『エンジェル・ハート2ndシーズン 16 (ゼノンコミックス)』(北条司/徳間書店)

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 今年6月、多くのファンに惜しまれながら17年間に及ぶ連載が完結した『エンジェル・ハート』。1985年にはじまった『シティーハンター』から数えると、連載期間はあわせて32年にも及ぶというから驚くばかりだ。

 スゴ腕のスイーパー(始末屋)である冴羽獠。多くの美人ヒロインたちをボディーガードする『シティーハンター』を経て、パラレルワールドとして描かれた『エンジェル・ハート』が完結するまで、冴羽獠はどのように描かれたのか。

■ギャグも“家族愛”も…名シーンとともに32年間を振り返る!

 『ダ・ヴィンチ』9月号では、32年間ずっと冴羽獠を見守り続けた作者・北条司さんへのロングインタビューのほかにも、冴羽獠を取り巻くパートナーや家族、さらには新宿の街など、さまざまなテーマに着目。それらを物語る名場面とあわせて紹介されている。

 まず冒頭では『シティーハンター』時代の冴羽獠と、そのパートナーたちが登場。獠が唯一「もっこり」しないパートナー・槇村香をはじめ、美人でグラマラスな女性キャラたちが勢揃いする。ちなみに、女性の依頼しか請けないことをモットーにする獠の別名は「新宿の種馬」! 毎回登場するヒロインたちは、美しすぎるからこそ獠のボディーガードが必要だったことが一目でわかる。

 もちろん、パートナーである香の活躍もクローズアップ。獠と初めて出会った衝撃の場面から、夫婦のように阿吽の呼吸で獠の行動を読み解く様子、さらには獠の「もっこり」に対して制裁ハンマーを振りかざす、おなじみのギャグもある。香ファンなら、見逃せないシーンばかりであろう。

 『エンジェル・ハート』時代の冴羽獠では、心臓移植をうけたことで香の心臓を持った香瑩(シャンイン)との家族愛に着目。台湾マフィアによって、幼い頃から暗殺者になるために過酷な訓練を受けてきた香瑩。硬く心を閉ざしていた香瑩だが、物語が進むごとに徐々に豊かな表情へと変化。獠と香瑩、2人を支える仲間たちのおかげで、「本物の家族」として成長するシーンの数々は、見ているだけで心が温まる。

■北条司さんロングインタビューで内心を漏らす

 また、冴羽獠を描き続けた作者・北条司さんのロングインタビューでは、連載『エンジェル・ハート』が完結するにあたって、「『オレが消えると思うなよ』と獠に言われているような気がする(笑)」と素直な気持ちを告白。その一方で、自身も死に立ち会うことが増える年代になり「究極的に人間の最後の姿は”死”じゃないですか。この人の人生はどういうものだったんだろう? と考えることが、年齢を重ねるにつれて増えていったように思いますね」と話す。32年間、苦悩と葛藤を抱えながら作品を描き続けることで、”根っこ”にある作者自身の心境が大きく変化していったことを知ることができる。

 この他にも、アニメ版『シティーハンター』のエンディング曲を手がけた小室哲哉、冴羽獠の声を担当する声優の神谷明、さらには作家の大沢在昌の寄稿もある。

 『シティーハンター』から『エンジェル・ハート』まで、まさに「冴羽獠祭り」のような今回の特集ページ。もはや国民的ヒーローとも言える存在になった冴羽獠を、しっかりと心に刻みたい人は必見だ。

文=富田チヤコ