『あさがくるまえに』カテル・キレヴェレ監督、映画で使われる音楽の重要性を語る

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 9月16日に公開される映画『あさがくるまえに』のメガホンを取った、カテル・キレヴェレ監督のオフィシャルインタビューが公開された。

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 本作は、『ダゲレオタイプの女』のタハール・ラヒム、『毛皮のヴィーナス』のエマニュエル・セニエ、『Mommy/マミー』のアンヌ・ドルヴァルらが共演した人間ドラマ。交通事故に巻き込まれ脳死と判定されたシモンと、生き延びるためには心臓移植しか選択肢がない音楽家のクレール、ル・アーブルからパリへ紡がれる、愛と喪失、そして再生を描く。

 メイリス・ド・ケランガルのベストセラー小説をもとにした本作。原作のある作品を手がけるのは今回が初めてのキレヴェレ監督は、「原作に忠実であろうとする一方で、よい意味で原作を裏切るようなものにもしたかったのです。映画化の許諾を得る際、原作者のド・ケランガルと話したのですが、忠実な映画化よりも、物語を素材として生かしてほしいというようなことも言われました。人物間の関係性などは原作に忠実なままですが、原作に忠実であると同時に、原作からは自由になることがもっとも重要でした」と、原作小説のよさをどのように映画によって表すことができるのかが重要なポイントだったと明かす。

 制作を進めるなかで特に苦労したのは、「いかにバランスよく物語を組み立てていくか」だったというキレヴェレ監督。「臓器移植という重いテーマを扱ってはいますが、そこには軽さも必要です」と話し、「重い部分と軽い部分とのバランスをいかにとっていくかに苦労しました。テーマが深刻で重いからこそ、人物間の関係性を純粋に保つことが必要ですし、重いテーマを重いままで見せても、それでは観客に無理を強いることになってしまいます。そうではなく、観客それぞれが自分なりの見方ができ、そしてそれぞれの感情を膨らませていくことできるような間隙を設けることが肝要だと思います」と、撮影の際には役者たちともこのバランスについて話し合ったとコメント。

 前作『スザンヌ』ではレナード・コーエンの「スザンヌ」が映画の大きなテーマとなったが、本作ではデイヴィッド・ボウイの「ファイヴ・イヤーズ」がエンディングに流れる。そんな音楽については、「私の映画にとってとても重要な部分です」とその重要性に言及するキレヴェレ監督。「シナリオを書き終わったあと、いつも音楽のアドバイスをもらっているフランク・ボーヴェと、どんな楽器を用いるのが効果的か、どういった色合いの音楽がいいのか、どういったジャンルの楽曲がいいのかといったことを話し合います。そして、それをもとにコンピレーションを作ってもらい、撮影の準備期間中、そのコンピレーションをずっと聴くようにしています。そうすると、自分のなかでこれから撮る映画の全体像が音楽によって整理され、かたちをもっていくようになるのです」

 さらに、撮影や編集を経て、最後まで残ってその映画の根幹をなすような音楽がある一方で、撮影や編集のリズムを決めるためにのみ使われた音楽もあるといい、「そうした際には、そのシーンによりふさわしい曲を作ってもらうわけです。今回は、アレクサンドル・デスプラにそうした部分をカバーしてもらっています。最初にチョイスしていた楽曲を聴いてもらったうえで新たなスコアを書いてもらったので、ニュアンスを汲んだものになっているのではないかと思います」とコメント。デイヴィッド・ボウイの「ファイヴ・イヤーズ」については、「エンディングに使う曲について、さまざまな映画を観たり、いろんな曲を聴いてみたりしていたのですが、なかなかこれというのが見つからず決まらないままでした。ある日、カフェにいたときにこの曲が流れてきて、この曲の歌詞がもっている苦さがまさにピッタリだと思い、決めました」と編集の段階で決めたことを明かしている。(リアルサウンド編集部)