トッテナムは移籍市場最終盤にD・サンチェス、オーリエ、ジョレンテ(左から)らを獲得した【写真:Getty Images】

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リーグ開幕時に補強ゼロ。駆け込みで帳尻合わせる

 現地時間8月31日、欧州主要リーグの移籍市場が締切を迎えた。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はトッテナムの補強を読み解く。

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 マンチェスター・シティやマンチェスター・ユナイテッドらプレミアリーグ優勝を狙うライバルチームが戦力強化に大規模な資金を投資する中で、毎年堅実な補強を進めている印象のトッテナム。だが、今季開幕までに獲得した新戦力はゼロだった。

 トッテナムの大きな武器であったダニー・ローズとカイル・ウォーカーのイングランドを代表する両サイドバックも、後者がマンチェスター・シティに移籍したことでコンビ解散となってしまった。そして右サイドバックの穴を誰が埋めるのかにも大きな注目が集まった。

 結局、最初に動いたのは移籍市場の締め切り8日前だった。そこから一気に5人の契約をまとめ、要所に必要最低限の補強を施した。クラブ史上最高額の4000万ポンド(約56億円)を費やしてアヤックスから獲得した若手DFダビンソン・サンチェスが今季最初の新戦力となった。

 そしてウォーカーの抜けた穴を埋めるために、パリ・サンジェルマンからコートジボワール代表のセルジュ・オーリエを獲得。素行面に不安があるものの実力は折り紙つきで、右サイドバックの定位置をキーラン・トリッピアーと争うことになる。

 スウォンジーから獲得した元スペイン代表FWフェルナンド・ジョレンテは、絶対的エースであるハリー・ケインの控えとして活躍の場を与えられることになりそうだ。昨季プレミアリーグで15得点を挙げた32歳は、イングランドへの順応に苦しむフィンセント・ヤンセンよりも安定したパフォーマンスが期待できる。

 2年連続で優勝争いに加わりながらもなかなかタイトルに手が届かないトッテナムだが、即戦力として補強したのはオーリエとジョレンテの2人のみと思われていた。しかし、実際は違ったようだ。アルゼンチンの名門エストゥディアンテスから引き抜いたDFファン・フォイは先行投資的な意味合いが強いものの、D・サンチェスはエバートン戦で3バックの中央を難なくこなしてポジティブな印象を残した。

 とはいえ悲願の優勝を成し遂げるには、大きな伸びしろを残す昨季の主力たちの成長が不可欠だ。ケインを筆頭にデリ・アリ、ソン・フンミン、クリスティアン・エリクセンといった攻撃陣が非常に強力だからこそ、一段上のレベルに達した時に初めてタイトルのチャンスが見えてくる。

 また、チャンピオンズリーグ(CL)ではレアル・マドリーやドルトムントと同組となり、決勝トーナメント進出に向けて厳しい戦いが予想される。優勝を目指すリーグ戦と並行しながら、いかに総合力を落とさないようメンバーをやりくりしていくかも今季の重要なポイントとなる。

 序盤戦のトッテナムは調子がいいとは言えない。プレミアリーグは開幕から4試合で2勝1敗1分と出遅れてしまった。9日のエバートン戦は快勝したが、昨季とチームのベースが変わらないだけに、今こそ名将マウリシオ・ポチェッティーノの腕の見せどころである。

補強・総合力診断

IN
GK パウロ・ガッザニガ(サウサンプトン←ラージョ・バジェカーノ/期限付き移籍期間満了)
DF ダビンソン・サンチェス(アヤックス)
DF セルジュ・オーリエ(パリ・サンジェルマン)
DF ファン・フォイ(エストゥディアンテス)
FW フェルナンド・ジョレンテ(スウォンジー)

OUT
GK パウ・ロペス(エスパニョール/期限付き移籍期間満了)
DF カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)
DF ケビン・ヴィマー(ストーク・シティ)
DF キャメロン・カーター=ヴィッカース(シェフィールド・ユナイテッド/期限付き移籍)
MF ジョシュ・オノマー(アストン・ヴィラ/期限付き移籍)

補強評価:C

 ほぼ昨季と変わらないチームである。新戦力のジョレンテはケインの控え要員としての獲得であり、ウォーカーを抜けたことも考慮すれば、オーリエの獲得では大幅な戦力アップとまでいかなかった。新スタジアムの建設で財政的余裕がなかったのだろうか。今夏は現状維持のための補強と言わざるを得ない。

総合評価:C

 スタメンの顔ぶれは昨季とほぼ変わらず。絶対的エースであるケインを中心にソン・フンミン、デリ・アリ、エリクセンの攻撃陣でシーズンを戦うことが予想される。ストライカーの控えには新加入のジョレンテやオランダ代表の若手ヤンセンが控えているものの、ケインとの差はまだまだ大きく、絶対的エースへの依存度はこれまでと変わらないだろう。

 また、エリック・ダイアーの代わりが務まる人材が他にいないこともチームの弱点になりかねない。4バックと3バックの併用がスムーズに成立したのは、センターバックとボランチを高いレベルでこなすダイアーがいたからこそ。リーグ戦、国内カップ戦、CLを並行して戦う過密日程の中で、チームを縁の下から支える守備職人をどのように起用していくかも注目すべきポイントである。

 守備陣ではヤン・フェルトンゲンとトビー・アルデルヴァイレルトのコンビは熟練度を増し、今季も盤石。ローズと新戦力オーリエ、あるいはトリッピアーやベン・デイビスも控える両サイドバックはプレミア屈指だ。守護神ウーゴ・ロリスを中心に手堅く守り、順調に勝ち点を積み重ねていけば悲願の優勝を狙える可能性は十分にあるが、やはりチーム全体の選手層がそれほど厚くないことを考えれば過密日程への対応に不安は残る。

text by 編集部