MEGAドン・キホーテの店舗(「Wikipedia」より)

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「最驚安」「初夏の熱驚プライス」「驚安野菜 相場高無視」――。これらは、「MEGAドン・キホーテ(メガ・ドンキ)渋谷本店」の店内POPに書かれている言葉だ。店内は安さを訴求するPOPが氾濫していた。

 メガ・ドンキとは、売り場面積が平均7000平方メートル以上、取扱商品数が10万アイテム以上の「ドン・キホーテ」のことをいう。

 そのメガ・ドンキが5月に東京・渋谷でオープンした。国内屈指の乗降客数を誇るJR渋谷駅から徒歩5分の好立地にある。近くに提携する駐車場もあるため、自家用車で行くこともできる。店舗は地下1階から地上6階までが売り場で、日用品や雑貨、衣料品、生鮮食品などをドンキ特有の「圧縮陳列」で所狭しと陳列している。

 筆者は8月中に2度同店を訪れたが、いずれも多くの客で店内は賑わっており、好調のほどがよくわかった。

 メガ・ドンキ渋谷店が、通常のドンキと大きく異なるのが、地下1階の食品売り場だろう。青果・鮮魚・精肉・総菜の生鮮品が充実し、一般的な食品スーパーと比べても遜色がないほどだ。むしろ、小さな食品スーパーより充実しているように思う。

 筆者が訪れたとき、エレベーターで降りてすぐの売り場ではタイムセールが行われていた。ニンジンやケーキを半額に近い値段で、時間限定で販売していた。

 食品売り場で特徴的だったのが、ドンキ特有の安さを訴求したPOPだ。「驚安プライス」「箱買いがお得」といった文字と価格を書き込んだ大きめのPOPが売り場のいたるところに設置されていた。とにかく「安さ」を訴求している点が印象的だった。

 特に、POPに安さの理由を書き込んでいるのは戦略的だと感じた。「大量仕入れの為」「問屋様在庫を一括仕入れ」「競合店対抗価格」といった“ありがち”な理由もあれば、「担当者商談により実現」「大田市場直接買い付け」「驚安野菜 相場高無視」といった、ユニークでドンキならではと感じさせる理由まである。安さの理由説明をPOPで行うことで、「安かろう悪かろう」というイメージを払拭しているといえる。

 このように、メガ・ドンキ渋谷店では食品に力を入れている。ドンキの従来の主なターゲット層である若者に加え、主婦や子供連れのファミリー、高齢者層を加えて幅広い世代の集客を狙っているからだ。実際に、そういった層の客が少なくなかった。

●ドンキは創業以来、28期連続の増収増益

 食品は集客の目玉になり得る。食品を低価格で訴求して集客を図り、非食品で利益を稼ぐ構図を描くことができる。運営会社のドンキホーテホールディングス(HD)の17年6月期の国内小売事業における食品売上高の構成比は35.7%だが、粗利益の構成比は24.0%にすぎないことからも、それが理解できる。つまり、利益を削って低価格で販売することで、販売数が伸びて売上高が拡大しているのだ。

 小売事業(海外含む)における食品売上高の構成比は、拡大傾向にある。13年6月期は29.6%にすぎないが、17年6月期には34.2%にまで拡大している。5期で4.6ポイントも増加していることからも、食品に対する力の入れ具合がわかる。ちなみに、17年6月期で販売点数が一番多かったのは「牛乳」で、2番目は「焼き芋」だという。

 ドンキHDの業績は好調だ。17年6月期連結決算の売上高は前年比9.1%増の8287億円、営業利益は同6.9%増の461億円と、大幅な増収増益だった。しかも、ドンキ1号店の創業以来、28期連続の増収増益だ。まさに、飛ぶ鳥を落とす勢いといえる。

 そんな好調のドンキHDが6月13日、ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)と資本・業務提携を結ぶと発表した。ユニー・ファミマHD傘下の総合スーパー(GMS)、ユニーの株式をドンキHDが40%取得するという。

 ドンキHDは、衣料品に強みを持つGMS「長崎屋」が経営不振に陥っていたところを07年に買収し、食品を充実させたメガ・ドンキに業態転換するなどして再建に成功した実績がある。

 そうしたこともありユニー・ファミマHDは、長崎屋を立て直したドンキのノウハウを取り入れて、ユニーの店舗をドンキ業態に転換したり、ユニーとドンキのダブルネームの新業態店に転換するなどして不振のユニーを立て直したい考えだ。ドンキに対する期待の高さのほどがうかがえる。

●メガ・ドンキは「GMSの再生モデル」

 GMS業界は、退潮が叫ばれて久しい。ユニーに限らず、イオンやセブン&アイ・ホールディングス(HD)などもGMSで苦しんでいる。そうしたなか、各社が力を入れているのは食品だ。一例だが、セブン&アイHDは傘下の西武所沢店で衣料売り場を縮小し、ニーズの高い食品売り場を1フロアから2フロアに拡大したところ、客数と売上高が前年を大きく上回るようになった。このように、GMSの立て直しには食品の充実が欠かせないだろう。

 以前のドンキは、食品に強いとはいえなかった。圧縮陳列や手書きPOP、24時間営業によるナイトマーケットの開拓、インバウンド市場への対応などで若者を中心としたドンキ特有の顧客層を開拓してきたこともあり、食品が手薄でも問題がなかったからだ。

 だが、若者中心でも成長し続けてきたドンキが、貪欲に若者以外の層も取り込みにかかった。08年に誕生したメガ・ドンキを「ファミリー型総合ディスカウントストア」と位置づけ、若者はもちろん主婦や子供連れのファミリー、中高年層を取り込むことに成功した。そういった層を取り込むには食品の充実が不可欠だ。そのため、ドンキは食品に力を入れていったのだ。

 メガ・ドンキは「GMSの再生モデル」と位置づけられている。得意分野ではなかった食品に力を入れ、高まっているニーズに対応するようにしていった。その歴史は長いとはいえないが、メガ・ドンキ渋谷店を訪れてみて、その完成度の高さから競合に勝るとも劣らないレベルに達していると感じた。ユニー・ファミマHDがドンキHDの力を借りたいというのも頷ける。

 海外に目を向けるとドンキHDは6月、米国ハワイ州に24店の食品スーパーを展開する企業を買収すると発表した。ドンキHDは、ハワイ州に拠点を置くダイエーの子会社を06年に買収したり、北米やハワイに食品スーパーを展開する企業を13年に買収するなど、米国でスーパー事業を推し進めている。こうした経緯もあり、海外でも食品分野に磨きをかけてきたといえるだろう。

 いずれにしても、将来性のある食品分野で力をつけて消費者の胃袋をもつかんだドンキHDは、これからも成長を続けていくだろう。進化していくその姿から目が離せない。
(文=佐藤昌司/店舗経営 コンサルタント)