日本は金融緩和の真っただ中。一方、欧米では金融引き締めの政策を打ち出しています。実は現在、「金融緩和による実体経済への影響は限定的」というのがグローバルスタンダードとなりつつあるのです。世界の先進国の逆を行く日本の金融緩和、少し心配です。

今月の知りたがりテーマ 大胆な金融緩和は時代遅れ!?

日銀が「物価2%」の達成時期を2019年度ごろに下方修正しました。当然、日本の金融緩和はまだ続くでしょう。一方で米国は金融引き締め、欧州は金融緩和縮小への地ならしを始めるなど、世界の逆を行く日本の超金融緩和が目立っています。

金融緩和の目的は、世の中のお金の量を増やして、銀行からのお金の流れを活性化しようというもの。日本の銀行貸し出しは、6月末時点で前年同月比3・3%の伸びを示すなど、ジワリと増えています。しかし、これはあくまで不動産業が中心なのです。今後、あらゆるセクターで銀行貸し出しは増えるのでしょうか?

今回は、この問いの参考となる研究を1つご紹介します。

ニューヨーク大学のアチャリア博士たちは、金融緩和と銀行貸し出しの因果関係を詳細に研究した論文の中で、「ECB(欧州中央銀行)の金融緩和政策によって本当に銀行貸し出しは増えたのか?」また「企業の投資マインドを改善させたか?」を統計学の手法を用いてまとめています。

金融緩和が失業率を低下させたとか株価を上げたなど、さまざまなことが論じられています。しかし、失業率の低下や株価上昇は、その時の政府への期待によるものかもしれません。つまり、本当の因果関係までは論じられていないのです。だからこそ、詳細な研究と、それによる政策への応用が必要となるのです。

この研究結果は、以下の3つに集約できます。。釘達造龍睛惨墨造脇邁す餾弔硫射遒忙止めをかけた。■釘娵の銀行貸出金利は安定したが、銀行貸出の増加効果はほぼない。B濬亢睛は低下したが、直接的に企業の投資拡大や雇用増大には寄与していない。

世界では、「金融緩和による実体経済への影響は限定的」との見方が大勢となりつつあります。このような状況で緩和を続けることは、海外投資家からの信頼を失墜させてしまう原因にもなりかねません。

Masumi Sai 崔 真淑 Good News and Companies代表

神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。現在は、日経CNBC経済解説部のコメンテーターとしても活躍している。