【ソウル支局=桜井紀雄】国連安全保障理事会が11日に採択した対北制裁決議は「画竜点睛を欠く」内容だと言わざるを得ない。

 金正恩朝鮮労働党委員長を資金凍結の対象とする当初案の項目が抜け落ちたからだ。専門家は「北朝鮮の政権幹部は、ほっとしているはずだ」とも指摘する。

 北朝鮮外務省は11日、声明で、採択されれば「最後の手段も辞さない」と警告した。同省が組織として声明を出すのは昨年7月、金委員長を対象にした米国の制裁に反発して以来。北朝鮮は「最高尊厳」とみなす金委員長への制裁だけは何としても避けたいのだ。

 金委員長の制裁指定は「象徴的意味」にすぎないとの見方もある。30億〜50億ドル(約3280億〜5470億円)に上るともいわれる秘密資金は「金正恩」名で登録しているわけではなく、口座の特定は困難だ。

 だが、兵器や核・ミサイル開発に必要な物資は各国の秘密口座を通じて取引しているとされ、資産凍結がない限り、核・ミサイル開発を阻止できないのも事実だ。現に2005年に米金融制裁でマカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア」の口座が凍結された際、北朝鮮は必死に解除を求めた。

 北朝鮮は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を来年にも完成させるとの分析がある。外貨獲得源を徐々に締めつける方法では、制裁の効果が上がる前に、金委員長が米本土に届く核兵器を手にしかねない。それは北朝鮮との時間限定の“チキンレース”に国際社会が敗れることを意味する。