米アマゾン・ドットコムはこのほど、北米に新たな事業拠点となる「第2本社」を建設すると発表した。同社の本社は創業以来、米ワシントン州シアトルにある。だが、今後、この本社を残しながら、新たに同規模のもう1つの本社「HQ2」をシアトル以外に建設するという。

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20年間で50億ドル投じる計画

 その投資額は今後20年間で50億ドル(約5400億円)。とは言ってもまだ、建設地は決まっていない。アマゾンはまず、北米の州や自治体を対象に候補地を募る。今年10月19日までに提案書を受け付け、来年、建設地を選定する。そして2019年にはこの新社屋を開設したい考えだ。

 候補地の必須条件は、「人口100万人以上の都市圏」「優秀な技術人材を引き付け、保持することができる都市やその周辺」、などとしている。アマゾンはこの第2本社で、新たに5万人を新規採用する計画だからだ。

 この5万人とは、シアトル本社の従業員数である約4万人を上回る数。これに伴い、第2本社もシアトルと同じ規模か、それ以上のものが必要になるということのようだ。

自治体は経済効果に期待

 同社が公開した資料によると、シアトル本社には、その周辺の施設も含め、合計33棟のビルがある。これらの総面積は810万平方フィート(約75万2500平方メートル)と、東京ドーム16個分。

 その2010〜2017年の設備投資額は、37億ドル。同じ期間に従業員に支払った報酬総額は257億ドル。さらに地域経済にもたらした間接投資額は380億ドル(2010〜2016年)になる。地域にとって、その経済効果は大いに期待できるため、今後、州や自治体による誘致合戦が激化しそうだ。

 米ウォールストリート・ジャーナルの9月7日付の記事によると、トロント(カナダ・オンタリオ州)、シカゴ(米イリノイ州)、デンバー(米コロラド州)などの都市が、すでに名乗りを上げているという。

もはや小さくなったシアトル

 こうしてアマゾンが、本社と同等の事業拠点を新たに設けるのは、拡大し続ける事業に対応することが目的だ。そして、シアトル以外の都市に新社屋を建設する理由は、同社がシアトルで巨大になりすぎたからだと、ウォールストリート・ジャーナルの9月9日付の記事は伝えている。

 アマゾンの創業は1994年。同社はその翌年から書籍のネット販売を開始し、1997年に上場。それから20年、その事業は拡大し、今も高い成長率で伸び続けている。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、シアトル中心地の全商業用不動産に占める、アマゾンのオフィススペースの比率は1割に上る。また、シアトルで過去1年半、新たに提供されたオフィススペースのうち、アマゾンの施設が占める比率は5割以上になる。

 つまりシアトルでは、オフィススペースが足りなくなっている状況。これに関連し、この都市では、不動産価格が上昇。さらに失業率が低下し、人件費も高騰している。これらは、すべてアマゾンはもたらしたものだ。

 急成長するアマゾンは、その事業拠点の規模を2倍に拡大しようとしている。しかし、もはやシアトルは、同社にとって小さな都市になってしまった。これが、同社がシアトル以外の都市に新たな事業拠点を求める理由のようだ。

筆者:小久保 重信