■「自衛のための軍」改正を

 前橋市日吉町の前橋商工会議所会館で11日、開かれた群馬「正論」懇話会(川崎弘・群馬綜合ガードシステム社長)第46回講演会。

 「日本国憲法−拉致問題解決の見えない壁」と題して講演した参院議員で日本のこころ代表の中山恭子氏は、現行憲法が拉致被害者救出など海外で被害にあった日本人救出の障害になっていると指摘。独立国家として国民を守れる憲法に改正するとともに「日本が培ってきた独自文化を生かし世界の文化交流が行われる国であってほしい」と将来への指針を示した。

 拉致被害者家族担当の内閣官房参与を務めた中山氏は、平成14年に拉致被害者5人と北朝鮮で面会。交わした短いあいさつで「なんとしても日本に帰りたいとの思いが伝わってきた」と振り返った。ただ「北朝鮮にとっては拉致した人間は大事な獲得物で自分のもの。罪の意識は全くない」と認識の違いを説明した。

 そんな国と日本は同年9月、日朝平壌宣言を交わしたが、そこに「拉致」という言葉はなく「懸案問題」として「再び起こさないよう適切に対応する」としただけで、「それ以前の拉致については触れていない。合意した時点で拉致は終局という外務省の認識が見て取れる」と指摘した。

 26年5月の日朝間のストックホルム合意も、この延長線上のもので「読んで驚いた。これでは救出できないと思った」という。

 拉致問題以前、ウズベキスタンとタジキスタンの大使を務めた11年、中央アジアで起きた日本人鉱山技師4人の誘拐事件でも、外務省の指示は「解決は当事国政府に任せ、日本大使館は情報収集に専念せよだった」。悩んだ末に救出に動き4人も解放されたが、外務省の思考は「当事国、相手国の政府にお願いし、お任せするという発想」。原因は憲法にあるという。

 憲法は戦後、日本に力を持たせないとの考えの下、連合国軍総司令部(GHQ)が言論統制の中、急ぎ作ったもので「国が国民を守るという文言はどこにもない」と指摘。「憲法を忠実に守って仕事をしている外務省を責めても解決しない」とし、拉致被害者救出に進展がないのも「憲法が壁になっている」とした。独立国家として国民の生命を守ることを憲法に明記し、「自衛のために軍を保持できるよう」9条を改正する必要性を説いた。

 大戦中の昭和18年、「世界で唯一、日本民族だけは滅んでほしくない」とパリで訴えた仏の詩人ポール・クローデルを紹介、「彼は高貴な民族として日本人を称賛した。日本はそんな素晴らしい国」とし、世界平和と国際社会に貢献するため、「長年培ってきた日本の独自文化を生かし、世界の文化交流が行われる『文化のプラットホーム』であってほしい」と述べた。

 講演後、高崎市の弁護士、田中善信さん(73)は「国民を守るのが憲法なのに国が国民を守る規定がない。軍なくして国民は守れない。憲法問題だけでなく日本の文化についても努力されている中山氏には頭が下がる思い」。伊勢崎市の会社代表、高橋喜美雄さん(74)は「北朝鮮からミサイルを打ち込まれ続ける今、国民と国土を守る憲法に改正すべきだ」と語った。

 ◇なかやま・きょうこ 前橋女子高から東大文学部卒。昭和41年、大蔵省(現・財務省)入省、女性として同省初の課長、財務局長、審議官を歴任。ウズベキスタン特命全権大使などを経て平成14年に拉致被害者家族担当の内閣官房参与に就任、北朝鮮で拉致被害者5人を出迎えた。18年に第1次安倍内閣の拉致問題担当首相補佐官を務め政界へ。福田内閣で拉致問題担当などの特命大臣。22年に自民党を離れ現在、日本のこころ代表。今春、同党の日本国憲法草案をまとめた。