イスラエル国家安全保障研究所 アブネル・ゴロブ研究員(本人提供)

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 トランプ米大統領は北朝鮮に対する軍事攻撃も排除しない姿勢を示したが、現実には米軍が先制攻撃に出るとは考えにくい。

 攻撃に必要な情報を持っていないからだ。

 イスラエルは1981年にイラクの原子炉を爆撃。2007年には、北朝鮮の支援で建設したシリアの原子炉を爆撃したと報じられた。2つの原子炉は地上に造られ、初期段階にあったが、北朝鮮は状況がまるで違う。すでに核兵器を完成させ、地下に分散して隠している。米軍はどこにあるのか把握しておらず、ピンポイント攻撃はできないだろう。

 米軍が先制攻撃をする場合、反撃を想定して日本や韓国に爆撃機や兵力を増派する必要がある。現在はこうした動きもない。

 北朝鮮は東西冷戦中にソ連や中国の支援を受け、「核の闇市場」を構築したパキスタンのカーン博士から技術提供を受けて核保有に至った。ミサイル弾頭の小型化ではイランと緊密に協力した。2期目のオバマ前米政権は北朝鮮に関与せず、その時間を核開発に使うことができた。

 金正恩政権は抑止力だった核兵器を、ミサイルと同時に開発することで大国を「脅迫」する手段に変えた。トランプ政権を交渉に引き出すだけでも大きな勝利だ。孤立した貧困国でも核とミサイルで米国を動かせるのだと示せれば、世界各国で核保有熱が高まるのは間違いない。特にイランへの影響は大きい。

 イランは当面ミサイル開発を進め、2015年の核合意が定めた10〜15年の制限期間後は再び核開発を進めるだろう。日中韓が米軍の対北攻撃に否定的なのに対し、イスラエルやアラブ諸国は米軍のイラン攻撃を後押しする。イランは北朝鮮に対する米国の出方をみている。北朝鮮危機が、中東危機に発展する可能性は否定できない。(聞き手 三井美奈)