保存性と携帯性に優れ、片手で手軽に食べられることから、古くからお弁当などとして親しまれている「おにぎり」。現代では、コンビニエンスストアにも数多くの商品が並ぶなど国民食とも呼べる存在ですが、このおにぎりと似た言葉に「おむすび」があります。両者は同じものでしょうか、それとも何か違いがあるのでしょうか。

 オトナンサー編集部では、おにぎり協会の中村祐介代表に聞きました。

おにぎりは「握飯」の丁寧語

 中村さんによると、「おにぎり」と「おむすび」という2つの言葉はそれぞれ男性言葉と女性言葉に対応しているそうです。

「奈良時代の文献『常陸国風土記』にご飯を握る動作に由来する『握飯(にぎりいい)』という言葉が登場します。その後、この握飯の丁寧語として『おにぎり』が使われ始め、戦国時代には、武士が戦場に持っていく握り飯を指す言葉として主に男性が使用していたとされます。実際、関ヶ原の戦いで、武士が握り飯を戦場に持参していたという記述も残されているのです」(中村さん)

 一方、おむすびは江戸時代、宮中や大奥に仕えた女官など、非常に限られた世界の女性の間で、おにぎりを指す語として使われていた女性言葉といいます。

 つまり中村さんによると、おにぎりとおむすびは別の物を指すわけではなく、その言葉を使用するのが男性か女性かという違いがあったにすぎません。

 

形状や地域による違いは…?

「三角形や俵型、丸型などの形状や地域による違いなど、呼称についてはさまざまな議論がありますが、現代においても、おにぎりとおむすびに明確な違いはありません。呼び方の差異はあくまでも家庭や個人レベルといってよいでしょう」

 ちなみに「日本大百科全書」(1987年)における「握り飯」の項に「江戸の握り飯は丸形か三角形だが、後者のほうが多かった」とあり、江戸時代後期に書かれた「守貞漫稿」における「握飯」の項には「三都トモ、形定ナシト雖ドモ、京坂は俵形ニ制シ(後略)」「江戸ニテハ、円形、或ハ三角等(後略)」との記述があるそうです。

(オトナンサー編集部)