【プノンペン=吉村英輝】カンボジアで30年以上にわたり実権を握ってきたフン・セン首相が、野党への圧力を強めている。

 最大野党カンボジア救国党のケム・ソカ党首を国家反逆容疑で訴追し、同党の解党も示唆した。救国党は、党首逮捕を「不当」として国際社会に訴える姿勢で、来年7月に予定する下院選に向け、対決姿勢を鮮明にしている。

 カンボジア司法当局は5日、2013年に海外で「米国などの助言を受け国家改革計画を行ってきた」と発言したことが国家反逆罪にあたるとして、救国党のケム・ソカ党首を訴追。フン・セン氏は11日、「(罪に問われた)党首の擁護を続けるなら解党もありうる」と牽制した。

 救国党のソン・チャイ幹部は12日、プノンペン市内の党本部前で記者や支持者に「困難はあるが選挙には挑む」と表明した。救国党は前党首のサム・レンシー氏が15年から、逮捕、収監の恐れを理由に事実上の国外亡命中。ケム・ソカ氏も有罪となって党首を外れれば打撃は大きく、党内部では次回下院選の「ボイコット」も検討すべきだとの声が上がっていた。

 野党への締め付けは、フン・セン氏の焦りの表れでもありそうだ。救国党は、13年の前回下院選、今年6月の地方議会選挙でいずれも躍進した。今後10年間は首相の座にとどまる意向を表明しているフン・セン氏だが、汚職批判を受ける与党カンボジア人民党を立て直すのは容易でない。

 フン・セン氏は、救国党や、政権に批判的なメディアを擁護していると、米国にも批判を向ける。駐プノンペン米国大使は12日、「根拠のない批判だ」との声明を出した。ただ、トランプ政権のカンボジアへの関心は薄いとみられ、何を言っても米国からは制裁を受けないとフン・セン氏が踏んでいる節がある。

 一方、中国政府の諮問機関、全国政協の王家瑞副主席は7日、カンボジアを訪問して、ケム・ソカ氏訴追などへの「理解」と、政権への「支持」を表明したという。巨額の経済援助など物心両面でフン・セン氏を支援し続ける構えだ。