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何がしたいのかさっぱり不明の“若狭新党”

 小池百合子東京都知事の側近の1人である若狭勝衆院議員や、民進党を離党・除籍された細野豪志衆院議員、長島昭久衆院議員らが、新党の結党を目指している。新しい政党を立ち上げるというのは、大変な力業を必要とする。同志を集める、政治資金を用意する、何よりも、何のために新党を結成するのか、その政治目標は何なのかを明瞭に示す党綱領はどうするのか、等々である。

 若狭氏や細野氏らは自民党と対抗できる政党を結成し、二大政党体制を目指しているようだが、その迫力がまったく伝わってこない。若狭氏のオフィシャルブログを見てみると、次のようなことが書かれていた。

<なぜ二大政党制が必要なのか。私は、今般、二大政党制の趣旨を踏まえ、新しい国政政党を作る必要があると訴えております。物語風に説明させていただきます。

 あるところに1つの飲食店がありました。当初、味もよくお客さんに対する対応も誠実であり、お客さんが相当増えました。その後、客が増えたことから店のメニューも古いままで、しかも、お客さんに対する対応もぞんざいになっていきました。しかし、その近くにはその一店しかなかったため、お客さんは、我慢してその店に通っていました。

 そして、近所に新たに飲食店ができました。新しい店は、メニューも工夫し、味も良く、お客さんに対して、もてなしの心で接しました。結果、少なからずのお客さんが自らの選択で新しい店に通うようになりました。

 同じように、競い合える2つの政党があれば、有権者である国民において、選択の余地が出て、一層正しい選択が可能となります。>

 あまりにも出来の悪い例え話であることを割り引いたとしても、これでは何をやりたい政党なのかは、まったく不明である。肝心のメニューが、何もないからだ。

 そもそも若狭氏自身、元は自民党の衆院議員であった。その自民党を離党したのは、今年夏の都議選で「都民ファーストの会」を応援するためであり、自民党政治のあれこれを批判して離党したものではなかった。要は、小池都知事にくっついていくというだけのことなのだ。

 自民党政治の何をどう変えるのか、この肝心要のことをまったく語ることもできずに新党などとは、片腹痛いと言うしかない。そもそも小池氏自身も、国政のどこをどう変えるのかという構想など持ち合わせていないと思う。物事は、ほどほどということも大事だ。知事選、都議選の勢いを駆って、国政まで手を伸ばすのは、はっきり言ってやり過ぎである。まずは都政の課題にこそ全力で取り組むのが本分と言うべきだろう。

小池氏には圧倒的なリーダーシップがあった

「民進党を出て、新たな政権政党をつくるため立ち上がりたい」、これは民進党を離党した細野豪志衆院議員の言葉だ。しかし、細野氏らが、なぜ民進党を離れたかと言えば、明確に語られているのは、共産党との選挙共闘に異を唱えたということだけである。「何かを成し遂げたい」というのではなく、「共産党との共闘は嫌だ」というだけのことなのだ。

「新たな政権政党をつくる」というのは、自民党に代わる政権政党をつくるということだ。そのためには、圧倒的なリーダーシップを持つ政治家が不可欠である。小池都知事が知事選や都議選で大勝利を収めたのは、それがあったからだ。

 小池氏自身が「崖から飛び降りる決意」と語ったように、同氏の挑戦は、半端な決意でできることではなかった。自民党、公明党の連合は巨大な力を持っていた。そこに正面からぶち当たっていったのである。もし知事選挙で敗北していたなら、小池氏の政治生命は完全に終わっていただろう。まさに政治生命を賭けた挑戦だった。

 細野氏や若狭氏に、小池氏のような政治度胸も、政治的力量があるとは、到底、思えない。若狭氏などは、小池氏のおかげで当選しただけの“ひよっこ”議員である。小池氏の後ろ盾がなければ、当選すらおぼつかないだろう。この動きについて、ある自民党の長老が、「民進党を滅ぼすことはあっても、自民党に仇なす勢力にはならない」と語ったそうだが、その通りである。

 細野氏にしろ、長島氏にしろ、民主党政権では要職を務めてきた人物である。民主党政権の失敗の責任を担わなければならない立場なのだ。細野氏に至っては、ついこの前まで蓮舫代表の下で、代表代行を務めていた。だが彼らは、民主党も、民進党も立ち直らせることはできなかった。

かつて一度あった大物政治家の自民党大量離脱

 簡単に「新党だ」「政界再編だ」などと言うが、小政党の離合集散はあったとしても、文字通りの政界再編は、巨大与党である自民党の分裂でもなければ起こりようがない。

 戦後、それが一度だけあった。それが1993年の小沢一郎氏、羽田孜氏、武村正義氏らの自民党大量離党である。小沢氏らは新生党を、武村氏らは新党さきがけを結党した。

 当時の小沢氏は、幹事長なども歴任し、自民党の最高実力者と見なされていた。また、「政権交代可能な二大政党制実現のための政治改革」を大スローガンに掲げ、これが多くの国民の支持を獲得していた。「政治改革」の中心は、小選挙区制と政党助成金の導入であった。これが本当に「政治改革」だったのか、評価が分かれるところではあるが、少なくとも当時は、これに反対する勢力は「守旧派」などというネガティブキャンペーンが行われたものである。

 小沢氏や羽田氏らは、いわゆる大物政治家だった。それが、これだけのダイナミックな行動を起こしたからこそ、新党が結成され、非自民の細川護権をつくりあげたのだ。

 それに比べて、今回の頼りなさ、ひ弱さは目を覆うものがある。今回の新党騒動のキーパーソンは、小池百合子氏である。民進党離党組も、若狭氏も、ただただ小池氏の力を頼っているだけのことなのだ。

 報道によれば、民進党から離党を模索している議員が数名いるという。まさか細野氏を頼っているわけではあるまい。頼っているのは、小池都知事の後ろ盾だ。それが見え見えだからこそ、若狭氏も「第二民進党のような形になることはない」と強調し、今後、予想される「民進党離党議員」の動きをけん制しているのだ。これらの動きのどこに大志を感じることができるだろうか。感じるのは、“我が身大事”という姑息さだけである。

 だが小池氏やファーストの会の人気が、いつまでも続くという保証はどこにもないということを知るべきだろう。

前原執行部は離党組に厳しく対処すべき

 民進党代表選の際の討論会で、枝野幸男氏は離党組に対して「厳しく対応しないといけない。きちんと公認候補を立てる」として、次期衆院選での対抗馬擁立を主張していた。それに対し、前原氏は「政治状況やガバナンスなど総合的に勘案すべきだ」と述べていた。

 政党には、けじめが必要だ。民進党や民主党には、これが一番欠如していた。

 今、民進党にとって最も苦しい時期である。これを乗り切るのは容易なことではない。本当に、党に対して愛着を持っているのであれば、こういう時にこそ歯を食いしばって耐え抜き、前進を目指すものだ。その時に、後ろ足で砂をかけて出て行くのが離党組である。民進党の将来に見切りをつけたからこそ、そういう決断をしたのである。

 こういう連中と手を結ぼうなどというのでは、党内にも示しがつかないはずだ。枝野氏が主張してように、対抗馬を擁立し、勝利を目指すべきなのだ。この気概もないような政党が、政権政党に復活できるわけもなかろう。

筆者:筆坂 秀世