世界一の規模を誇るゲノム研究企業・BGI。中国はDNA解析の超大国になりつつある

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世界に先駆けてキャッシュレス社会を実現させた中国だが、人工知能や先端医学の分野でも中国は今、アメリカを抜く勢いで発展しようとしている。しかし、その裏に大きな懸念材料があった。日本も無関係ではないのだ!

◆倫理なき遺伝子操作が行われクローン人間の誕生も近い……!?

 中国による倫理や安全性を軽視した研究・開発が話題になっているが、それは医学の分野でも行われている。『人民日報』(7月6日付)によると、中国のバイオ技術企業「SINO GENE」が、世界初となる「遺伝子組み換え体細胞クローン犬」のロンロンを誕生させたというのだ。

 体細胞クローン犬であれば、韓国の研究機関がすでに成功させている。しかしロンロンが画期的なのは、複製元の犬が持っていた高血中脂質という遺伝子由来の問題点を改正したうえで誕生したことにある。同社は、「強靭性や俊敏性、嗅覚などで優れるスーパードッグを大量生産することも可能」としているが、技術的には完全無欠のクローン人間の開発に一歩近づいたことになる。

 ちなみに昨年、天津市に食用牛や警察犬、競走馬を大量生産する世界最大のクローン動物作製センターの建設も発表されたばかりだ。

 これだけでも不安な気持ちでいっぱいになるが、中国では動物ばかりではなくヒトのゲノム編集も盛んに行われている。

 北京放射医学研究所のチームは3月、ヒトの受精卵にゲノム編集を行い、病気の原因となる遺伝子を修復することに成功。染色体異常のある、子に育つ可能性のない受精卵のゲノム編集は’15年に中国の研究チームが行って世界的な大論争が巻き起こったが、今回はそれより一歩踏み込んだ、正常なヒトの受精卵に対してのゲノム編集だ。もちろん世界初の試みで、同研究所は「受精卵は解析に使っただけで子宮には戻しておらず問題ない」という立場だが、生命倫理上の問題点が指摘されている。

 さらに昨年10月には、四川大学の研究チームが免疫を阻害する遺伝子をゲノム編集によって無力化し、ガンを治療する臨床試験が世界で初めて実施されたが、これにも批判の声が出ている。

 ヒトへの遺伝子操作やゲノム編集に、とりわけ反発の声が根強いのはなぜなのか。サイエンスライターの川口友万氏は話す。

「ゲノム編集を施された人が、その後に一生にわたって問題なく健康に暮らせるのか、まったく確証がないためです。もっといえば、編集された遺伝子は子孫に代々受け継がれていくことになるため、慎重になるべき。人間の首のすげ替え手術が計画されているような国でなければ、ヒトへのゲノム編集には踏み込めないでしょう(※編注:ハルピン市の病院では、首から下を麻痺した患者に、脳死状態のドナーの体を移植する計画が進行中)。そもそも、中国が行っているゲノム編集はクリスパー・キャスナイン技術とよばれ、その根底にあるクリスパーという遺伝子配列を発見したのは、九州大学の石野良純教授です」

 日本をはじめ多くの国では、医療で新しい試みが行われる際には生命倫理に対し、最大限の配慮がなされる。女性の卵子に、卵巣から採取したミトコンドリアを注入して活性化させる不妊治療「オーグメントSM療法」を日本で初めて成功させた「HORACグランフロント大阪クリニック」の森本義晴院長は、日本の医学倫理の厳しさについてこう話す。

「オーグメント療法はすでに海外では普及していましたが、実施に至るまで倫理委員会や日本産科婦人科学会などで合計2年間もの審議を要した。また、遺伝性の重い疾患を持つ患者にしか認められていない受精卵の着床前診断を、一般の不妊症患者に対して承認するかどうかについては、日本産科婦人科学会ですでに3年以上も審議が続いている。中国の医療はこうしたプロセスを飛び越えることで、欧米や日本よりも先んじている分野もある」