ワールドグランドチャンピオンズカップ(グラチャンバレー)女子大会が幕を閉じた。全日本女子は2勝3敗で5位。最終日の中国戦で敗退した後には、報道陣に対応する中田久美監督が涙を見せるなど、ここまで快調な歩みを見せてきたチームにとっては悔しい結果となった。

 しかし、”ポスト木村沙織”の筆頭と見られているエースの古賀紗理那を欠きながら、前回大会の覇者であるブラジルを倒し、世界ランキング2位のアメリカをあと一歩のところまで追い詰めたことは評価されるべきだろう。その健闘の陰には、チームの主軸となる選手たちの活躍があった。


エースの古賀を欠く中、攻守に渡って活躍した新鍋

 ロンドン五輪の銅メダリストである新鍋理沙は、中田監督の就任と同時に全日本に復帰し、”中田ジャパン”のテーマにもなっている「サーブレシーブ」で、ここまで盤石の働きを見せてきた。グラチャンバレーでも、ベストリベロ賞を受賞した井上琴絵らと共に、強豪国の強力なサーブを少しもひるまずにセッターに返し続けた。

 新鍋は、8月のアジア選手権でMVPを受賞しているように、攻撃面の貢献度も高い。この大会ではベストスコアラーランキングで5位、ベストサーバーで3位に入るなど、3年ほど代表から遠ざかっていた影響をまったく感じさせなかった。

 3大会連続で五輪に出場している荒木絵里香も存在感を見せた。リオデジャネイロ五輪では、大会直前に招集されたことでセッターとのコンビが合わせきれなかったが、今季はアジア選手権からチームに合流。グラチャンバレーでは、メインのセッターが元チームメイトの冨永こよみだったこともあって、息の合ったブロードやクイックで得点を重ねた。ベストブロッカーランキングに関しては10位にとどまったが、数え切れないほどのワンタッチを取り、ラリーにつなげている。

 全日本でバレー人生初のキャプテンに任命された岩坂名奈には、「細かく何かを言うことはありませんが、みんなを頼っていいんだよって伝えています」と、自らの経験からアドバイスを送ったという。また、百戦錬磨のベテランは、今の代表チームの強みと弱みについて次のように分析していた。

「(今のチームは)スピードが速いので、合流する前はうまくフィットできるか不安でしたが、みんなが同じペースでローテーションを回るので、すんなりと合わせることができました。スキルが高い選手が揃っていますし、完成度はまだまだ上がっていくと思います。ただ、今回はハイボールやバックアタックを打ち切れる選手がいないことが、とても苦しかったですね」

 実際に、セッターが前衛に上がり、前衛の攻撃が2枚になった時にサーブレシーブが乱れると、その弱点が露呈した。苦しい場面でトスがレフトに偏り、ブロッカーが2枚以上ついてスパイクを打ち切ることができない場面も目立った。そこで相手にブロックされたり、ワンタッチのボールを切り返され、逆にスパイクを決められたりしたことが、ジリジリと相手に引き離され、多くのセットを取り逃した原因のように思える。

 バックアタックを打てる選手がいればブロックを分散させることができるのだが、中田監督は「バックアタックは、決まらないと思ったので(大会途中まで)やりませんでした」と話した。確かに、得点源の新鍋と内瀬戸真実は共に170cm前半で、リーグでもバックアタックは打たない。ようやく4日目のアメリカ戦ではバックアタックを使った攻撃も見せたが、それについては「みなさんが、『なぜバックアタックがないんだ』というので、使いました」と冗談交じりに答えていた。

 来季に期待している選手を問われると、中田監督は「長岡望悠、井上愛里沙、黒後愛ですね」と、180cmクラスの3人を挙げた。長岡は攻撃専門のサウスポーで、黒後と井上はレセプションアタッカーだが、ふたりともバックアタックを打つこともできる。今大会を欠場した古賀も含め、課題をクリアするだけの人材は揃っている。堅い守備とスピードに”飛び道具”が加われば、世界との差はさらに縮まるだろう。

 常に話題にのぼる正セッター争いも、今大会である程度の方向性が見えたように思える。5試合中4試合で先発した冨永は、トスがサイドで雑になったり、左右どちらかに偏ってリードを広げられたりする場面もあったが、中田監督は「厳しい場面、リードされた場面でも最後まで使うことが必要だと思った」と、冨永を代えなかった。出場時間の少なかった佐藤美弥、ケガで外れた宮下遥にも「チャンスはあります」とつけ加えたものの、国際経験の少ない冨永にとって、強豪国相手に苦しい戦いを耐え抜いた経験は大きな財産となるに違いない。

 常に勝利を目指しながら、ガラリとスタメンを変え、いろんな人材を起用することでチーム力を上げてきた中田監督。現段階でのチームの成熟度については、「(東京五輪がある)3年後を100%とするなら、今は40%くらい」と答えた。今大会で明確になった課題も含め、どのように残りの60%を埋めていくのかに要注目だ。

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