文章がぐっと伝わりやすくなるテクニックを紹介します(写真:tsuppy / PIXTA)

文章を書くことに苦手意識を持つ人は多いものです。しかし、ビジネスでもプライベートでも、文字コミュニケーションが必要なシーンは、ますます増える一方。もし書ける力があれば、強い武器になります。
ではどうすればいいか? 「ビジネスで必要な文章を“速くわかりやすく書く”のに、文才は必要ありません」と言うのは、書籍ライターとして、業界でも最多に近い年間10冊以上の書籍ライティングを手がける佐藤友美さん。ビジネスノンフィクション『道を継ぐ』をはじめ、あらゆるジャンルの人の言葉をわかりやすくまとめてきたライターだけが知っている、ちょっとしたテクニックを紹介してもらいます。

目指すのは「全員が同じ解釈」できる文章


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対面や電話で話すのは得意なのに、文章になるとなぜか自分の言いたいことが伝わらないという人がいます。

そういった文章に苦手意識を持っている人に話を聞くと、過去に自分が書いた文章を意味不明と言われたとか、内容を誤解されてトラブルになったという経験のある人が多いようです。

今回は、そういった意味不明な文章や誤解がなぜ生まれるのかを解説し、読んだ人全員が同じ解釈ができる文章にするためのコツをお伝えします。

■避けるべきは「形容詞」「指示語」「ビッグワード」の3つ

ビジネスにおける文章では、受け取る人によって異なるイメージを抱く「あいまいな表現」を可能なかぎり避けるのがポイントです。

具体的には、

形容詞
指示語(こそあど言葉)
ビッグワード

の3つが、あいまいな表現の典型例です。ビジネス文書から、これらをできるかぎり排除すると、ぐっと伝わりやすくなります。

■あいまい語を置き換えて、文章のネジを締める

これらの「形容詞」や「指示語」「ビッグワード」は、誰が読んでも同じように伝わる表現に置き換えていきましょう。

この作業を、私は「文章のネジを締める」と呼んでいます。

相手によっていろんな解釈をされてしまう、いわば「ふわふわ浮ついた文章」から、誰もが同じ解釈をしてくれる「きちっと固定された文章」にするのです。

この「ネジ締め」をするだけで、文章が明確になり、誰が読んでも誤解なく伝わる文章になります。

それでは、具体例を紹介していきます。

「形容詞」を数値化する

これは私自身の経験ですが、初めてビジネス書籍のライティングをしたとき、編集さんから「形容詞はいっさい使わないで書いてください」と言われて、驚いたことがあります。

というのも、それまで私が原稿を執筆していた女性ファッション誌では、「美しい」「かわいい」「甘い」「若々しい」「優しい」……などの形容詞のオンパレードで、いかにキャッチーな形容詞を使うかがライターの腕の見せどころだったからです。

■なぜ形容詞を使ってはいけないのか

しかし、これら「美しい」「かわいい」などの形容詞は、人によって受け取り方がまちまちになる、あいまいな言葉です。

ファッション誌であれば、夢やあこがれを提案する媒体なので、それぞれの読者が思い思いにイメージをふくらませてもいいのですが、ビジネス文章では、受け取る相手によって解釈が変わる文章はトラブルのもと。形容詞はビジネス文書にはご法度なのです。

形容詞だけではなく、「静かな」「親切な」などの形容動詞や、「速く」「上手に」などの副詞も、人によって解釈が変わるあいまいな言葉が多いので、できるだけ避けましょう。

メールや企画書の中で「『すぐに』提出します」「『強い』インパクトが期待できます」などの言葉を使っていませんか? 「すぐ」も「強い」も主観的な言葉で、人によってとらえ方が変わります。ですから、これらの言葉を、誰が読んでも誤解がない文章に変えていきます。

先ほどの例でいうと、

「『すぐに』提出します」→「今週金曜日の正午までに提出します」
「『強い』インパクトが期待できます」→「昨年比3割増の収益を見込んでいます」

などの数値に置き換えて、誰が読んでも同じとらえ方ができる文章にします。

同様に、「人気のレストラン」であれば、「2017年上半期のA社の口コミランキングで、エリア2位の人気レストラン」とか、「3カ月以内の予約は100パーセント取れない人気のレストラン」などと数値を交えて書きます。このように数値で説明することで、書き手と読み手の間にある「人気」という言葉に対する受け取り方のズレを防ぎます。

■感覚的な言葉を具体化する

必ずしも数字に置き換えられない感覚的な言葉を扱わなくてはならないときも、できるかぎり「具体化」します。

具体化するときは、5W1Hを意識します。いつ、どこで、だれが、どれくらい、なんのために、どんなふうに、のいずれかを明確にすることで、読む人が理解しやすくなります。

私の場合、ライター人生の前半は、ずっと美容関係の原稿執筆をしていたので、美容師さんやヘアメイクさんの「もうちょっとふんわりさせて」とか「この空気感がかわいい」などの感覚的な言葉を、読者に対して「翻訳」するのに苦労した経験があります。

このような場合も、5W1Hを意識して、できるだけ具体化します。

たとえば、あるヘアメイクさんが「髪にワックスをつけてふんわりさせて」と言った言葉を、「髪を乾かしたあと(When)、耳の付け根よりも上の部分の髪に(Where)、マット系のワックス(What)をあずき1粒ぶん(How much)のばしてつけます。根元を起こすために(Why)ドライヤーをあて(How)、空気を入れて(How)立ち上げて」と書いたこともあります。

前者にくらべて後者のほうが、読む人がその動作を再現できる確率が高まるはずです。

指示語の多い文章はわかりにくい

次に、「こそあど言葉」と言われる「指示語」についてお話しします。

これ、それ、あれ、どれ、などの指示語は、日常会話の中ではよく使われます。対面で話すときは「こそあど言葉」を使っても、会話にずれが起こることはほとんどありません。

しかし文章の中では、指示語が何を指しているのかがわかりにくく、そのために文章の意図が伝わらなくなるケースをよく見かけます。

■「こそあど」言葉を言い換える

小説など、情緒が求められる文章であれば別ですが、全員に同じ解釈をしてもらいたいビジネス文書では、可能なかぎり、指示語を排除して、言い換えるクセをつけましょう。

ここからわかるように
→図1で示したグラフからわかるように〜
その点につきましては現在調査中です。
→指摘いただいたサーバーの不備につきましては現在調査中です。
こちらサイドとしましては、それで問題ありません。
→クライアント様も弊社も、午後8時終了の予定で問題ありません。

などのように、これ、それ、あれ、が何を示しているのかを、具体的に言い換えましょう。

指示語の少ない文章は、きゅっとネジが締まって、文章にぐらつきがなくなります。文章がぐらつかないということは、誰が読んでも同じように伝わるということ。今まで、文章でのコミュニケーションがうまくいかなかった人は、ぜひ、気にしてみてください。

つい使いがちな「ビッグワード」にも注意

最後に、「ビッグワード」についても触れておきます。

これは『できる人が絶対やらない資料のつくり方』などの著者である清水久三子さんに教わったことですが、ビッグワードとは、言葉の解釈の範囲が大きすぎて、受け取る人によって印象が変わってしまう言葉を指します。

この「ビッグワード」も、ビジネス文書の中でできるだけ使わないほうがよい言葉のひとつです。

■ビッグワードは「何も言ってない」のと同じ


たとえば「最適な解決策」「迅速な処理」などの言葉は、何かを伝えているようでいて、実は何も伝えられていないビッグワードの典型です。

「最適」とは何を基準に最適と判断するのか、「迅速」とはどれくらいの速さなのか、などを明確にすることによって、はじめて読む人にとって意味のある文章になります。

特に企画書や提案書などでは、耳当たりのいいビッグワードを並べてしまいがちですが、そのような企画書や提案書には、「実態」がありません。実態がないだけではなく、解釈があいまいなままプロジェクトが進むと、結局効果があったのか、なかったのか、判断する指針もなくなってしまいます。

これらのビッグワードを、誰が読んでも同じ解釈にたどり着く言葉に置き換えていくと、伝わり度がぐっと変わってきます。

■ビッグワードは定義付けする

もし自分が書いた文章の中にビッグワードを見つけたら、そのビッグワードが何を指すのか、自分なりに定義付けした言葉に置き換えましょう。

たとえば、「問題の解決」であれば、

「問題」→「1割の商品に納品の遅れが生じていること」
「解決」→「すべての商品が、納期の3日前には検品完了している状態」

などと定義するのです。

「社内コミュニケーションの充実」であれば、

「社内コミュニケーション」→「部署間を超えた交流」
「充実」→「ミーティングへの全員参加」

などと具体化します。

このように、ビッグワード(広義の言葉)を細かく砕いてスモールワード(狭義の言葉)に定義し直すことによって、誰が読んでも誤解のない文章になります。

ビジネス文書から排除したほうがいい、3つの要素。いかがでしょうか。ぜひ、ご自身の文章を見直してみてくださいね。