最近5試合負けなし。松本を支える田中は「自分たちの狙うサッカーをしながら、相手のストロングポイントも消せている」と手応えを得る。(C)SOCCER DIGEST

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[J2 32節]東京V 1-2 松本/9月8日/味スタ
 
 東京ヴェルディの強力アタッカー陣を素早いチェックで食い止めて要所を締め、チャンスでは怒涛のように攻め込み惜しいシュート性のクロスも放った。加えて、チームが苦しい時には長い距離を走ってフォローする献身ぶりも見逃せなかった。

「自分たちの狙うサッカーをしつつ、相手のストロングポイントを消して、いい流れで勝てています。(上位でシーズンを戦っていた)昨年とは立場が違うけど、あとは追い上げるだけです」

 そう振り返る松本山雅の田中隼磨の臨機応変な対応力、そして今何をすべきかを瞬時に見抜く洞察力が光った。35歳のアウトサイダーは、オフザボールの場面を含め全力を貫き、松本に貴重な勝点3をもたらした。

「俺が走らなかったら、松本山雅ではなくなってしまう。(試合終盤には約40メートルを走り抜くプレーを見せたが?)キツイよ、呼吸も、足も。でも、勝ってから休めばいい」

 田中はそんな熱い言葉を残し、そして「若いヤツらにも負けていられない」と語った。

 田中との逆サイドの左ウイングバックとして、90+2分までプレーしたのが22歳の下川陽太だった。国見高出身で大商大に在学中の4年生。特別指定選手ながら、26節の湘南戦で途中出場すると、続く名古屋戦から5試合連続フル出場。すでに来季の松本加入が決まっている。左サイドが主戦場であるが、右利きながら左足からの鋭く強いクロスも放つ。

 この日は59分に左サイドを抜け出してクロスを放ち、一旦DFにクリアされたが、そのこぼれ球を拾った高崎寛之から工藤浩平につなぐ2点目をもたらした。味方と呼吸が合わないシーンも少なくなかったものの、ゴールに絡むビッグプレーを見せたことで自信を深めた。

 ただ、プロ17年目、常に第一線で活躍してきた田中にとって、”プロ入り前”の下川はまだあらゆる面で子供のような存在だ。「刺激を受けたのでは?」と聞くと、「いや、いや、全然ですよ」と返ってきた。

「まだまだ、ケツが青い。ポテンシャルは高いですよ。ただ俺はあの歳の頃にJ1でプレーして優勝している(2004年、横浜で22歳の時にリーグ制覇に貢献)。だからJ1のレベルでも通用するように、もっと厳しく要求していきます。俺も負けられないよ」

  一方、下川は田中について次のように語っていた。
「松本山雅の誇り。高い要求をしてくれるので、いろんなことを考えて突き詰めながら練習から取り組めています。あのような選手になりたいです。目標の存在です」

 松本の「3番」の背中を見ながら、確実にステップアップを遂げている。下川は嬉しそうに田中への想いを語っていた。ただ……『ケツが青い』というゲキが送られたことを伝えると──。

「えぇ……そうなんですか。ただ、若さは特長だと思っています。その特長を出して、思い切ってプレーしていきたいです」

 年の差は15歳。田中のメッセージからは、もっと遠慮せず挑んでこい、という想いが込められているようだった。俺が22歳だった時のように――。
 
 そして松本は昨季あと一歩で逃した念願のJ1復帰に向けて、最後の10試合に突入する。勝点を52に伸ばし、J1昇格プレーオフ圏の5位に浮上。自動昇格圏の2位のアビスパ福岡とは勝点5差まで縮めた。田中隼磨と下川陽太。サポーターやファンの希望を乗せた松本山雅の翼(ウイングバック)が、J1の舞台に向けて羽ばたく。

取材・文:塚越 始