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●「先生の思い」が支持され、契約増に

2014年にベータ版、2015年から正式にサービスをスタートした学習支援クラウドサービス「Classi」。全国5000校ある高校のなか、2100校、およそ4割の高校で利用されている。

実利用者でも高校生330万人のうち、およそ77万人がClassiアカウントを利用しており、2016年度までに累計42万人が利用しているとされるリクルートマーケティング パートナーズ提供「スタディサプリ」を大きく引き離している。2016年度は当初340校だったものの、同年度中に1400校、2017年度頭に1800校と利用校が急激に伸びた。

Classi 代表取締役副社長の加藤 理啓氏によれば、年度初めの契約数が昨年、今年と年度当初から契約数を大幅に伸ばしている理由について「4月、5月は新しいクラスがスタートして学校全体がバタバタしている時期。落ち着く6月以降に本契約するというパターンが多かった」(加藤氏)という。

その中でも成長エンジンとなったコンテンツは「学習動画アプリだ」(加藤氏)。生徒の集中力が持続しやすい5分前後の動画を中心に、2.5万本を用意。動画を早送りして"見たこと"にする生徒への対策として、動画終了後に「確認問題」を用意していることにメリットを見出す学校が多いようだ。

「先生たちが感じている課題として、学期ごとに2度ある定期テストの結果に一喜一憂する生徒が多い中で、『出来ていなかったところを振り返ってやり直してほしい』という思いがある。そうした復習を重点的に行えるのが学習動画アプリのメリットだ」(加藤氏)

Classiはベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社。そのため、ベネッセが提供する「進研ゼミ」の教材を利用できるほか、4000校が活用する進研模試のノウハウを活かしたコンテンツの最適化が可能になる。さらに教育系出版社との提携も行っているため、進研ゼミコンテンツのみならず自校で利用しているコンテンツを利用できる。

もちろん、ソフトバンクのICTの強みを活かしたテクノロジーの活用も行っている。例えば学習動画では、進研模試の結果と生徒のIDを紐付けてデータベースを連携。模試の結果から浮き彫りとなった生徒の苦手な単元を、アルゴリズムで自動的に抽出して最適な単元の動画をレコメンドする。

そしてこの国内最大級のユーザー規模とテクノロジーをかけ合わせてClassiが次に臨むのが「Classiプラットフォーム」だ。

●プラットフォーム戦略は「STEM」「英語4技能」を大きく伸ばせる?

2018年4月からスタートするプラットフォームでは、Classiで作成したIDで他のパートナー企業が提供するサービスをシングルサインオンで利用できる。Classiにとっては他サービス連携によるコンテンツ拡充と新規契約が見込め、収益の安定化が期待できる。一方のパートナー企業は、77万人におよぶClassi契約ユーザー数に営業部門を抱えることなくアプローチしやすくなるほか、シングルサインオンによって各校の導入障壁が大きく下がるメリットがある。

「ICTを活用したいと話す先生たちは少なくない。ただ、先生たちは生徒のID/パスワードをサービスごとに発行・管理する必要があり、作業が煩雑になるデメリットが大きかった。Classiでは、先生のID/パスワードと生徒のID/パスワードをグループ化して管理しており、単なるシングルサインオンだけでなく、提携サービスにログインすればそのまま生徒の管理が可能になる」(加藤氏)

既存の学習教材や動画サービスを提供することで支持を得てきたClassiだが、「学校のニーズは各校細かい部分で差異がある。自分たちできめ細やかなニーズの最適化が難しい。パートナー企業の協力のもとで提供することが最適だと判断した」(加藤氏)。

Classiは学校と長年のパイプを持つベネッセの営業部門が販売しているため、大きな基盤を作り上げることができた。一方でパートナー企業が直接学校に販売するには壁があると加藤氏は話す。

「教科書以外の教材の購入は『進路部』が行うところがあれば、各教科の担任が購入するケースもある。Classiの基盤があれば、それらの先生が全員、管理コンソールで教材のレコメンドを見ることになり、認知が図れる。先生とパートナー、双方にとって大きなメリットとなるはずだ」(加藤氏)

パートナーは、Classiがピックアップした「英語4技能」や「アクティブ・ラーニング」「STEM」といったこれからの学習に必要とされる8ジャンルに当てはまる企業を中心に探す方針だ。Open ID規格による連携で技術的障壁を引き下げており、将来的なオープンAPI化によるパートナー企業の拡充も否定しなかった加藤氏だが、「アプリを増やしすぎてしまうと先生が迷う」と話す。

実際、Chromebookの浸透でICT化が進むアメリカではジャンルごとにアプリが乱立して問題になっているとのことで、「まずはジャンルごとに最適なアプリを提供していきたい」(加藤氏)。ただ、現状では日本で「ジャンルに必ず1つ、アプリを提供する企業があるわけではない」(加藤氏)とのことで、理想と現実に差があるようだ。

5社+1社のパートナー企業からスタートするが、加藤氏は「+1」が面白いと話す。その1社は教育と探求社で、「QUEST EDUCATION」を提供する。このサービスはClassi IDこそ活用しないために「+1」という位置づけだが、アクティブ・ラーニング型教育カリキュラムを提供しており、150校の2万名が学校の正規授業で学ぶ国内最大級の教育カリキュラムだという。

「アクティブ・ラーニングと、プロジェクト・ラーニングとも言われるもので、アクティブ・ラーニングに取り組みたいけど踏み出せない先生たちに最適なプログラムだ。ビジネスコンテストの可愛い版、みたいなもので、4〜5人のグループを作って大企業から経営課題を高校生に与える。浮かんだ疑問をClassiにばんばん書き込んで、問題解決学習(PBL)を行う。デジタルとリアルを組み合わせることが、デジタルありきではないリアルな教育体験の場として非常に大きい」(加藤氏)

●テクノロジーは先生を駆逐せず「サポート役」に

Classiは一貫して学校法人に対するB2Bサービスとして展開してきた。一方でB2Cサービスを起点としたアオイゼミやスタディプラス、前述のスタディサプリといったプレイヤーがB2Bにも進出しつつある。こうした状況について、加藤氏はB2Bに最適化されたプラットフォームの強みを強調する。

「B2Cサービスは広告モデルで運営しているからマネタイズに苦労する。だからこそB2B領域への進出を目指す人たちが多い。彼らは学校法人よりも塾を中心に関心を寄せているが、塾からすれば学校向けソリューションは適用しやすい。学校の仕組みを熟知しているアドバンテージは大きいし、そこに魅力を感じるプレイヤーがいればどんどん組んでいきたい」(加藤氏)

プラットフォーマーとしての今後は、「ネットワーク効果を最大限に活かす」(加藤氏)。母数が膨らめばさまざまなニーズを顕在化でき、それを解決することで新たなユーザーを呼び込める。将来的には、パートナー企業アプリの利用ログをユーザーとパートナー同意のもとで統合し、学習の進捗状況把握とレコメンデーションに利用したいという。

「生徒がパートナーアプリも含めて勉強を頑張っているのに成績が伸びていないケースがあるとする。その場合は勉強の仕方が間違っている可能性があるが、それを校外サービスならアプリの通知で済ませてしまう。でもClassiであれば先生に通知することで、人が課題を認識して生徒に伝えられる。そこに、例えば過去データから『この勉強の方法だと生徒はこの先伸びない可能性がある』といった指摘ができる。そこに、各ジャンルのプロフェッショナルアプリがあれば、きめ細やかに対応できる可能性がある」(加藤氏)

加藤氏は、AIが先生を代替するという話があると語りつつ、「テクノロジーは一人ひとりの生徒をサポートする」という効率化の側面もあると指摘。例えば、英語の発音を矯正する語学力を持つ先生はわずかしかいないが、パートナーアプリの一つ「English Central」は音声解析技術によってスピーキング学習が可能になる。

Classiは「先生要らず」ではなく、コミュニケーションの円滑化や学習の強化といった「先生を万能化するツール」としてのプラットフォームの進化を目指すようだ。