岩政 授業でC級を取れるのは良いですね。指導者という選択肢は、高校の時から考えていたんですか?
 
熊谷 選択肢のひとつでした。そのためにも、大学で多角的な視点を学ぼうと考えていたんです。
 
岩政 筑波でのトレーニング内容はどんなものですか?
 
熊谷 今回は一歩目の出足やお尻の使い方、身体のバランス調整をお願いしています。技術練習は自分たちで考えて、グループトレーニングはレッズでやらせてもらいました。
 
岩政 日本にいる期間で仕上がってしまいそうですね。
 
熊谷 そうなんです。本当は7月24日からの代表遠征に向けて作っていたんですが、クラブに止められていけなくなりました。招集していただいたんですが……。
岩政 熊谷選手が所属しているリヨンの女子チームは、完全なプロですよね?
 
熊谷 完全にプロです。代表参加を止められたのも「休養を取れ」との理由でした。リヨンは、今夏のEUROに18人くらいの選手が参加します。そうなると、チームに残って練習するのは若手くらい。「それなら代表に行かせて」とお願いしたんですが、「今年はスタッフが総入れ替えの年なのでいてほしい」と言われました。
 
岩政 日本の女子サッカーの環境とはまったく違いますか?
 
熊谷 全然違います。プライベートジェットで移動する時もありますし、そもそも日本は女子のプロ選手があまりいません。
 
岩政 それは居心地が良さそうですね。
 
熊谷 良いですね。女子はヨーロッパに行ったら居心地が良くて残る選手が多いんです。プロは自由になんでもできるし、自分の好きなことでお金がもらえる。その分、責任はありますが、楽しいですよ。
 
岩政 チームメイトとの関係は?
 
熊谷 「もう少しちゃんと練習したら」と思う選手もいますが、彼女たちは周りを気にしません。だから、私は自分のことをやっているだけなのに、「すごく真面目」だと言われます。
 
岩政 それぞれが自分のスタイルでやっているし、それが認められていると?
 
熊谷 結果が出れば好きなことをやっていいという感じで、私も結構自由にやっています。
 
岩政 自由にやる、とは具体的に?
 
熊谷 日本は全員が全員に合わせるところがありますが、向こうは一人ひとりが自分の良い部分を出そうとします。自分が輝きたいと思ってサッカーをしているので、私も変な気を使わなくて良いんです。
 
岩政 今のチームは多国籍ですか?
 
熊谷 フランス代表が多くて、13、14人くらい。あとはドイツ3人、ノルウェー、スウェーデン、アメリカ、カナダ、日本みたいな構成です。
 
岩政 フランス人選手とそれ以外の国の選手とで違いはあります?
 
熊谷 めちゃくちゃあります。子どもたちと接することもあるんですが、フランスの子どもはやっぱりフランス人。すっごい良い子なんですが、我が強くとっても生意気(笑)。日本人の気質に近いのがドイツ人やスウェーデン人で、ノルウェー人はフランス人と日本人の中間くらいかな。もちろん、人によりますが。
 
岩政 主張が強いフランス人が多いなかで、チームをまとめるのは苦労しそうです。
熊谷 “負けず嫌い”の一点でまとまりますね。ただ、試合中に誰かが精神的に落ちると、その選手を鼓舞しても、なかなか立ち上がって来ません。本当にチームとしてダメになります。フランス代表もそうなんです。親善試合は本当に強いんですが、大きな大会でタイトルをなかなか取れてない。フランス人の選手も何人かは「絶対メンタルが問題だよね」と認めている人もいます。