学校管理職のロールモデルとは何か(写真:YsPhoto / PIXTA)

副校長にはなりたくない――。東京都の教育現場はそんな教員であふれている。小・中学校の教育管理職(副校長)選考の合格倍率は、ここ数年1.1倍前後が続く。しかも受験者数が合格予定者数に満たない年が多い。


自ら希望して降格する「希望降任制度」を使う副校長も後を絶たない。文部科学省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、東京都における「副校長等からの希望降任」は2015年度で25人(前年度比4人増)に上る。なお全国では121人(同15人減)だった。

副校長は超激務!

『週刊東洋経済』は9月11日発売号(9月16日号)で、「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」を特集。大量の仕事に忙殺されながら、「子どものため」と酷使され過労死ラインを超える残業が常態化する教員たち。その負担軽減策に迫っている。

教員が管理職を目指さない理由として1番に挙げられるのが、「子どもと接する時間が少なくなる」ことだ。そのほかにも、「業務量や責任が重い」「学校管理には関心・興味がない」「自分は向いていない」と考え、副校長の職を回避する教員が多い。


実際、いじめや不登校など学校を取り巻く問題が複雑になり、保護者の要望も変化する中で、副校長の業務内容は多様化している。教職員の人事管理や指導に加え、スクールカウンセラーや給食調理員など教員以外の取りまとめも担う。地元自治体や町内会、教育委員会、警察と連携を図る際の要となるのも副校長だ。

しかも副校長の勤務時間は長い。今年4月末に文部科学省が公表した2016年度の「教員勤務実態調査(速報値)」によると、副校長・教頭の平日1日当たりの勤務時間は小学校で12時間12分、中学校で12時間06分に上り、一般の教諭(小学校11時間15分、中学校11時間32分)よりも長時間労働を余儀なくされている。

東京都は退職した校長・副校長職経験者などを再任用することで、今のところ欠員は出ていないが、副校長確保への対応は待ったなしの状況になっている。

東京都も手をこまぬいているわけではない。主任教諭歴2年以上、44歳未満で受験できる「A選考」で、若手にも管理職にチャレンジする機会を与えているが、2017年度の選考からさらに枠を広げた。

「B選考」は、これまで主幹・指導教諭で39歳以上54歳未満を対象としていたが、主任教諭であっても経歴2年以上、46歳以上54歳未満であれば受験できるようになった。また、主幹・指導教諭歴が合わせて3年以上で50歳以上58歳未満のベテランが対象の「C選考」は、推薦制に加え一般受験での申し込みも可能になり、年齢も60歳まで拡大された。

管理職手当を8400円上乗せ

都内12校ではモデル事業として、調査などの事務作業や電話応対などで副校長をサポートする非常勤職員を設置。さらに現場の士気を高めるため、管理職手当も今年度から1カ月8400円上乗せし、8万0700円とした。


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東京都教育庁人事部教職員任用担当の相川隆史課長は、「これまで、管理職のロールモデルを示すことができていなかったのではないかという反省がある」と話す。

地区の教育委員会を通して、育児が一段落した女性教員など1人ひとりに当たって、受験の呼びかけも地道に行っている。管理職のやりがいや仕事の魅力なども発信し志願者の掘り起こしに力を入れる。その結果、2017年度の小学校のB選考では受験者数が合格予定者数をわずかに上回った。だが中学校については大きく下回っている状況に変わりはない。

どうすれば副校長を目指す教員が増えるのか。東京都の苦悩は深い。

『週刊東洋経済』9月11日発売号(9月16日号)の特集は「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」です。