残留争いの直接対決となった清水対甲府は、M・デューク(19番)の決勝点で清水が勝利を収めた。(C) J,LEAGUE PHOTOS

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 シュートの本数は甲府の16本に対して清水が5本。CKも甲府が8本で清水は1本。また記者がカウントしている決定機の数は甲府8回、清水3回だった。

 
 しかしこの試合で勝点3を得たのは清水だった。70分の先制点はアクシデント的に生まれたもの。清水はGK六反勇治が自陣からFKを蹴り込み、中盤でミッチェル・デュークがヘッドを競った。M・デュークは甲府の新里亮と頭をぶつけて、右手で頭を押さえてプレーを止めかける。しかしすぐに動き直すと右足のヒールで浮き球を前線に送り、北川航也のシュートを演出した。
 
 M・デュークは振り返る。
「ヘディングを競りに行って、相手と頭をぶつけてしまった。痛かったんですけれど、ちょっと見たらボールがあった。航也が呼んでいたので、自分の身体が動いた。航也が声を出していなかったら、他の場所に蹴っていたかもしれない」
 
 甲府の新井涼平はこう反省する。
「一瞬の隙ができたと思います。(新里)亮とデュークが競って、真下の誰も反応し切れないところに落ちてしまった。その後のリアクションも全体的に反応し切れなかった。“予想外”のことが起きても先に反応できるような集中力を保っていないと、ああいうことが起きてしまう」
 
 甲府から見てゴールの左に抜け出した北川航也に対して、まず阿部翔平が入れ替わられてしまった。畑尾大翔のカバーリングも一瞬遅れて、北川のシュートを弾き切れなかった。どちらかのリアクションがコンマ1秒、コンマ2秒でも早ければ、おそらくゴールは生まれなかっただろう。そんな「ギリギリ」のプレーだった。
 
 甲府は24節・川崎戦(△2-2)に続いて「良い内容」は見せた。しかし激烈な残留争いの渦中にいた甲府にとって、勝点4差だった清水に勝点3を与えたという結果は最悪だ。
 
 新井はこう続ける。
「ここ数試合しっかりした試合ができているけれど、結果が付いてきていない。個人として『良い試合』ではないと思っている。結果が出て良い試合で、内容が良かったけれど負けてしまったというのは決して『良い試合』ではない」
 
 今季の甲府は「一瞬の隙」で決して少なくない勝点を逃している。「取られても取り返せる」チームなら多少の隙は見過ごせても、甲府にとっては小さな隙の積み重ねが致命傷になりかねない。
 
 もちろん「一瞬の隙を無くす」ことも容易ではない。それは経験や知性、精神的な要素も含めた内面の高度な総合作用だ。しかし甲府が技術を上げる、シュートの決定力を上げることよりはおそらく近道。プレーをしっかり振り返り、ディテールを突き詰め、各自の予測力を必死にバージョンアップするしかない。
 
 M・デュークは得点の場面を振り返って、このような言い方をしていた。
「サッカーは一瞬一瞬の積み重ね。そこで起こったことに反応するものです」
 
 良い内容でなく「良い結果」を得るために一瞬の隙を無くす。ゼロにはできなくても大きく減らす――。それが残留と降格の瀬戸際でさまよう甲府が直面する難題だ。
 
取材・文:大島和人(球技ライター)