温泉に続く日本のキラーコンテンツは?(写真はイメージ)


 このほど日本政府観光局(JNTO)は、2017年7月の訪日外国人客数が前年同月比16.8%増の268.2万人となり、単月としては過去最高を記録したと発表しました。韓国、中国、台湾、香港からの旅客数も、単月として過去最高を記録しました(下の表)。

 一時は「爆買いも一服」と言われましたが、中国人の間では日本への旅行熱が再燃しています。

 現在、筆者は中国に住んでいますが、中国から見て日本でこれから確実に成長が期待できる唯一の産業は観光産業だとみています。そこで今回は、中国人の訪日旅行の現況とその課題をまとめ、それを踏まえて今後の発展に向けた提案をしたいと思います。

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関西への関心が上昇

 まず、中国における訪日観光に関する報道の状況を紹介しましょう。

 結論から言えば、現在、中国では訪日旅行に対して非常に強い関心が持たれています。関連報道を調べると、どこも日本の観光地やお土産に関する特集が大きく組まれており、SNS上でも「どの観光地がお勧めなのか」という議論が盛んに行われています。

 具体的な観光地については、以前と比べると関西地方の観光地に関する言及が増えている印象を受けます。従来から人気の高かったユニバーサル・スタジオジャパン、清水寺、伏見稲荷大社に加え、奈良公園や大阪城なども旅行サイトなどで大きく取り上げられるようになりました。

 なお、ある中国のSNS上では、「東京の人は冷たいが、関西の人はまだ悪くない」という、関西人からしたら「我が意を得たり!」と思わず賛同したくなる意見も見られました。

「日本人は英語が下手」

「中国人が訪日旅行に抱く不満」も探してみたのですが、そのような報道はほとんどありません。驚くぐらい好意的に紹介する内容ばかりでした。

 ただ唯一、SNS上で見られた訪日旅行での不満点として、「日本人は英語が下手」という指摘がありました。投稿主によると、「Can you speak English?」と話しかけたら逃げられたとのことです。

 それにしても、欧米人に言われるならまだしも、中国人にまで「日本人は英語が下手」と言われる時代が来るとは・・・。十数年前から日本と中国を行き来している筆者としては妙に感慨深いものがあります。

家電製品への関心は低下

 さて、この手の報道で一番取り上げられることが多いのは「日本のお土産」です。

 あくまで個人の印象ですが、1、2年前と比べると、日本での購入品は変化が起きているように見えます。

 従来から人気の高かった化粧品は現在も注目度が高く、特集記事でも化粧品ばかり取り上げられています。対照的に、家電製品への言及が減ってきています。かつて「爆買い」の主役だった家電製品への関心は明らかに薄れてきているように見えます。

 この背景として考えられるのは、まず、越境ECで中国国内にいても日本の製品を購入できる機会が増えたことです。また、「日本製家電」のブランド力が落ちてきていることも原因でしょう。鴻海精密によるシャープの買収や、東芝の家電部門売却など、日本の家電メーカーの凋落は中国でも日々報じられています。一方で、中国家電メーカーが着々と実力をつけてきており、日本製品の競争力はまぎれもなく低下しています。

 そんな家電に代わり関心が高まっているのは、漢方薬をはじめとした健康関連商品です。「漢方薬は中国が本場じゃないか」と思われるかもしれません。しかし、実は日系メーカーが漢方薬に関する大半の特許を取得しており、世界単位で大半の市場シェアを握っているのです。

 もともと中国人は健康関連グッズに目がありません。また、中国では偽物が多く出回っており、日本製品には品質や信頼面での優位性もあることから、わざわざ日本に来て大量に購入しているようです。

 ただこうしたブームの陰には、中国人ガイドと結託して日本で法外な値段の漢方薬を販売するという業者もいるとされます。こうした不法業者の摘発は、中国人旅行者に限らず訪日観光客を広げていく上で今後大きな課題となってくるでしょう。

外国人には分かりにくい宿泊施設の料金設定

 以上、中国側から見た訪日旅行の現況を取り上げましたが、ここからは筆者が考える、ホストとなる日本側の課題について述べていきます。

 まず一番大きいのは、絶対的な宿泊施設の不足です。

 今後も訪日客数が増え続けると仮定した場合、現状でも不足している宿泊施設がさらにひっ迫することは必至です。民泊の規制緩和という対策もありますが、部屋数を増やすだけでなく、受け入れ方法なども工夫していく必要があるでしょう。

 また、宿泊施設に関して特に筆者が気になっているのが日本独特の料金体系です。

 日本の宿泊施設における料金体系は基本的に宿泊人数に基づいています。しかし、これは国際的に珍しく、中国をはじめ海外の宿泊施設は部屋単位の料金体系となっています。これまでの慣習もあってなかなか難しいでしょうが、外国人にも分かりやすい料金体系の設定はやはり検討していくべきでしょう。

温泉に替わる新たなコンテンツは?

 次に筆者が課題と感じているのは、温泉に続く新たなコンテンツがそろそろ求められているということです。

 現在、中国人の訪日旅行において最も誘致力が高いコンテンツと言えるのは間違いなく温泉です。しかし、日本に旅行に来て温泉を体験したことがある中国人はもはや少なくありません。今後も温泉が有力なコンテンツとして機能し続けることは間違いないでしょうが、さらにリピーターを獲得していくためには、温泉に続く新たな別の体験型コンテンツが必要だと思われます。

 では、どのようなコンテンツが今の日本にあるのか。筆者は「茶道体験」が有力な候補になりうるのではないかとみています。

 というのも、中国では日本と同様にお茶の喫茶習慣が深く浸透しており、茶道具に対する関心も低くありません。現在も、南部鉄器をはじめとした日本の茶道具が高い人気で売れており、広く認知されています。また日本の茶道ほど格式化されてこそないものの、中国にも「茶芸」というお茶の作法があります。日本の茶道が体験型コンテンツとして受け入れられる余地は大きいように思えます。

 もしも茶道が訪日旅行のコンテンツとして受け入れられれば、単純な観光収入だけでなく茶道具や日本茶の継続的な輸出にもつながる可能性があります。家電などの商品は1回だけの買い切りで終わりがちですが、茶道などの文化発信は、関連商品の輸出によって継続的な収入が見込めます。

 今後、日本は観光戦略と合わせ、文化の輸出も考えていくべきでしょう。その際は、できればその道の経験者なりが中国現地で指導に当たるというのが理想的です。

 しかし、筆者はこんなことを書いていますが、かつて京都に住んでいながらついぞ茶道を学ぶことはありませんでした。趣味は何ですかと聞いて、「お茶を少々・・・」という女の子にも一度も会ったことがありません。果たして中国で日本の茶文化を広めてくれる人がどれだけいるのかというと心もとなく、この点が大きな課題なのかもしれません。

筆者:花園 祐