トルクコンバーターを機械的に固定する仕組み

 ATやCVTのトランスミッションには、エンジンからの力をON/OFFするための自動クラッチが組み込まれています。その多くはトルクコンバーターという油圧を介したクラッチが使われています。いわゆるトルコンですね。トルクをコンバート(変換)するという意味で判るように、2倍から3倍ほどへトルクを大きくすることができます。ただし当然それと引き換えに回転数は低くなるので、結果として半クラッチのような状況が作りやすい特徴があります。だからトルコンを採用しているATやCVTの発進は滑らかなのです。

 トルコンのトルク増幅機能を生かせば、通常のマニュアルトランスミッションが6速だとしても、それを3速のATでカバーすることは可能です。ただしトルコンが機能する時は回転数が落ちるので、スロットルペダルを踏んでエンジンの回転は上がるけど加速しない、という滑り感が出てしまいます。フィーリングがとても良くないですが、同時に燃費や性能も悪くなってしまうのです。それで最近はATの多段化が進んでいるわけです。

 ロックアップ機構というのは、そのトルコンを機械的に固定してしまって、油圧を介さずにダイレクトにエンジンの力をトランスミッションへ伝えるためのメカニズムです。具体的にはトルコンの外周部分にクラッチを装着し、入力側と出力側のカップリングを固定することを可能とし、それを電子制御によって作動させるというシンプルな機構です。トルコンがキャンセルされることで、トルクの増幅はありませんが、その代わりにエンジンのフィーリングがダイレクトに伝わり、ドライバーはそれを楽しむことができるようになります。

 こうしたコンセプトを最初に生み出したのは、ポルシェ911(964)のティプトロニックと呼ばれた4速ATです。可能な限りトルコンをロックアップさせることで、ダイレクトなフィーリングを得ることができました。

 その背景にあったのは、軽量なボディに3.6リッターエンジンの強大なトルクの組み合わせです。低回転域でのトルクが確保できるからこそ、ロックアップ領域を大幅に拡大することが可能になるわけです。