顔をゆがめた高安が大型の車いすに乗って花道を去った。痛々しい姿に館内は騒然となった(撮影・戸加里真司)

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 大相撲秋場所2日目(11日、両国国技館、観衆=1万816)昭和以降初めて初日から3横綱の休場で迎えた異例の場所に、さらに危機が襲った。初優勝を狙う大関高安(27)は小結玉鷲(32)に押し出された際に右太ももを痛め、打ち出し後、病院へ向かった。西前頭4枚目の宇良(25)も痛めていた右膝をさらに悪化させた様子で、精密検査へ向かった。ともに3日目から休場の可能性がある。看板力士だけでなく、人気力士も手負いとなった。

 花道を戻りかけた足が、止まる。引きずる右脚に力が入らない。高安が、花道奥にいた付け人を手招きして呼び寄せた。肩を借りて自力歩行を試みたが、ままならない。結局、専用の車いすに乗せられ、国技館内の相撲診療所へ直行した。

 昭和以降初めて3横綱(白鵬、鶴竜、稀勢の里)がそろって初日から休場。日本相撲協会の看板力士として土俵を引っ張る立場の大関までもが傷ついた。

 「そんなに悪くない。大したことはない。大丈夫」

 診療所で診察を受けた高安は時折、笑顔も浮かべ、自ら「(右太ももの)肉離れ」と明かし、精密検査を受けるため病院へ向かった。3横綱不在のなかで優勝候補の一角といわれた大関は、3日目からの休場危機へ直面する。師匠の田子ノ浦親方(元幕内隆の鶴)は「とりあえず明日の様子を見て決める」と述べた。

 ボクシングでいえば、珍しい“ダブルノックダウン”だった。玉鷲が立ち合いから高安を一気に土俵際まで押し込んだ。大関は右脚一本でこらえた際に痛めた。だが、勝った玉鷲も右足首をひねるように膝から崩れ落ち、しばらく立ち上がれず、右脚を引きずりながら引き揚げた。

 看板力士だけではない。人気力士にも災難が降りかかる。小兵の業師、宇良だ。貴景勝に突き倒されたときに、こらえていた右膝に強烈なストレスがかかった。土俵下。呼出の肩を借りて立ち上がったが、自力歩行はできずに車いすが用意された。右膝は7月の名古屋場所中に負傷した部位。その影響で夏巡業には1日だけ参加したものの、「右膝外側靱帯損傷で全治1カ月」の診断書を提出して離脱。場所前の稽古も十分ではなかったという。

 宇良は相撲診療所に向かう際、「ああ、終わったな、これで…」と天を仰ぎ、今場所の終焉(しゅうえん)を覚悟した様子だった。関係者によると、その後、MRI(磁気共鳴画像装置)検査を受けるため病院へ向かった。

 4横綱を抱く豪華な番付から一人、またひとり。姿を消していく危機にさらされる土俵。秋風が吹くどころか、底冷えがしてきた。 (奥村展也)

玉鷲「高安どうでした? 命懸けで闘った。(自身のけがについては)秘密。出られます。大丈夫」

横綱日馬富士「いい気分ではない。勝負に集中しても嫌なもの。自分の相撲に集中して、気合を入れてやる」

大関照ノ富士「今までこんな場所あったの?」

平幕阿武咲「荒れますね」

★前売り券15日間分完売も

 前売り券は既に15日間分が完売。この日は平日にもかかわらず、当日券約400枚が午前9時前に売り切れた。ファンの関心に上位陣が応えられていない現状を受け、八角理事長(元横綱北勝海)は「けがをしない体づくりは本人にしかできない。日々の鍛錬だから」と険しい表情だった。

データBOX

 ◎…十両以上では3横綱のほか、先場所13勝の西前頭2枚目碧山(31)が膝痛、同12枚目佐田の海(30)が右脚の蜂窩(ほうか)織炎で休場。初日から関取5人が休むのは野球賭博問題で大量の謹慎者が出た平成22年名古屋場所を除けば、15年初場所以来の多さ。公傷制度が廃止された16年初場所以降では最多となっている。