恋愛研究家の六波羅ナオトです。

彼氏や夫のDV(ドメスティックバイオレンス)が話題になることがありますが、なぜそんな男とさっさと別れないのか不思議に思うことはありませんか?

女に手を上げるような粗暴な男だけど、ときおり見せる優しい一面が印象に強く残ってしまい、なかなか別れられないという、心理学的な一面も持ち合わせていると思います。しかし、そういった「ギャップ萌え」だけでは片付けられない何かが秘められていると筆者は考えます。暴力を振るう男とつきあう女性はどんなにツライ想いをしても、また暴力男とつきあってしまう女性までいるくらい複雑な問題です。

今回は、そんな暴力男と繰り返しつきあってしまう女性について考えてみたいと思います。

何度も暴力男とつきあってしまう女子の例

まずは筆者が相談を受けた、A子さんの実例をご紹介します。

筆者の前に現れたA子さんは、健康的でハツラツとしており、とてもDVに悩まされている様子は感じませんでした。そんなA子さんが、筆者に対して過去につきあっていた暴力男との恋愛について語ってくれました。

A子さんは友達の紹介で、当時の彼と出逢いました。彼は口数が多いほうではなく、とても積極的とはいえない草食系男子に見えました。しかし、どこか物憂げな表情が気になったA子さんは彼とつきあうことにしました。

覇気がなく、生活力が頼りない彼を案じたA子さんは独り暮らしをしていたこともあり、同棲を提案するまでにさほど時間を要しませんでした。彼は、契約社員やアルバイトなどの仕事を転々するような生活を繰り返していました。A子さんはWeb制作の会社に勤めており、少ないながらも安定した収入があったので、事実上、彼を養う状態になっていましたが、A子さんは寂しい独り暮らしが長かったこともあり、甲斐性のない彼を問題視せず、受けいれていました。

同棲生活が始まってから間もなく、彼は仕事で嫌なことがあるとA子さんにあたり散らすようになります。最初のうちは、言葉を荒げる程度でしたが、そのうち暴力を振るうようになりました。壁や家具を壊しているうちはまだよかったのですが、仕事を辞めて無職状態になると、彼の暴力はA子さんに向くようになっていったのです。A子さんも当初は戸惑いましたが、今はたまたま不運が続いているだけだろうと、彼の暴力に対し我慢をする日々でした。

そんな彼も、たまに収入があるとA子さんをレストランに連れて行き、イタリア料理をごちそうしてくれました。彼は「将来は雑貨を輸入する代理店を起業して成功したい」と、自分の夢を無邪気に語りもしました。彼のそんな一面を見たA子さんは、おぼろげに「彼の夢が実現するように応援してあげたい」という気持ちに駆られました。

励ましが、暴力をよりエスカレートさせる……!!

彼が仕事でつまずき、A子さんにあたり散らすたびにA子さんは彼を励まし続けました。「2人で頑張って行こうよ」と。しかし、そんなA子さんの励ましが、さらに彼をミジメな思いをさせる原因となり、暴力は激化していきました。

彼を知るA子さんの共通の友人は、彼のことを「そんなことする人には見えない」と口々に言います。また、「本当にそうだとしたら早く別れたほうがいい」と口を揃えてアドバイスしました。しかし、A子さんは彼がときおり見せる無邪気な表情と優しさをどうしても見捨てることができず、暴力や暴言に耐えながら同棲を続けていました。

日々、エスカレートする彼の暴力にA子さんの生傷が絶えなくなり、いよいよ命の危険を感じだした頃に、A子さんの両親がDV被害を受けていることに気づき、強制的に実家に連れて帰ったそうです。A子さんは、彼と離れて暮らすことになり、連絡をとることすら許されませんでした。A子さんはしばらくの間、実家で暮らすことで冷静になり、彼と別れることができたそうです。

しかし、A子さんは最後にこう語りました。

「今つきあってる彼も暴力を振るうんです……」

と。

ちょっと聞くに堪えない話でしたが、筆者としてはA子さんがただの変わり者とか、母性が強い母親のような女性と断じることはできませんでした。なぜなら、A子さんはどこにでもいそうな普通の女子に見えたからです。普通の女子であれば、デートや食事を楽しむ一般的な恋愛をしていてもおかしくないのに、なぜこうなってしまったのかを考えると、色々見えてくることがあったからです。

DV男性と付き合いがちな女性は、確かに存在する。何が彼女たちをそうさせるのか?

その2では、A子さんの心理を例に、A子さんが最後に残した言葉が意味する暴力男との恋愛メカニズムに迫ってみたいと思います。〜その2〜に続きます。