曲作りについて「自分の一部を切り取って作っている感覚がある」と語るスキマスイッチ

 スキマスイッチが13日に、ニューシングル「ミスターカイト/リチェルカ」をリリース。2003年にシングル「view」でメジャーデビューして以降、数多くのヒットを放って来た。「ミスターカイト」は、その今までのどの曲とも違う驚きに溢れた楽曲で、常田真太郎(Key、Cho)は「14〜15年やって来て、こういう曲が出来たのは自分たちでも面白いと思った。さらに広がって行けそう」と言い、「自ら動いて失敗して得たものは、次の成功に繋がる」と歌詞に込めた想いを明かす。他に、ゲームのRPGを人生や社会に見立てて歌った両A面の曲「リチェルカ」などそれぞれ色の違う4曲を収録。大橋卓弥(Vo、Gt)は曲作りについて「自分の一部を切り取って作っている感覚がある」と言う。各曲に込めた気持ちや制作における考え方など話を聞いた。

向かい風を捉えて上がる

スキマスイッチ

――「ミスターカイト」は、ピアノとシンセのサウンドにフォークのようなメロディが合わさり、そこにロックの豪快さも加わっていく、新しい感覚の曲ですね。

大橋卓弥 たとえば街並みでサビを耳にして、「どんな曲だろう?」と頭から聴いた時に「え! こんな曲なの?」と、驚いてもらえるような面白さがある曲が出来たら良いなと思いました。語るみたいに始まって、途中で一気に加速するような高低差がある曲が、面白いのではないかと話して。

 フォークに関しては、父親が吉田拓郎さんのファンで、車の中でよく流れていたのを自然と耳にしていて。それを自分のルーツの一つとして、ポップスやロックと融合したら新しいタイプの曲が出来るのかなと思っていました。

――まったく違う曲が、2つくっついたみたいな感じもありますね。

常田真太郎 それを同じテンポでやっているのが、とても面白いと思います。それによって疾走感や高揚感が、歌詞ともあいまって生まれたと思います。それと、カイト(凧)だけに高度がどんどん上がって行くような感じも出せたら良いなと思いました。

――歌詞はシニカルさがありながら、グッと胸を掴まれる感じがあって。大人のメッセージソングみたいな雰囲気ですね。

常田真太郎 Aメロのフォーキーな部分を卓弥が書いて、サビは僕の世界観でと、歌詞を書くパートを振り分けたことで、それぞれのスタイルの違いも出せて面白いと思います。Aメロの電車のシチュエーションはサラリーマン経験のある卓弥でなければ出て来ないと思うし。

大橋卓弥 歌詞の内容としては、サビのフレーズの<向かい風を受けて上に上がって行く>という所が、今回の曲のキーポイントになっています。追い風を受けて前に進むのではなくて、向かい風を捉えるというのが、今の自分たちとも合っていると思います。自分が音楽家としての人生を歩んで行く中で、どうありたいかというところにも通じています。

常田真太郎 根底には、やらなきゃいけないことを見過ごしている、やりすごしているということもテーマにあります。例えば僕らが新しい曲をやりたいと思った時に新しいスキルを身につけるとか、違う環境に行こうという時は勇気もいるし、たくさんのエネルギー消費を伴うものです。

――常にプレッシャーや圧力を、エネルギーに換えて行くということですね。凧に見立てたのは、何かヒントがあったのですか?

常田真太郎 僕が昔パラグライダーをやっていたので、その時のインスピレーションもあったし、単純にお正月に凧揚げをやった経験もあるし…。どちらも風を待っているだけではダメで、自分で走って向かい風を作って浮力を生み出さないと上手く上がらないのが、凧やパラグライダーの面白いところです。例え失敗したとしても、自分で動いて得た失敗と、ただ待っていただけの失敗は、意味が大きく違います。自ら動いて失敗して得たものは、次の成功に繋がります。

――音楽面で新しいことにチャレンジして失敗した経験も、きっとたくさんあるでしょうね。

大橋卓弥 百発百中ではないですからね。特に2人なので、スキマスイッチという看板でこのテーマは違うという判断もあるし。マイケル・ジャクソンだってザ・ビートルズだってみんなそうだったと思います。

常田真太郎 ずっと動いてチャレンジし続けていないと、1曲のヒットは生まれないです。

大橋卓弥 昨日の自分を越えようとか、そこまで前向きにはなかなかなれないですけど、作品を作って行く上では、自分の一部を切り取って作っている感覚はあります。アルバムで十数曲作った後は、自分が空っぽになるし。アウトプットし切ったら、後はインプットするしかない。その繰り返しですよね。

RPGには人生や社会が凝縮

大橋卓弥(Vo、Gt)

――人からの刺激でインプットすることも、たくさんありますよね。Anlyさんとのコラボだったり、小田和正さんとの共演だったり。

大橋卓弥 僕は何かしらの刺激を得ることで、曲を書きたいと思うことが多くて。他のアーティストのライブを見て格好いいなと思った時や、街中で流れている音楽をふと耳にして、これは誰の曲だろう? と興味を持った時とか。そういう刺激から創作意欲が湧くことが多いです。

常田真太郎 僕は、言葉によるインスピレーションが多いです。例えば漁業をやっている方とか、いろんな業種の方とお話をして、その会話の中から刺激を受けることが多い。あとはテレビを見たりゲームをやった時の印象から、アイデアが思いついたり。そこで目や耳にした言葉をメモることもあるし。刺激という点では、相手が同じ年齢くらいの方だと、「自分も負けてられないな」と思うし。

 僕には卓弥のスタイルは出来ないけど、十何年やって来て、自分なりのスタイルを見つけて、違うものを持ち寄るから新しいものが出来ます。そういうスタイルの違いが、スキマスイッチの振り幅になっていると思います。

大橋卓弥 今回もまた一つ、吐き出した感覚がありますね。

常田真太郎 14〜15年やって来て、こういう曲が出来たのは自分たちでも面白いと思いました。“ということは?”という感じで、あれも出来るかもしれないし、これも出来るかもしれないと、さらに広がって行けそうな感覚があります。

――もう1曲の「リチェルカ」は、RPGがテーマになった軽快な曲ですね。

常田真太郎  RPGのいろんなクエストをクリアしていく様子は、自分たちを含めて働く人が、様々なプロジェクトや課題をクリアしていくことと重なるイメージです。仲間同士で協力することも大事だし、どんな仕事でも乗り越えなきゃいけないボスみたいな人はいます。レベルが上がると新しいスキルを覚えるのもそうだし。人生や社会というものが、RPGには凝縮されていると昔から思っていて。

 ノリの良い曲にしたいと思ったので、卓弥にお願いしてデタラメな日本語で最初に歌ってもらって。それでノリと語呂の良さを追求したメロディに合わせて、言葉を載せていくやり方でした。だから、少しつじつまが合わないような言葉の繋がりであっても、そこは語呂の良さを優先させています。

――歌うのがすごく難しかったそうですけど。

大橋卓弥 すごく難しかったです。デモで作ってみて、本番で歌う時に「キーが高いな」「思ったより難しい」と思うことはたまにあって。だいたいシンタ(常田真太郎)くんと、こういう感じでどうかな? と、やりとりしているうちにイメージが固まっていくのですが、イメージが固まるまでに、今回はすごく時間がかかりました。

 早口だしテンポ感もあるし、メロディの飛ぶ感じなど、歌ってみると意外と難しいです。カラオケで歌う機会があったら、ぜひチャレンジしてみてください! あとライブでは、サビをみんなで歌ってもらえたら嬉しいです。

土地と人の繋がりには不思議な温かさ

常田真太郎(Key、Cho)

――カップリングの「さよならエスケープ」は、スキマスイッチらしさが全開ですね。

常田真太郎 3年近く前に作ったデモを「マイナビ転職」の方に気に入っていただいて、当時のデモを活かす形で構築したので、何か新しいことをやっているわけではなくて。あまり制約を設けずに作ったので、リラックスして作るとこうなるんだなと、改めて感じました。

――人生何度でもやり直しが利くと。

常田真太郎 僕たち自身、アルバムを作った後は、じゃあ次はどういうものにしようかと考えています。僕らがいつも感じていることですね。

――「辛」に一本足すと「幸」になるということも歌詞に出てくる。ベタですが、そうだなと思わせる実感がこもっているように感じました。

常田真太郎 ベタ中のベタですけど、僕も実際にこう思ったし。主人公が、ふと考えたことを歌詞にしてみるのはどうかと提案しました。缶コーヒーを飲むくだりも、卓弥がいつも缶コーヒーを飲んでいるからで。

大橋卓弥 確かに缶コーヒーはしょっちゅう飲んでいて、やっぱり歌詞の通り、何かしらのリセットになっていると思いますね。

常田真太郎 そのリセットという部分では、今の自分から何かを変えたいと思っている人物像とも重ねています。

――そして「ココロシティ」は、地元である愛知・名古屋がテーマですね。テレビ塔や観覧車など、歌詞には名古屋の名所が出てくる。

常田真太郎 今までも名鉄をモチーフにした曲など、地元感を出したものはありましたけど、こういう公式の形で大々的に出せたのは初めてだったので、嬉しかったです。歌詞に<オアシス>と出てきますけど、<オアシス21>という施設もあるんです。

――地元に対する望郷の想いだけでなく、未来への願いを込めた心温まる曲ですね。

常田真太郎 依頼を受けたものの、僕らは今住んでいるわけではないので、バランスは難しかったです。でもやっぱり、未来に向けたものを書いたほうが、共感してもらえるだろうし。地元は絶対忘れないし、帰る度にこういう気持ちになります。

大橋卓弥 名古屋でライブをやれば、みんな「お帰り」と迎え入れてくれます。それはすごく嬉しいし、地元があることは幸せだなと改めて思いますよね。

常田真太郎 地元、実家、住んでいたことがある場所…。土地と人の繋がりは不思議な温かさがありますね。僕らを通して名古屋のことを知るきっかけになっても嬉しいし、この曲を聴いて一人でも多くの人に名古屋へ行ってみようかと思ってもらえたら、作者冥利に尽きます。通るだけではなく、ぜひ降り立って何か食べてみて欲しいです。

――来年にはツアーを予定しているそうですが。

大橋卓弥 まだ内容は全く決まっていないですけど、ツアーをやる理由となるアルバムがないので、まずは作ろうかなと。でも去年、ライブをやるためのツアー『POPMAN'S CARNIVAL』という、新しいアルバムを引っ提げないツアーをやったら、それもすごく面白くて喜んでいただけたので、それも良いと思うし。でも、やっぱり新しい何かは持って行きたいと思いますね。

【取材・撮影=榑林史章】

曲作りについて「自分の一部を切り取って作っている感覚がある」と語るスキマスイッチ スキマスイッチ スキマスイッチ 大橋卓弥(Vo、Gt) 常田真太郎(Key、Cho)
大橋卓弥(Vo、Gt) 常田真太郎(Key、Cho) 「ミスターカイト/リチェルカ」初回限定盤 「ミスターカイト/リチェルカ」通常盤

作品情報

スキマスイッチ
ニューシングル「ミスターカイト/リチェルカ」
9月13日発売

通常盤(CD)1200円(税抜)UMCA-50054
初回限定盤(CD+DVD)1800(税抜)UMCA-59054

▽CD収録内容
M-1 ミスターカイト
M-2 リチェルカ 〜テレビ東京系 金曜8時のドラマ「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜SECOND SEASON」主題歌〜
M-3 さよならエスケープ 〜「マイナビ転職」CMソング〜
M-4 ココロシティ 〜メ〜テレ開局55周年テーマソング〜

▽DVD収録内容
「スキマスイッチのミッドナイト・グッドモーニン!! -3- THE MOVIE」

公演情報

▽Augusta Camp 2017
9月23日 山梨・富士急ハイランド コニファーフォレスト

▽メ〜テレ秋まつり2017
9月24日 愛知・名古屋 栄 久屋大通公園 久屋広場・特設ステージ