仮眠で駐車する大型トラックなどのドライバーに対する一斉取り締まりが行われた。カーテンで運転席を覆うなどして休むドライバーも多い=8月30日午前5時53分、大阪市鶴見区(彦野公太朗撮影)

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 夜明け前の幹線道路に、大型トラックやトレーラーが列をなして路肩に停車している光景を目にしたことはないだろうか。

 夜通し長距離を運転して目的地の事業所などの近くに到着し、車内で仮眠をとりつつ始業時間を待つ運転手が多いが、駐車をしているのは公道で、れっきとした駐車違反にあたる。こうした「違法駐車」が常態化しているとして大阪府警は8月、一斉取り締まりを行った。過重労働が取り沙汰される物流業界で横行していた違反行為。仮にもプロの運転手が交通法規を知らないはずもない。違法と知りながら駐車を続けていた彼らの言い分とは…。(鈴木俊輔)

違法駐車の行列1キロ

 「ここ、止めたらアカンの知ってるよね」

 8月30日午前5時45分、花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区)前の市道都島茨田線。大阪府警の警察官が、和歌山ナンバーのトラックの運転席の窓ガラスをノックした。

 窓から顔を出した寝ぼけまなこの男性運転手は、一度は首を横に振った。しかし、警察官が10メートルほど先にある駐車禁止標識を指差し、「アカンの分かってましたよね」と続けると、観念したように小さくうなずき、免許証を差し出した。

 運転手は「午前5時前に到着し、仮眠をとっていた」と説明。運転席のカーテンは閉められており、周囲に警察車両や警察官がいて駐車違反の確認をしていたことは、「ノックされるまで気づかなかった」と話した。

 府警によると、同線では数年前から路上駐車が横行。公園から近畿自動車道までの約1キロにわたり、多いときには40〜50台のトラックやトレーラーがずらりと並ぶこともある。

 この日は約20台が駐車し、その多くは他府県ナンバーだった。いずれも長距離を走行し、大阪に到着したとみられる。府警は結局、運転手7人に反則切符を交付し、6人に口頭で警告した。

車内にいても「駐車」

 路肩に車を止め、しばらくして戻ると、フロントガラスに駐車違反標章が貼られていた−。こんな苦い経験を持つ人も少なくないだろう。

 駐車違反(駐車禁止違反)は、道路交通法45条で定められた禁止区域に一定時間以上駐車する行為を指す。違反すれば反則切符が交付され、反則金が科される。

 道交法上の駐車とは、車両を道路上で継続的に停止させることで、一時的に車を停める停車とは区別される。「運転者が車を離れて直ちに運転できる状態にない」状態は当然、駐車に該当する。それ以外に、運転者が車内にいるケースでも継続的に停止していれば駐車になる。具体的には「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由で継続的に停止している」状態を指す。

 人の乗降のための停止や5分以内の荷物の積卸しは除外されるが、客待ちで止まっているタクシーは駐車になるし、故障車の場合も同様だ。今回の場合、運転手の多くは、運転席のカーテンを閉めて仮眠をとり、人によっては運転席の後方にある仮眠用スペースで横になっていた。「その他の理由」で継続的な停止にあたる駐車とみなされたわけだ。

どこでもいいわけじゃ…

 それにしても、同じ休むのであれば、高速道路のサービスエリアなどを利用すれば済む話。運転手はなぜ、駐禁のリスクを冒して路上駐車をするのか。

 「俺らにとったら時間通りに現着するのが一番大事だから。絶対に遅れられない」

 反則切符を交付された運転手の1人は打ち明ける。

 物流の世界は納品先への「時間厳守」が大原則で、一分一秒の遅れは死活問題。納品先から離れた高速道路のサービスエリアで調整するよりも、先方がまだ営業していない早朝の時間帯に近くまで来ておき、路上で時間を調整する方がいい、というのだ。

 経費節減という背景もある。大型車駐車可能のコインパーキングは1回当たりの金額が少額とはいえ有料。また、高速料金も深夜移動の方が割安で、「たとえ数百円であっても節約したい」という本音が垣間見える。

 30年以上長距離運転手を続けている男性(66)は取材に対し、「どこに止めるにしても、近隣の人に迷惑はかけんようにしているつもり」と話す。

 大阪を拠点に、北海道から九州まで全国に自動車部品を運んでいるこの男性によると、同様の路上駐車の光景は、全国各地でみられるという。

 「広い道の路肩に止めて待つのが基本だが、どこでもいいわけじゃない。エンジンをかけて待つため近隣に民家がないこと、トイレや朝食を近場で済ませられるかなど、周囲の環境もポイント」

 府警が取り締まりを行った市道は、目の前の公園にトイレがあり、コンビニが近くに数件ある。道幅は広く、近くが公園ということで住宅への騒音をそれほど心配しなくていい。「大阪市内にも門真方面にも行きやすいし、運転手からすると最適」(男性)な好立地というわけだ。

 関係者によると、かつてはトラックに積んだ無線を使い、容易に路上駐車ができる全国各地のスポットについて情報交換をしていたが、現在は携帯電話のSNSなどを使ったやりとりが主流という。

エンジン音、窓からごみ…一部にマナー違反も

 今回の取り締まりは、府警が事前に運転手らに警告を重ね、それでも状況が改善しないために踏み切ったものだ。府警鶴見署によると、近隣住民や道路沿いの公園の利用者らからは、エンジン音や排ガスへの苦情のほか、窓からごみを捨てるなど、一部の運転手のマナーの悪さを指摘する声も届いていた。

 ただ、取り締まり対象となった運転手にもそれぞれ事情があったようだ。

 埼玉県から荷物を積んで大阪に到着、別の大型トラックの後ろに駐車していて反則切符を交付された男性運転手(57)は、初めてこの道を使ったという。「暗くて標識も見えないし、他にも止まっていたので大丈夫だと思って…」と困惑気味。大阪で荷物を積み替え、福井県まで運ぶといい、「(駐車違反をとられたのは)25年やっていて初めてだ」とぼやき、目的地へと向かった。

 辺りがすっかり明るくなったころには、トラックは1台、また1台と動きだし、路上から姿を消した。運転手の1人は「何も考えずに好き勝手に止めているわけではないし、混雑する時間帯までには動く。違法だということは分かっているけど、大目に見てほしいと思う部分もあるよ」とこぼし、走り去った。

 インターネット通販の利用増加などで、運転手の長時間労働が問題となっている物流業界。運転手の過労運転は避けなければならない問題だが、違法駐車が許されるわけではない。ルールやマナーを守りながら、運転手の負担を軽減する仕組み作りが、業界全体に求められている。