三森すずこが繰り広げた一大レビューショー 『Tropical Paradise』の物語と重なる思い

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 「『会いたいよ…会いたいよ!』でデビューした頃は、まさかこんなにたくさんリリースさせていただけるとは思っていませんでした。それが、こんなにたくさんのみなさんに支えられて、どんどん大きな会場でライブができるようになって――。その幸せを、噛み締めています!」。ミルキィホームズやμ’sといった人気グループを含む様々な活動を通して、今やトップ声優/アーティストのひとりとなった三森すずこ。彼女の『Mimori Suzuko Live 2017 “Tropical Paradise”』の千秋楽となる幕張メッセイベントホール公演の2日目が、9月3日に開催された。

 彼女のライブの特徴は、舞台/ミュージカル女優出身ならではの魅力を生かしたストーリー仕立てのレビューショー。キャリア初の日本武道館公演を含む2016年のライブでは、自室でこっそり開催されるおもちゃのパーティーに出くわした彼女が、大切な宝物を取り戻す冒険を展開していた。7月の大阪公演からはじまった今回の『Tropical Paradise』のテーマは、「夏」や「人魚」。歌と踊りが大好きなマーメイド=三森すずこが、1年に一度人間になれる特別な満月の夜に人間界のパーティーに向かい、一大レビューショーを繰り広げる。

 ステージは冒頭、波の音が聴こえる会場で、海底の神殿のようなセットの貝殻から人魚に扮した三森すずこが登場し、「ドキドキトキドキトキメキス♡」でスタート。海を連想させる映像が流れるスクリーン、カニやクラゲの衣装をまとったダンサーの姿も相まって、開始早々会場に海中の景色が広がっていく。「海のみなさーん! こんにちは!」と告げて始まった「サマーバケーション」では、泡を模したボールを客席に投下。すると観客も専用のペンライト・MIMORIN BLADEを青に変え、ウェーブで波を表現する。そう、つまり観客もこの日のライブを支えるのだ。以降は「せいいっぱい、つたえたい!」や「ミライスタート」のリミックスで人間界への抜け道を見つけ、トロッコで観客席を回りながらアリーナ中央のステージに移動。客席中央のステージで披露した「ヒカリノメロディ」の途中でスモークが噴き出し、人間になった三森すずこが登場して大歓声が巻き起こる。

 彼女のライブでは公演ごとに用意される異なるテーマ/ストーリーによって毎回楽曲に新たな解釈が加わり、同じ楽曲でも大きく感じ方が変わる。また、サウンドや歌詞が物語のストーリーと連動するように丁寧に配置されているため、それらがこの日のために用意されたように感じられるのも大きな特徴だ。ライブは中盤以降も「人間のみんな、こんにちはー!」と観客を陸に連れ出して披露した「全部受けとって、強く抱きしめて。」や「ROLLER COASTER♡」を経て、以前は飛行機の座席を模したセットで披露された「WONDER FLIGHT」も、海の底から遠い場所まで来たという気持ちと、パーティー会場に到着した瞬間の胸のトキメキを表現した曲に変わっていく。そしていよいよ「TINY TRAIN TOUR」で、人間界の華やかなパーティーがスタート。多彩な振り付けやダンスをこなしつつ、安定した歌声で観客を物語の世界に引き込む様子は、やはり彼女ならではだ。

 ところが、物語はこのままでは終わらない。突如雷が鳴り雨雲が現われると、彼女の母親に扮した『探偵オペラミルキィホームズ』(TOKYO MXほか)にも出演する佐々木未来のナレーションで、「人魚はトロピカルムーンに雲がかかり満月が欠けると、元の姿に戻ってしまう」ことが明かされる。以降はギターサウンド全開の「Spinning Stars」や「サキワフハナ」を通して、歌声の力で天気を取り戻すために奮闘。そして「Colorful Girl」で傘を使ったダンスや、MIMORIN BLADEの色を会場一体となって高速で切り替える“カラフルタイム”に突入すると、<雨上がりの空に/虹をかけよう>という歌詞を持つ楽曲に合わせて、空が次第に晴れていく。そして「ユニバーページ」では楽しかったパーティーに別れを告げ、トロッコで2階席を周遊しながらふたたび海の底へ。また会場全体が海の中に姿を変え、外の世界を知ったことで改めて分かった海の仲間の大切さを表現するように、「純情DaDanDan」でカニやクラゲに扮したダンサーとステッキを持って踊り、ビッグバンド風の「恋はイリュージョン」ではタップダンスも披露。本編最後、大歓声の中で「スマイリウム」がはじまると、海の住人と陸の住人が入り乱れ、観客に向けた手書きのメッセージがプリントされた紙吹雪が舞って大団円を迎えた。

 その「スマイリウム」には三森すずこ自身が作詞に参加し、こんなフレーズでファンへの感謝が綴られている。<「誰かのために歌いたい」/そんな気持ちにさせてくれたみんなへ/(中略)胸の奥をキュンとかきたてるのは/いつも/とびきりの笑顔>。人魚をモチーフにしながらも、新しい挑戦に向かうワクワク感と、帰ってこられる場所への感謝が表現された今回のストーリーには、おそらく、様々な挑戦を重ねてきた彼女自身のこれまでと、それを温かく見守ってくれたファンへの感謝の気持ちが重ねられていたのだろう。

 終始熱狂が会場を包んだアンコールでは、「Light for Knight」や10月11日リリースの新曲「エガオノキミヘ」などを披露。最後はやまない拍手に応えて「ちいさな手と観覧車」でステージを終えた。「油断したら涙が出てきてしまいそう」と伝えながらも、最後まで笑顔で“楽しさ”を伝えたこの日のステージは、彼女が多くの人々に愛される理由を、改めて教えてくれるようだった。(杉山仁)