「日本に生まれたことは、あなたの一生で一番のラッキーなんだよ」。昔とある発展途上国を旅した時に、その国の人にこんな言葉を言われたことがあった。そして先日中国人夫にも同じことを言われた。資料写真。

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「日本に生まれたことは、あなたの一生で一番のラッキーなんだよ」。昔とある発展途上国を旅した時に、その国の人にこんな言葉を言われたことがあった。そして先日、中国人夫にも同じことを言われた。「日本に生まれて、清潔な環境できれいな服を着て当たり前みたいにお金を稼げるのは、日本人に生まれるというラッキーを神様にもらったからだ」と。今回は中国人夫から見た「日本人」としての幸運について書いていきたい。

訪日中国人旅行客が日本経済を潤す必要不可欠な「お客様」であることは、まぎれもない事実だ。しかし、家族や親戚と一緒に日本に旅行に来て何十万、何百万もの日本製品を買うことができる中国人などほんの一部の富裕層に過ぎない。日本へのビザ発給要件が緩和され、中流階級でも日本旅行に来られるようになったと言われているが、その「中流」になることさえ夢のまた夢のように感じている中国人が何億人もいるのである。

中国では夫婦共働きは当たり前だ。それは女性の社会進出が何かと話題になる日本人からすると一見「働き方改革」が中国の方が先を行っているように見える。しかし言い換えればそれは夫婦2人で稼がなければ生活がままならないということだ。1人の収入だけでは暮らせないのだ。妻がパートタイムでは生活費が足りない。山間部の貧しい地域では両親が共に都市に出稼ぎに行き、年に一度子どもに会えるか会えないかというくらい働かなければならない。

経済成長が凄まじいと言われている中国でも、依然として「日本は豊かで安全な国だ」というイメージが強い。女性が夜一人で道を歩くことができて、財布や携帯を落とせば当たり前のように返ってくる。行政の職員はどんなことにも丁寧に対応してくれて、アルバイトでも高い時給で働くことができる。日本人が当たり前だと感じている常識は中国人からすると夢のような話に聞こえることもあるのだ。

夫にはどうしてもいつか会って恩返ししたい日本人がいる。それは名前も知らない日本人のおじいさんなのだが、夫が留学生としてやってきた時、食べるものにも困って始めたアルバイト先で、日本語がほとんど話せない夫に丁寧に仕事を教えてくれた。パンやお煎餅をくれたこともあったそうだ。当時、夫はおじいさんの名前を覚えようとしたのだが慣れない日本語の発音が聞き取れず、最後まで知ることができなかった。これは夫が私と出会う前の話だが、いまだに夫は「あのおじいさんに会ったら今度こそ絶対日本語でお礼を言いたい」と言っている。大げさかもしれないが、あの時、そのおじいさんが夫に仕事を教えてくれなければ、夫はお金を稼ぐ手段を失っていたのだ。あの時、夫が言葉もよく分からない異国で生き延びることができたのは、あのおじいさんのお陰なのだ。

夫はよく「日本人にはお金持ちの余裕のような雰囲気が漂っている」と言う。日本では「金持ち=性格が悪い」というステレオタイプのイメージがあるが、中国では「金持ち=性格が良い」というイメージなのだそう。確かに日本人は名も知らぬ他人にも優しい。災害が起きれば、知らない他人に起こったことに胸を痛める。このような優しさも「日本という国に生まれたという安心感」から来ているのかもしれない。そして、その優しさが身近に存在することが「日本に生まれた幸運」なのだと言えるだろう。

■筆者プロフィール:むらさわりこ
1989年日本生まれ。22歳の時に2歳年上の福建省出身の中国人男性と結婚。英語を独学で習得後、英会話講師として働く傍ら中国のテレビなどを通し中国語も独学で習得。趣味は語学と読書。図書館があまりに好きで毎週通っている。結婚前はベトナム、ニュージーランド、モンゴル、カナダ、ラオス、フランスなど様々な国を一人で渡り歩く。自分のやりたい事や面白い事に国境や言葉の壁は関係ないと考えている。