

 事業の初年度に当たる昨年度は、捕獲した310頭のうち、276頭分の食肉をペットフード用の原料として、委託した県外の専門業者が加工した。焼却処分の経費が省かれた上、ペットフードの販売で採算性も見込めることから、農林水産省の「鳥獣被害対策優良活動表彰」で大臣賞を受賞したほどだ。

 29年度は生産態勢が整備されたため、自前の施設で加工まで行い、オリジナルブランドも開発。8月下旬から販売している。

 9月4日現在、市内で捕獲された133頭と、隣接する軽井沢町内で捕獲され、市内に持ち込まれた111頭の計244頭のうち、捕獲時の状態が悪くて使えなかった3頭を除く、241頭分の食肉が、ペットフードに活用されたという。活用率は98・7%に上る。

 ペットフードは犬用のみで、鹿肉100%の「鹿肉ジャーキー」と、鹿肉と寒天水を混ぜた「鹿肉ウエットフード」の2種類。「KOMORO PREMIUM(コモロプレミアム)」というブランドで、市内外のペットショップや動物病院で扱われている。

 市のふるさと納税の返礼品にも利用し、寄付金は野生鳥獣保護管理事業に充てる。

 市農林課の担当者は「人間の都合で奪った命を捨てるのはためらいがある。持続的で効果的な野生鳥獣対策を続けていきたい」と話している。(三宅真太郎)