今季限りでの現役引退を表明している宮里藍(32歳)が、オレゴン州ポートランドで開催されたポートランド・クラシック(8月31日〜9月3日)に出場。米女子ツアーのアメリカ国内での最後の戦いを終えた。

 結果は、「69」「67」「72」「67」で通算13アンダー、今季自己最高の5位という成績を収めた。


アメリカ国内での「ラストゲーム」を終え、いよいよ引退試合に挑む宮里藍

「アイはまだまだ戦えるのに(引退するのは)残念でならない」

 そう語ったのは、アメリカのテレビ解説を務めるジョディ・ランキン氏。彼女をはじめ、引退を惜しむ声がたくさん上がるほどの戦いぶりだった。

――もし今週優勝できたら、引退を考え直すことはあるのか?

 テレビレポーターからはそんな問いかけもあったが、戦いを終えた宮里は清々しい表情を見せてこう語った。

「もう全然、思い残すことは1ミリもない。楽しいことばっかりではなかったですけど、でも本当に、この国に来て勉強したことはたくさんありますし、今後に生かされる経験がたくさんできたと思います」

 宮里にとって、ポートランド・クラシックは米ツアーの中でも思い入れのある大会のひとつだ。

「ここが(アメリカでの)最後の試合でよかった。私にとっては”ホーム”という感じがする場所」だと言う。

 今大会のコースとは違うが、2010年に同じポートランドの、かつては全米アマチュア選手権も開催されたことがあるパンプキンリッジで行なわれたセーフウェイクラシックで、宮里は優勝している。その年の5勝目であり、ツアー通算6勝目だった。

 この年、宮里は6月に世界ランキング1位となった。その後、クリスティー・カー(アメリカ)にその座を奪われたが、このポートランドで行なわれたセーフウェイクラシックで優勝したことで、再び世界トップの座に就いたのだ。

 当時は宮里藍を筆頭に、カー、ヤニ・ツェン(台湾)、チェ・ナヨン(韓国)、申ジエ(韓国)といった上位5選手が、世界ランキング1位の座とプレーヤー・オブ・ザ・イヤーを巡って熾烈な争いを繰り広げていた。プレーヤー・オブ・ザ・イヤーは惜しくも逃したが、宮里にとってこの年はキャリア最高の1年だった。

 世界最高峰の舞台で何度となく優勝し、世界のトップにも立った宮里。身長155cmと小柄ながら、どうしてここまで強くなれたのか?

 それは、ゴルフへの取り組みを大きく変えたからだった。宮里が言う。

「米ツアーに来て、飛距離を伸ばしたくてスイング改造をしてしまった。それが、結果的には自分の感覚をなくすことになった。それから、ようやくドライバーが復調してもなかなか勝つことはできなかった。

 そんなときジエが、飛距離がなくても世界一になった。なぜか? それは(優れた)小技。やっぱり、それが大事だとわかった。それまで、ショットの練習にばかり時間を費やしていて、アプローチ、パットの(練習)時間がなかった、と気づいたんです」

 そうして2010年、宮里は米女子ツアーでは44年ぶりとなる開幕2試合連続優勝を飾った。そこから、正確なショットと、技術の高いアプローチ、パットで世界ランキング1位まで上り詰めた。

 まさにその絶頂期を示したのが、ポートラントで開催されたセーフウェイクラシックだった。そして翌年、ディフェンディングチャンピオンとして、大会の数カ月前に行なわれる『メディアデー』に参加した。

 実はそのとき、おりしも大会のタイトルスポンサーである大手スーパーマーケットの『セーフウェイ』との契約が切れる直前だった。大会を運営するTGF(トーナメント・ゴルフ・ファウンデーション)は地元の企業を募り、どうにか大会の存続を模索している時期でもあった。

 このことが、ポートランドと宮里との絆をより深めることとなった。

「今まで知らなかった試合の裏側を知って、すごく勉強することができた。この試合は、地域の人がたくさんサポートをしてくれていて、本当に温かい大会。ここで勉強したことは、今後の私の人生にも大きく生かされると思う」

 そういう意味では、最後の試合に選んだエビアン選手権(9月14日〜17日/フランス)も、宮里にとって本当に忘れ難い大会であり、思い出深い土地だ。2009年、ドライバーのスランプを乗り越えて、米ツアー参戦4年目にやっと手にした初優勝がエビアンマスターズ(当時。2013年からメジャー大会に)だった。

 いよいよ引退を目前にした宮里が、最も思い出深い大会に臨む。そのことについて、米ツアーで12年間ともに戦ってきたキャディーのミック・シーボーン氏に、彼自身の今の心境を聞いてみた。

「やっぱり……感慨深いものがある。ツアー初優勝のエビアンだからね。あのときは、本当に大きく背負ってきた緊張から解き放たれた瞬間だった。あの勝利は一生忘れられない」

 そして、宮里本人は何を思うのか。

「最後の瞬間、自分がどんなふうになるんでしょうねぇ……? でもまずは、自分らしいプレーをしたい。何より、その気持ちが強いです」

 最後の試合で目指すもの――それは当然、優勝だろう。ポートランドで見せてくれたショットとパット、そして高い集中力があれば、最後に”ゴルフの女神”が微笑んでくれるかもしれない。

 そんな期待を膨らませながら、宮里藍の最後の一打までしっかり見守りたいと思う。

■ゴルフ 記事一覧>>