レアル・マドリーの攻撃を牽引するイスコ【写真:Getty Images】

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明確な補強方針。放出は控え組のみで戦力維持

 現地時間8月31日、欧州主要リーグの移籍市場が締切を迎えた。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの補強はどうだったのだろうか。今回はレアル・マドリーの補強を読み解く。

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 昨季は国内リーグとチャンピオンズリーグ(CL)の2冠を達成。名実ともに欧州最強クラブとなったあるレアル・マドリーが、今夏の移籍市場を通して着手したのはメンバーの若返りだった。

 史上初のCL連覇を果たしたマドリーの強みは、爆発的なパワーで他を圧倒する主力組のクオリティだけでなく、ベンチメンバーを含めたチーム全体の層の厚さにあった。そして、カリスマ性にあふれるジネディーヌ・ジダン監督は、巧みなローテーションでスター揃いのチームをコントロールしていた。

 しかし、勝ち続けるマドリーにおいてジダン監督の起用法に不満を抱く選手がいなかったわけではない。ベテランDFペペは10年間過ごしたクラブを去りトルコのベジクタシュへ移籍した。さらにベンチ生活の長かったハメス・ロドリゲスはバイエルン・ミュンヘンへ、貴重なマルチプレーヤーだったダニーロはマンチェスター・シティへ、昨季公式戦通算20ゴールを達成するも継続的な出場機会を確保できなかったアルバロ・モラタはチェルシーに活躍の場を求めた。

 この穴を埋めるべくして加入してきたのが、若く才能あふれる選手たちである。バルセロナとの争奪戦の末ベティスから獲得したダニ・セバージョスは、今夏のU-21欧州選手権でMVPに選ばれており、確かな実力と将来性を兼ね備えている。前述のペペの後釜として、ヘスス・バジェホがドイツのフランクフルトから2年ぶりにマドリー復帰を果たした。

 最も話題を呼んだのは、19歳のテオ・エルナンデスや17歳のヴィニシウス・ジュニオールら10代の選手たちとの契約だ。期限付き移籍先のアラベスからアトレティコ・マドリーへ復帰が決まっていた前者は、首都の覇権を争う2クラブの間に存在する「お互いの選手を獲得してはいけない」という不可侵協定を破ってマドリーへ加入。長い間不在であったマルセロの控えとして迎えられている。

 後者のチームへの加入は、FIFAが定める18歳未満の選手の国際移籍禁止の原則により、早くて2018/19シーズン以降となる。ヴィニシウスは、“新たなネイマール”と称される逸材で、その若さにして既にフラメンゴでトップチームデビューを果たしている。マドリーが同選手獲得のため支払った4000万ユーロ(約52億円)という金額が、期待の大きさを表している。

 一方、退団が噂されたエースのクリスティアーノ・ロナウドやガレス・ベイルは何事もなかったかのように残留となった。昨季の主力組も軒並み残留となり、結局放出されたのはベンチを温めることの多かった選手たちのみ。大幅な戦力ダウンを避けることができた。

 何人かの実力ある選手を放出しながらも、今季も十分な戦力を維持しているマドリーの今季の目標は、できる限り多くのタイトルを獲得することだろう。今季は出場停止中のC・ロナウドを含め、何人かの主力が揃わない状態で開幕スタートダッシュに失敗した。直近のリーグ戦は2戦連続ドローとなっており、チーム状態は必ずしも良いとは言えない。そこでジダン監督が新加入の若手選手たちをどのようにチームに組み込み、より高いレベルへと引き上げていくのかにも注目が集まる。

補強・総合力診断

IN
DF テオ・エルナンデス(アトレティコ・マドリー←アラベス/期限付き移籍期間満了)
DF ヘスス・バジェホ(フランクフルト/期限付き移籍期間満了)
DF アシュラフ・ハキミ(レアル・マドリー・カスティーリャ/昇格)
MF ダニ・セバージョス(ベティス)
MF マルコス・ジョレンテ(アラベス/期限付き移籍期間満了)
FW ボルハ・マジョラル(ヴォルフスブルク/期限付き移籍期間満了)

OUT
GK ルベン・ジャニェス(ヘタフェ→カディス/期限付き移籍)
DF ペペ(ベシクタシュ)
DF ダニーロ(マンチェスター・シティ)
DF ファビオ・コエントラン(スポルティングCP/期限付き移籍)
MF ハメス・ロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン/期限付き移籍)
FW マリアーノ・ディアス(リヨン)
FW アルバロ・モラタ(チェルシー)

補強評価:B

 モラタやハメスなど大物級の控えメンバーを失ったものの、大きな損失とはなっていない。むしろそこに若手の力が加わったことで、より将来性のある陣容となっている。数年後を見据え、今の強さを維持していくための強化策の一環とも言えるだろう。

 テオの加入により、これまでほぼフル稼動を強いられていたマルセロに休みを与えることができるのは大きく、同時に19歳の若手サイドバックにかかる期待も大きい。ペペの穴をドイツで武者修行を積んだバジェホで埋められるかも、比較的層の薄い最終ラインの出来を大きく左右する。

 マドリーの中で最激戦区の中盤には、U-21欧州選手権MVPのセバージョスが加入し、競争はさらに激しいものに。さらに同じくU-21スペイン代表のマルコス・ジョレンテが武者修行先のアラベスから復帰を果たした。戦力が飽和する中で、ジダン監督がどのような采配で選手の感情や体力をコントロールしていくのかは今季を戦う上でのキーポイントとなる。

総合力評価:S

 昨季のメンバー構成がほとんど維持されているだけに、申し分ない陣容となっている。スタメンからベンチまで豪華なメンバーを擁しているため、リーグ戦やCLを戦う中でローテーションを敷いていくことが予想される。とはいえ強豪相手の重要な試合では、昨季の主力を中心とした11人が選ばれることになるだろう。

 そこで注目したいのが、前線のメンバーの行方だ。勝負どころで何度もゴールネットを揺らしてきたC・ロナウドは不動であるにしても、ゴール不足に苦しむカリム・ベンゼマやベイルにスタメンは保証されていない。ジダン監督の下で成長したイスコやマルコ・アセンシオが素晴らしい活躍を見せているため、彼らの今後の活躍次第では長年マドリーの攻撃陣を牽引してきた“BBC”トリオの影は薄くなっていくかもしれない。

text by 編集部