ホットドッグが心臓を止めてしまった?(画像はイメージ)

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ホットドッグを食べていた少年が突然心停止を起こした――。そんな驚きの症例報告が、トルコ・イスタンブールの医師らによって米国小児科学会誌2017年9月号に報告されている。

食べ物と子どもの事故と言えばのどに詰まらせて窒息というパターンが思い浮かぶが、この症例報告は窒息事故ではない。

では少年はどのようにしてホットドッグで心停止に至ったのだろうか。

ソーセージが神経を刺激し...

症例報告によると、9歳の少年は比較的大きなフランクフルトソーセージを挟んだホットドッグを食べていたところ、突然心臓発作を起こし心停止した。すぐに緊急搬送され病院で除細動器による処置を受け、無事蘇生。現在は回復しているという。

当初医師らはソーセージがのどに詰まったのではないかと考えたが、なにもつまっておらず、外傷や心血管疾患の既往歴もなかった。

そこで心臓外科の専門医も交えてさらに調査を行ったところ、驚くべき事実が判明した。ソーセージの塊がのどを通った際に「迷走神経」を刺激し不整脈を誘発。この不整脈が引き金となり、少年の心臓は鼓動を止めてしまったのだ。

迷走神経とは脳神経のひとつで、頭部から内臓にまで伸びて筋肉の動きや知覚のコントロールを担っている唯一の神経だ。のどにも存在し、異物が侵入した場合や炎症が発生すると刺激を感知して咳が出るのも迷走神経による。

しかし、一般的に我々が食べ物をのどに引っ掛けてしまった場合、むせて咳をすることはあるが、それが引き金となって不整脈や心停止を引き起こすということはない。なぜ少年には起きたのか。

医師らは少年に不整脈の発生を緩和する薬剤を投与し心臓の反応を観察したところ、特徴的な心電図の結果から、少年が「ブルガダ症候群」という難病にり患していることがわかった。

ブルガダ症候群は1992年にブルガダ医師によって発見された病気で、心臓自体には何の問題もないのに心室細動(不整脈の一種)が起きやすく、心停止や失神を起こしやすくなるというもの。自覚症状に乏しいためはっきりとした患者数は不明だが、難病情報センターは「全人口の0.05〜0.2%程度」としている。

発症者には特徴があり9:1で圧倒的に男性が多く、アジア系の人種に多い傾向があるという。遺伝的な影響が大きいとされ、家族や親族に原因不明の心停止で死亡した人がいる場合は、ブルガダ症候群である可能性が高い。今回の症例でも少年の家族全員を調査したところ、少年の兄がやはりブルガダ症候群であることが確認されている。

治療法が確立されていない難病だが

ブルガダ症候群は遺伝子の異常や心臓を動かす電気信号の異常、ナトリウムの欠乏なといったメカニズムの一端は解明されているものの、有効な治療法はまだ確立されていない。

一般的な心臓病で用いられる抗不整脈薬を投与すると悪化する可能性もあり、日本循環器学会のブルガダ症候群ガイドラインでは心臓に埋め込み異常を感知して機能する「植込み型除細動器(ICD)」が有効である可能性が高いとされている。少年も今回の事件後にICDを埋め込んだという。

恐ろしい病気ではあるが、前述のように家族などが心停止などを起こしていない限りそれほど心配をする必要はない。ブルガダ症候群には心停止や突然死を起こす「症候性」と、ほとんど無症状の「無症候」があり、患者の多くは後者とされている。自分の心臓が突然止まるのでは、と不安に思いながら日々過ごすよりは、心臓や血管の健康のためになるような運動や食事を行うべきだろう。