マニアックなところもカバーするバーミヤンのご当地ラーメン(写真:筆者提供)

バーミヤン」。桃をあしらったロゴが特徴的な中華レストランだ。すかいらーくグループに属するファミレスチェーンのひとつとして、全国に約330店を展開する。王将フードサービスが運営する「餃子の王将」(約710店)やイートアンドの「大阪王将」(約350店)などの中華料理系チェーンとも一部で競合している。

新メニューに6種類のご当地ラーメンが登場

そのバーミヤンがこの9月、一気に投入した新メニューが6種類のご当地ラーメンだ(一部店舗は除く)。「札幌味噌」「喜多方」「博多とんこつ」「富山ブラック」「肉盛り徳島」「【名古屋】台湾」(名古屋発祥の台湾辛味ミンチ)など、現地に行かなくても各地のメニューが楽しめる。日本全国で名高い定番からちょっとマニアックなところもカバーするメニューを取りそろえた(一部は期間限定)。


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バーミヤンといえば、麻婆豆腐や青椒肉絲(チンジャオロース)、エビチリ、油淋鶏(ユーリンチー)などの中華料理の定番メニューが軸。ただ、ここ最近はラーメンの展開が目に付く。もともとグランドメニューにある「バーミヤンラーメン」が人気だったが、昨年開催したラーメンフェアの好評を受け、本格的で素材にこだわったラーメンメニューを拡充している。時期的なムラも出ずに一定に売れており、リピーターが多いのが特徴のようだ。

実は今回のご当地ラーメン6種類を加えると、バーミヤンが取りそろえるラーメンメニューは計19種類にも及ぶ。「ネギラーメン」「ワンタン麺」「五目麺」「とんこつラーメン」「担々麺」「酸辣湯麺(スーラータンメン)」――などもある。

これはたとえば、関東エリアで8種類のラーメンメニューを展開する「餃子の王将」だけでなく、それぞれ12種類のラーメンメニューをラインナップする「日高屋」(約400店、ハイデイ日高が運営)や「幸楽苑」(約540店、幸楽苑HDが運営)よりも幅広い。つまり、バーミヤンのラーメンのメニュー数は、ラーメンチェーンの2大巨頭ともいえる日高屋や幸楽苑をしのぐということだ。

そもそも6種類ものご当地ラーメンを一気にラインナップするのは、ほかの中華料理系あるいはラーメン系チェーンのいずれにもない展開だ。

6種類のラーメンを1店舗で回すのは、ラーメン専門店ではかなり難しい。逆に、スープや具材をセントラルキッチンで仕込んでからお店に配送できるバーミヤンならではの強みといえる。

目指すのは「町の中華屋さん」


6種類のラーメンを1店舗で回せるのはバーミヤンならではの強みだ(写真:筆者提供)

バーミヤンは今まで専門的な中華料理をラインナップしてきましたが、それだけではなく、『町の中華屋さん』を目指そうという方向性に変わってきています。ファミレスである以上は、お客様になじみのある商品を出していきたいです。その中でうってつけのメニューがラーメンだったんです」。バーミヤンのメニュー開発チームの福島宣嘉氏は言う。

この裏側に、バーミヤンの狙いが見えてくる。ファミリー層だけではなく、ラーメンファンにも照準を合わせた新たな戦略が読み取れる。

バーミヤンは中華料理系チェーンでありながら、その店構えや雰囲気から客層がややファミリーに寄っている。「『町の中華屋さん』を目指す」という方向性は、餃子の王将や大阪王将、日高屋、幸楽苑などのチェーンのヘビーユーザーのような、バーミヤンとは重ならない客層もターゲットに据えていく戦略に見える。その際の打ち出し方としてラーメンは目を引き、わかりやすいメニューとなる。普段はラーメン専門店になかなか入りづらいという女性からの支持も得られやすいだろう。

ただ、ファミレスのラーメン作りにはどうしても限界が生じる。セントラルキッチンである程度まで仕込めるというメリットはあるが、再現度という面では専門店レベルを出すのは厳しいという印象がある。

「専門店の味をそのままに、というわけにはいきませんが、なるべく近づけられるよう努力しています」と福島氏。来店客の期待を裏切らない水準の料理を提供していくことが課題となりそうだ。

バーミヤンのような中華系だけでなく、いわゆるファミレスでもラーメンは定番メニューのひとつだ。全国に1300店超を展開する、すかいらーく系の「ガスト」。ここでは現在「1日分の野菜のベジ塩タンメン」「肉みそとサラダのピリ辛冷やしタンタン麺」を提供。女性向けのヘルシー志向メニューだ。

同じくすかいらーく系の「ジョナサン」(約300店)は「日替りヌードルランチ」を展開。担々麺や鶏白湯ラーメンなど日替わりで提供している。グランドメニューの中には本格的な酸辣湯麺もあり、こだわりのラインナップとなっている。セブン&アイ・ホールディングス系の「デニーズ」(約400店)では担々麺、醤油ラーメンを提供。鶏のから揚げ、ミニごはんのついたボリューム感たっぷりのメニューだ。

「異業種ラーメン戦争」が過熱

ファミレスだけでなく最近では、回転寿司チェーンもラーメンに力を入れている。「スシロー」(あきんどスシロー)をはじめ、「無添くら寿司」(くらコーポレーション)、「かっぱ寿司」(カッパ・クリエイトHD)、ゼンショーHD傘下の「はま寿司」といった大手チェーンが軒並みラーメンをサイドメニューに用意している。筆者が「はま寿司ラーメン、『2カ月で100万食』の裏側」(2017年2月11日配信)でも書いたように、はま寿司のラーメンは専門店顔負けの味だ。

バーミヤンのラーメン強化策は、中華系やラーメン専門系にとどまらず、ファミレス、回転寿司など有力外食チェーンが各業態を横断する集客の目玉としてラーメンというメニューの重要度が増し、外食チェーンの「異業種ラーメン戦争」が過熱していることも示唆しているようだ。