国際社会の制裁により北朝鮮国内でガソリン価格が高騰していることはすでに本欄で伝えたが、穀物と生活必需品の価格も上昇していることが、北朝鮮国内のデイリーNK情報筋の証言でわかった。

このような現象は、11日午後(現地時間)に国連安全保障理事会で原油、石油精製品の輸出に制限を設けた対北朝鮮制裁決議2375号が採択される前から起きており、今後の推移が注目される。

貧富の格差が問題

物価上昇は、非合法な取引も含め貿易が活発に行われていた中朝国境地帯でも起きている。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、今までの制裁ではコメ価格に大きな変動はなかったが、今回は様子が違うと伝えた。

トウモロコシ1キロの価格は8月末の1900北朝鮮ウォン(約25円)から、今月11日には2700北朝鮮ウォン(約35円)まで上昇した。収穫期を迎えたにもかかわらず上昇しているため、さらなる上昇が予想されると情報筋は述べた。

また、平壌、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)、両江道の恵山(ヘサン)でのコメ1キロの価格は、先月末には5800北朝鮮ウォン(約75円)だったが、今月5日には6000北朝鮮ウォン(約78円)を突破し、上昇が続いている。

さらに江原道(カンウォンド)の内部情報筋によると、1本500北朝鮮ウォン(約6.5円)だったミネラルウォーター(商品名「シンドク・センムル」)の価格は2倍に、1丁1100北朝鮮ウォン(約14円)だった豆腐が2割ほど値上がりしている。

価格上昇の原因としては次のようなことが考えられる。

まずは売り惜しみだ。ガソリン価格の上昇を受けて、より値段が上がってから売ろうと売り惜しみをする商人が続出し、市場での品薄がさらなるガソリン価格の上昇をもたらしているが、穀物や生活必需品でも同様の現象が起きているというのだ。

情報筋によると、一部の商人は当局の監視の目をかいくぐって中国の業者に携帯電話で連絡し、制裁対象品目や価格動向について情報を聞き出している。物価上昇で一儲けしようと考え、より儲かる品目を物色しているということだ。

次に考えられるのが凶作だ。今年の北朝鮮では、春の干ばつ、夏の大雨で農作物の生育状況がよくないと伝えられている。それにより供給量が減ったことが考えられる。

さらに一部では、当局が供給量をわざと減らしている可能性を指摘する向きもある。原油同様に、食糧も備蓄に回しているというのだ。

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、中国の海関総署の資料を引用し、今年7月に北朝鮮が中国から輸入した穀物の量が、前年同月比で720倍になったと報じているが、価格上昇は、これらが市場に放出されず、備蓄用に回っていることを意味すると思われる。

北朝鮮は、大量の餓死者を出した1990年代の「苦難の行軍」と呼ばれる大飢饉以降、食糧事情が大幅に改善した。しかし、国家による配給システムは破たんしたままで、庶民は現金で食べ物を買わなければならない。

国民経済のなし崩し的な資本主義化が進行し、貧富の格差が広がっている今、貧困層は食べ物の価格がわずかに上昇しただけでも大きな影響を受ける。

(参考記事:北朝鮮の20代女性が山中で「究極の選択」をした理由

また、庶民の生活を顧みない独裁体制が、身勝手な政策を継続し、そこに金正恩党委員長の未熟さによる失政が重なれば、北朝鮮の人々の身にいわれなき悲劇が起きる危険性もある。