日経を読むなら"切り抜き"より"読み重ね"

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ウソかマコトか、判別のつかない情報が次から次へと押し寄せる現代。SNSを見て不安を解消する、という人もいるだろう。それでいいのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんに、良質な情報を効率よく集める方法について聞いた――。

■自分の仕事に関わることから始めよう

情報力を高め、その情報の要点を見抜く力を身につける一番の方法は新聞を読むことです。一紙を選ぶならビジネスパーソンであれば「日本経済新聞」ですが、日経新聞に限らず一般紙でも、その日、最も重要だと新聞社が判断している一面のトップ記事は必ず読むようにします。

紙面の中には政治や国際、金融など様々な記事がありますが、リード文がある大きな記事は、リード文だけでもかまわないので目を通しましょう。リード文がない記事であれば、最初の2、3段落を読みます。30秒もあれば読めますから、これを続けるうちに基本的な情報が得られます。

たとえ記事の内容に興味がなくても、「自分の関心を世間の関心」に合わせる訓練になります。そして、自分の関心の幅が広がれば、さらに多くの物事が見られるようになってきます。2カ月もすれば、新聞の「読み方」ではなく「読め方」も変わってきて自身の「基本的な情報」がどんどん蓄積され、読んでわかる記事、理解できる記事が増えていくでしょう。それが自信となって勉強しても面白く感じられるようになります。

勉強が苦手という人はほとんどが学校の勉強を想定しています。多くの勉強は自分の関心のないことをやらされたわけで、嫌いになるのもしかたがありませんが、自分の仕事に関わることを深めるのは面白いはず。日常の仕事をこなして終わりにせず、自分の仕事の本質まで深掘りして勉強するのです。

■やればやるだけプラスに、テレビや雑誌でさらに訓練

新聞を使った勉強法はやればやるだけ自分にプラスになるし、仕事にも役立ちます。周りから評価され、褒められることで勉強が楽しくなるはずです。基本や深いところまで勉強しておくとどんな職種についても、たとえば管理職になった場合でも、本質を勉強するやり方がわかっているので応用が利くようになります。

情報入手には新聞以外も活用しています。夜7時の「NHKニュース7」と9時の「ニュースウオッチ9」を見ます。この二つは英語(副音声)で聞いています。英語は日本に関する内容だとわかりやすく、無理なく英語を勉強するには国内ニュースを日本語テロップ付きの英語音声で聞くのが効率的です。ニュースの内容もわかり英語もわかるので一石二鳥です。

雑誌は関心の幅を広げる目的もあって「ニューズウィーク日本版」はいつもカバンに入れてあります。アフリカで起きている飢饉の問題や独裁政権の有り様など普段は気にかけない海外の政治や社会問題のほか、外国人の視点から日本を見る記事もあり、広い視点からものを見る訓練にもなります。

■SNSに注意、ゲームは論外、「時は金なり」忘れずに

しかし情報には信頼性という大きな問題があります。新聞やテレビのニュースは100%とは言いませんが、ある程度信頼できるニュースソースを持っていて情報を発信しています。確実性の高い情報に接していたほうがガセネタを読まされる可能性が低いでしょう。

特にネットサイトは注意が必要です。最近はフェイクニュースが流され始めたので、頭の片隅に「ひょっとして」という疑念を抱いておく必要があります。信頼に足るニュースソースでのデータベースを作っておけば、「事実か、嘘なのか」の判断がある程度できるようになります。それでも私はソースが明示されているヤフーニュースはよく読みます。世間がどういうことに関心があるのかというのが網羅的に見られるのでとても役に立ちます。

情報を得る道具としてスマホは有力ですが、SNSには気をつけてください。中毒になるくらいはまると、本来やらなければいけないことができなくなってしまいます。その間、本や新聞を読む、ひと眠りしてリフレッシュすることだってできます。スマホゲームは論外です。気晴らしでやっているのかもしれませんが、得ることが何もないことに時間を使っているとしか思えません。「時は金なり」です。

■読んだ本は「まとめ」よ、著者の思考をたどる

もう一つ大事なことは、「情報通」と呼ばれるほど情報を持っている人が優れた人だと限らないことです。情報をたくさん持っていても、それで物事がよく見えるというわけではないからです。情報があっても、それを深く解釈できているかどうか、それを使える思考力があるかどうかです。きちんと理解ができていれば、ほかのものと関連付けて話すことができるはずです。

この思考力を高めるには本を読む、それも比較的難しい本を読むのが効果的です。具体的には、とことん考え抜いた人の著書を読むこと。その思考のプロセスをわかるまでたどり、じっくり考えることで思考力が高まります。

さらに勉強したことが身についたかどうかを確認する意味でアウトプットすることも大事です。一代で上場企業を築き上げた知人の経営者は、これぞと思う本は、読んだ後で「まとめ」を自身で作ります。著者の考えに近づき、要点を見抜く力もつきます。私は部下に読んだ本のことを話させることがあります。自分でわかったと思っていても、アウトプットすると理解しているかどうか一目瞭然です。わかったのではなく、自分の能力の範囲でわかったつもりになっていることも少なくないからです。

小宮さんのお勧めメディア

▼日本経済新聞
切り抜きより、読み重ねが大事
気になった記事を切り抜きすること自体は悪くないのですが、ビジネスでは情報が頭に入っていないと意味がないです。入手したニュースを頭で組み立て、顧客が必要とする情報をすぐに提供するには新聞の読み重ねが必要。

 

▼ニューズウィーク日本版
海外情報を吸収し関心の幅を広げよう
日本の新聞やテレビとはちょっと毛色の違ったニュースソースとして私は利用しています。メディアとしての信頼度も高く、普段はあまり興味を持たない世界の様々な情報を入手することで、自分の関心の幅を広げています。

 

▼ニュース7(NHK)
評論家の意見より自分がどう考えるか
私はあまり評論が入らない番組が好きです。欲しいのは基本的な情報。ニュースを見ることは単純な情報から何を考えるかという訓練だからです。体調管理のため遅い時間の番組はあまり見ません。

 

▼ネットニュースは出所に注意
情報の大洪水に巻き込まれるな
ネットには日銀のホームページなどで一次情報に直接アクセスできる利点がある一方、情報は氾濫しており、人の能力で嘘か本当か判断できないことが増えています。ネットニュースはとにかくソースの確認をしてください。

 

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小宮一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ代表。1957年生まれ。京都大学法学部卒業、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。米国ダートマス大学タック経営大学院でMBA取得。96年に独立。
 

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(小宮コンサルタンツ代表、経営コンサルタント 小宮 一慶 文=吉田茂人 写真=AFLO)