全ての選択肢はテーブルの上にあると言いながら武力攻撃の手段は選べず、石油の全面禁輸まで譲歩した。これでは北朝鮮に核・ミサイル開発の時間を与えるだけだ。問題の根源から逃げてきたアメリカのツケである。

またもや譲歩――北朝鮮を増長させるだけ

日本時間9月12日朝、国連安保理で北朝鮮への制裁決議案が採決された。アメリカ主導で「これまでにない最強の制裁」として、石油の全面禁輸などを宣言しながら、結局、また中国やロシアに譲歩した形だ。事実上、石油禁輸の程度はこれまでと大差ない。金正恩委員長個人の資産凍結さえ盛り込めなかった。繊維の輸入や新たな北朝鮮労働者の新たな受け入れを禁止したくらいでは、何も変わらない。「全会一致」という現象を重視しただけで、効果はあまり期待できないだろう。

これでは、強いことを言ってきただけに、今までよりも更に北朝鮮を増長させるだけだ。

そうでなくともトランプ政権は何度も「すべての選択肢はテーブルの上にある」と言って武力攻撃を暗示しては、結局のところ「犠牲があまりに大きすぎる」として武力攻撃に入れずにいる。

これは何も言わないときよりも北朝鮮を勇気づけ、「結局、武力攻撃はしてこないな」と高をくくらせ、これまで以上に大胆にさせていくだけだろう。

全ての選択はテーブルの上にあると言ったのなら、北朝鮮が最も恐れる選択を実施すればいい。米軍の技術が高いのなら「斬首作戦」を断行するとか、核・ミサイル基地をピンポイント攻撃するとか、あるいはミサイル発射機能をサイバー攻撃するなど、選択肢はないわけではあるまい。こちら側に犠牲が出ない方法だって、取ろうと思えば取り得る。特にピンポイント攻撃に関しては、中国も容認している。

残された時間がないというのに、今回の制裁決議案は、また「北朝鮮が増長するための時間」を与えただけだ。北朝鮮は一気に加速度的に核・ミサイル開発に全力を注ぎ、アメリカまで届く核弾頭弾道ミサイルを完成させてしまうだろう。

アメリカが休戦協定を破っていることが根源的原因

何度も繰り返すが、北朝鮮問題の根源的理由はアメリカが朝鮮戦争(1950年6月25日〜1953年7月27日)の休戦協定(1953年7月27日)を破っていることにある。

休戦協定第60項では、休戦協定締結から3ヵ月以内に、朝鮮半島にいるすべての他国軍は撤退することとなっているが、アメリカを除くすべての軍隊が撤退したというのに、アメリカだけは撤退せずに今日まで至っている。休戦協定はアメリカが暫定的に提案したので、休戦協定の冒頭および第60項では、「終戦のための平和条約を結ぶこと」が大前提となっている。

遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)