日本最高齢85歳の、現役チアリーダーを知っていますか? 滝野文恵さんは、還暦を過ぎてからシニアチアリーダーチーム「ジャパンポンポン」を設立し、20年以上も活動を続けてきました。


それ以外にも、53歳で単身アメリカに留学したり、80歳からウクレレを習い始めたりと、好奇心旺盛に人生をエンジョイする姿がとても印象的です。


年齢や常識にしばられていては、なにも始まらない

「85歳にして、最近ようやく老いを感じてきた」という滝野さんに、楽しく生きる人生のヒントを教わりました。●ちょうどいいタイミングはそうそうこない。行動あるのみ!

25歳で結婚し、1男1女を授かった滝野さんですが、夫婦生活はあまりうまくいかなかったそうです。自分をだましだまし暮らしていましたが、一念発起して家を出たのが52歳のとき。「『家を出たい』という気持ちは確かだけれど、同じだけ不安もあり、実行に移すまで悩みました。結局、気持ちの方が爆発して、家族の前で『一人でやってみたい』と宣言し、自分の言葉に押し出されるかたちで一人暮らしを実行に移しました」。今振り返って思うのは、「自分の気持ちも周りの環境も整った“ちょうどいいタイミング”なんて、そうそうやってこない」ということだそう。

「『娘が結婚したら…』と自分勝手に都合のいいことも考えていましたが、娘からは『ママ、私の結婚を待っていたらチャンスを逃すかもよ』、と言われたりして。家族に迷惑をかけたり、だれかを犠牲したりして、自分のやりたいことを押し通すのは心苦しいものですが、それは“いい子になりたい病”。できない理由、やらない理由を自分以外のところに見つけて、いい子でいようとしていただけなんです。なにかをやろうと思ったら、『悪いけど、ごめんね』で押しきらないと実現できないことってたくさんあると今は思います」。

人生は思っているよりずっと短いもの。「ちょうどいい時期」「都合のいいタイミング」を待ち続けるより、思いきって行動に移す方がいい、と滝野さんはいいます。●「もう年だから」は「やりたくない」の言い訳


85歳でも精力的に活動する滝野さんから見ると、自分から「もう、年だから」と枠をつくりたがる人が少なくないといいます。「私から見たら、まだまだ子どもとも思える40代くらいから、この言葉を口にしはじめるようです。でも、『もう年だから』はただの言い訳。『やりたくない』の口実だと思うのです。もちろん、健康であることが前提になりますが、やる気さえあれば年なんて関係ありません」。

実際、滝野さんがパソコンをはじめたのは58歳。アメリカから帰国して会社へ戻り、仕事上で必要になったので、独学で覚えたそうです。「今もノートパソコンで、ゲームにメール、調べものはもちろん、ジャパンポンポンのホームページの更新を行っています。とはいえ、失敗もたくさん。ほかの事務作業同様、若い方に託したいと思っているのですが、パソコンに対しては抵抗感が強いようで、『年だからムリです』と言われてしまって。でもやる気さえあれば、誰だってできると思います」。●生きがいなんてなくても、生きられる

ジャパンポンポンの活動をしていると、よく言われるのが「滝野さんの生きがいでしょ」という言葉。でも滝野さんはそのたびに、「そんなことはわからない」と否定します。
とあるテレビ局から取材の事前リサーチとして、「滝野さんの生きがいはなんですか?」と聞かれたときも、こう答えたそう。「『生きがい』って言葉は外国にはないし、言いませんよね。強いて言うならチアダンスかもしれないけれども、生きがいがなくても人間、ハッピーに生きていけるんじゃないですか? 生きがいなんてそんなもの、私、必要ないと思います」。

「これが生きがい!」とはっきりと言い切れる人は幸せだけど、みんながそうでなくてもいい、と滝野さん。「どうして、そんなに生きがい生きがいって言うのか。メディアが決めつけるような『生きがい』をみんなが持っているわけではないし、そんなあいまいな『生きがい』に縛られたり、『生きがいがない』からと悩んだりする必要はないと思うのです。自分のしたいことをして、楽しく日々を過ごして一生を終える。それでいいじゃないですか」。


世間の声にしばられず、年齢を言い訳にせず、目の前のことを純粋に楽しむ。それが滝野さん流、年齢を重ねてもポジティブに生きるコツなのかもしれません。滝野さんの生き様や考え方については、著書『85歳のチアリーダー』にたっぷり書かれていますので、こちらもぜひチェックを。

【滝野文恵さん】
1932年、広島県生まれ。関西学院大学卒業後、1年間アメリカ留学。25歳で結婚、1男1女を授かる。53歳、アメリカノーステキサス大学で老年学修士号を取得。帰国後、63歳でシニアチアリーダーチーム「ジャパンポンポン」を設立。平均年齢71歳、24人のグループ内最年長で今もステージに立つ。著書に『85歳のチアリーダー』(扶桑社)がある

<撮影/曽根川晶子 取材・文/ESSE編集部>