今年も、欧州フットボール主要リーグの夏の移籍期間が終わった。移籍金の最高額が大幅に更新されるなど、今夏も大きな動きがあり、勢力図に変化が起こりそうな気配もある。


ネイマール、ムバッペを獲得するなど、大きな話題を集めたパリ・サンジェルマン

 今週に開幕するチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージの前に、CLに出場する8つのビッグクラブのアップデートされた姿を確認しておきたい。

パリ・サンジェルマン(フランス)
【IN:ネイマール、ダニ・アウベス、キリアン・ムバッペ(ローン)など】
【OUT:セルジュ・オーリエ、ブレズ・マトゥイディ、ジャン=ケビン・オギュスタンなど】
 
 今夏の移籍市場の主役は、カタールのパトロンを持つパリのこの人気クラブだった。ネイマールの獲得に費やした推定2億2000万ユーロ(約288億円)は、これまでの史上最高額の倍以上。さらには期限最終日に、モナコからムバッペを1年間のローン契約で迎え、今季終了後には総額1億8000万ユーロ(約234億円)で完全契約に切り替える構えだ。

 エディンソン・カバーニら既存戦力に2人の”世界最高クラス”を加えた前線は、レアル・マドリードやバルセロナに匹敵する陣容となった。カバーニ、ネイマール、ムバッペが初めて揃い踏みした第5節のメス戦では、日本代表GK川島永嗣からそれぞれがゴールを奪い、5-1と圧勝している。また、世界最高のSBのひとり、アウベスをフリーで引き抜いており、直近のブラジル代表戦にはPSGに所属する選手が最多の4人に。クラブの大いなる野望を実現しうる強力なスカッドができあがった。

マンチェスター・シティ(イングランド)
【IN:バンジャマン・メンディ、カイル・ウォーカー、ベルナルド・シウバ、エデルソン、ダニーロなど】
【OUT:ケレチ・イヘアナチョ、ウィルフリード・ボニー、アレクサンダル・コラロフなど】

 アブダビの支援を受けるシティも今夏、総額およそ2億5000万ユーロ(約282億円)を投じた。ただし、パリに比べると顔ぶれは地味で、シウバ以外は主に守備陣を補強した。

 GKクラウディオ・ブラーボに期待を裏切られたペップ・グアルディオラ監督は、エデルソンに最後尾の司令塔の役回りを託し、サイドバックは完全に刷新。ムバッペやアレクシス・サンチェスを狙った前線の強化は実現しなかったものの、攻撃陣の駒も潤沢だ。第4節のリバプール戦に大勝した姿を見れば、優勝候補筆頭に挙げられるのも頷ける。

マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
【IN:ロメル・ルカク、ネマニャ・マティッチ、ビクトル・リンデロフなど】
【OUT:ウェイン・ルーニー、アドナン・ヤヌザイなど】

 総額1億6000万ユーロ(約209億円)を超える移籍金を費やし、FWルカク、MFマティッチ、DFリンデロフを迎え、チームの背骨がいっそう強固になった。リンデロフはまだリーグ戦に出場していないが、ルカクは早くも4得点を挙げ、マティッチはチームの中軸としてすでに欠かせない存在になっている。

 プレミアリーグでは開幕から4-0、4-0、2-0と圧倒的な強さを示しており、ジョゼ・モウリーニョ監督はこれまでのキャリアと同様に、就任2年目のリーグ優勝をしかと見据えている。ルーニーは去ったが、ズラタン・イブラヒモビッチは一旦フリーになった後に戻ってきた。スウェーデンの王様がベンチ要員を受け入れれば、これほど頼れるジョーカーもいない。

チェルシー(イングランド)
【IN:アルバロ・モラタ、ティムエ・バカヨコ、ダニー・ドリンクウォーター、アントニオ・リュディガーなど】
【OUT:マティッチ、ナタン・アケー、フアン・クアドラード、ナサニエル・チャロバーなど】

 プレミアリーグ王者も2億ユーロ(約260億円)以上の移籍金を投じたが、全体的に後手に回った印象だ。ジエゴ・コスタとアントニオ・コンテ監督の関係は修復不可能となり、その後釜に据えようとしたルカクをユナイテッドに横取りされ、第2候補のモラタにはクラブ史上最高額を費やした。ウイングバックに関しても、優先順位の高い選手はことごとく取り逃がし、ギリギリでイタリアの上昇株であるザッパコスタを迎えて帳尻を合わせた。

 マティッチの放出には大きな疑問符がつくし、6度のレンタル移籍を経験してきた生え抜きの有望株のチャロバーは、自身の将来を考慮して正式にクラブを去った(そして新天地ワトフォードで活躍してイングランド代表に選出)。4つのタイトル獲得を目指す今季、薄い選手層は気になるところだが、このイタリア人指揮官は逆境でこそ力を発揮するはずだ。

レアル・マドリード(スペイン)
【IN:テオ・エルナンデス、ダニ・セバジョスなど】
【OUT:モラタ、ダニーロ、ハメス・ロドリゲス(ローン)、ペペなど】

 欧州王者は余裕の夏を過ごした。モラタやダニーロ、ロドリゲス、ペペといった過剰戦力を放出し、代わりに迎え入れたのはスペインで育った20歳前後の有望な若者たちだ。クリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルといった外国籍のスターに交えて、イスコやマルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケスらスペイン人選手をうまく起用してきたジネディーヌ・ジダン監督は、スペイン化をさらに推し進めているように見える。

 全体の戦力値で見ればマイナスかもしれないが、レンタルバック組も含めて、新戦力には大きな伸びしろと潜在能力がある。若手の登用にも積極的な名将のもとで、第2、第3のアセンシオが生まれるか。

バルセロナ(スペイン)
【IN:ウスマヌ・デンベレ、パウリーニョ、ネウソン・セメド、ジェラール・デウロフェウなど】
【OUT:ネイマール、ジェレミー・マチュー、ジョルディ・エンブラ(リザーブチームから)など】

 ネイマールの売却金のおよそ半額を費やしてドルトムントから獲得したのは、20歳のフランス代表デンベレ。リバプールのコウチーニョやアトレティコ・マドリードのアントワーヌ・グリーズマンが取れなかったことによる次善の策だが、まだプロになって3年目の若手に投じた推定1億500万ユーロ(約136億円)が正しいものかどうかは、未来が判断することになる。

 一度手放した下部組織出身のデウロフェウを買い戻したものの、リザーブチームで将来を嘱望されていたエンブラは放出。アカデミー出身者を頼りにしなくなったクラブの方針を再確認させるものと言えるだろう。

ユベントス(イタリア)
【IN:フェデリコ・ベルナルデスキ、マトゥイディ、ドウグラス・コスタ(ローン)、ロドリゴ・ベンタンクール、ベネディクト・ヘーベデス(ローン)など】
【OUT:レオナルド・ボヌッチ、マリオ・レミナ、アウベスなど】

 マッシミリアーノ・アッレグリ監督と仲違いしたボヌッチが新天地をACミランに求めた時は、「ユーベの失敗」と見る向きが多かった。しかし、最終的に新チームの選手リストを見たファンの胸は高鳴っていることだろう。

 国内随一の若手アタッカー、ベルナルデスキと快速ウイングのコスタを迎えて、攻撃陣はスケールアップ。中盤では実力者マトゥイディとウルグアイの新星・ベンタンクールがポジションを狙う。ローンで加入したへーべデスと、正式に契約したメハディ・ベナティアらがボヌッチの穴を埋めれば、前人未到のセリエA7連覇は現実的な目標となり、2年連続のCL決勝進出と、悲願の優勝も夢ではなくなる。

バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
【IN:コランタン・トリッソ、ハメス・ロドリゲス(ローン)、ニクラス・シューレ、セバスティアン・ルディなど】
【OUT:フィリップ・ラーム(引退)、シャビ・アロンソ(引退)、レナト・サンチェス(ローン)、ドウグラス・コスタ(ローン)など】

 ラーム、アロンソと絶大な存在感を放ってきたベテランが去り、レギュラークラスのコスタや高いポテンシャルを秘めるサンチェスもローンで放出した。一方、国内随一の将来性を持つシューレで守備を補強し、トリッソとルディで中盤に若さとダイナミズムを加え、攻撃陣にはロドリゲスで華を添えた。しかし、第3節でホッフェンハイムに不覚を取ったように、戦力の収支はマイナスになったように思える。

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