W杯アジア最終予選から戻って、中2日。なかなかに厳しい日程だったが、乾貴士はいつものようにピッチに立っていた。ホセ・ルイス・メンディリバル監督から、チームに欠かすことのできない選手であるとの信頼を得ている証拠だろう。

「そういうのは嬉しいです。ただ、何もできなかったのは悔しいので……、もう一度自分自身を見つめ直して、頑張りたいなと思います」


日本代表からエイバルに戻り、セビージャ戦に先発した乾

 ラ・リーガ第3節、エイバルはアウェーでセビージャと対戦し、0-3で敗れた。乾の「何もできなかった」の言葉が示すように、乾のみならず、エイバル全体としてもほとんど見せ場のない完敗だった。

 乾が監督の信頼を喜ぶよりも、次々に反省の弁を口にするのも無理はない。

「この間(第2節)のビルバオ戦では足元で受けてよくなかったので、裏を狙うっていうのを意識してやりました。でも、こっちがボールを持つ時間が短かったので、そういうのも難しくて、なかなかチャンスらしいチャンスも作れなかったですし、ホントにチームとして完敗でしたね」

 それでも、前半のエイバルは劣勢の中に、どうにか活路を見出そうとしていた。少なくとも、それを期待させるだけのものは見せていた。そして、そんな期待を抱かせてくれたひとりが、背番号8だったことは間違いない。

 8分には、左サイドからのクロスをFWキケ・ガルシアが丁寧に落としたところに、乾が走り込んでボールを受け、シュートこそ打ち切れなかったものの、あわやのシーンを作った。また、前半ロスタイムの46分には、左サイドでパスを受けた乾が、そのままドリブルでカットインしてシュートを放っている。いずれも乾の持ち味である俊敏性とテクニックが表れた場面だった。

 しかし、言い方を変えれば、エイバルの反攻はそこまでだった。

 後半開始早々の47分、エイバルは1本のロングパスで簡単に右サイド(セビージャから見て左サイド)の裏を突かれ、FWノリートのクロスからMFガンソに楽々と決められて先制を許した。

 前半は押されながらも、それなりにうまく戦えていただけに、エイバルにとってはショックが大きい1点だった。乾が険しい表情で振り返る。

「早い時間帯でポンとやられちゃったので、あれは痛かったですし、後半の入り方はすごく悪かったなという感じもします」

 まあでも――。乾はそうつないで、話を続ける。

「(後半の立ち上がりだけでなく)試合全体を通しても相手のペースだったので、もう今日は妥当な結果かなと思います」

 乾は結局61分で交代。さすがにアジア最終予選による過密日程がコンディションに影響したかに思われたが、「そこはまったく問題なかったです。(自分の出来が)よくなかったんで、60分で代わっただけです」とキッパリ。

 今回のアジア最終予選は、単純な日本との往復ではなく、サウジアラビアへの遠征も加わった。しかも、W杯出場がなるかどうかがかかった大一番とあって、精神的な重圧も決して小さくなかったに違いない。乾も「もちろん、それは特別(な試合)でした」と認める。

 だが、それでも乾は「自分は2試合目(サウジ戦)には出てないですし、そう考えると、コンディションもしっかり調整できたところはあるので、コンディションがどうとかっていうところはまったく関係なかったですね」と、疲労などの悪影響を否定する。

 それどころか、「いろんな選手とコミュニケーション取って、しゃべったりできるのはやっぱりリフレッシュになりますし、楽しかったですね」と言い、日本代表で過ごした期間中に英気を養えた様子さえうかがわせる。

 だからこそ、代表からチームに戻った初戦で喫した完敗に、反省ばかりが口を突いて出る。

「攻撃ももっとやれればよかったし、守備でももっと前からいければよかったんですけど、なかなかボールの取りどころもなくて、結構崩されるシーンも多かった。チームとしてどこから(ボールを奪いに)いくのか、どういうふうに(プレスを)ハメていくかをもう一度やり直さないと、今日みたいにキツくなっちゃうので。また監督から話があると思いますけど、しっかりやっていきたいなと思います」

 エイバルは第3節までを終えて、1勝2敗と黒星が先行。昨季クラブ史上最高成績となる10位に躍進した伏兵も、今季は苦しいスタートとなっている。

「(チームの雰囲気は)別に変わらないですけど、このまま負け続けちゃうと絶対雰囲気はよくならないですし、どこかで(悪い流れを)断ち切らないといけない。得点数が少ないっていうのは、前の選手の問題なので、自分たちがもっと考えてやっていかないといけないと思います」

 W杯出場を決めた喜びもつかの間、乾はスペインに戻って、冷や水を浴びせられるかのように、痛烈な洗礼を受けた。

 だが、こうした日常が彼を強くし、日本代表へと導いているのもまた事実。これこそがヨーロッパでプレーする者の宿命であり、ある意味で特権でもあるのだろう。

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