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直近の航空業界トピックスを「ななめ読み」した上で、筆者の感覚にひっかかったものを「深読み」しようという企画。今回は、エアベルリンの破産申請と、双日と日本空港ビルデングのパラオ国際空港の運営事業について取り上げたい。

エアベルリンが破産申請、運航は継続

経営再建中の独航空2位エアベルリンが8月15日、破産手続きを申請した。主要株主であるアラブ首長国連邦国営のエティハド航空による金融支援が打ち切られ、再建の道筋が立たなくなった。独最大手のルフトハンザドイツ航空などとの売却交渉は続けられる見通し。エアベルリンはルフトハンザグループに航空機と乗員をウエットリースするなど、経営再建を進めてきた。ドイツ政府は同日、混乱を最小限に抑えるために、短期的な資金支援を実施する方針を明らかにした。

○後塵を拝するエティハドの立て直しは?

エアベルリンの破綻は、2016年12月末にルフトハンザグループが会社の航空機38機をウエットリースすることが報道された時点で、ある程度予測されていた。これまでフラッグキャリアであるルフトハンザドイツ航空に対抗し、エティハド航空は欧州=アジアパシフィック市場を中東ハブで奪取しようとした戦略を進めてきた。

その運航資源であるエアベルリン機材と乗員を、結局競合相手に明け渡すことになった背景には、エティハド航空が進めてきたM&Aによる拡大戦略が、買収先エアラインの業績不振と世界的原油安によるアブダビ政府の投資締め付けによって頓挫せざるを得ない、という事情があったと言える。

エアベルリンはもともと、短距離路線を中心にLCC的な事業運営を行っていたが、EC内でのライアンエア、イージージェット、ウィズエアーなどLCCとの競争上、中距離路線をフルサービスで対抗するなど、骨太の戦略が中途半端だった。さらに、ベルリン空港の整備が遅れたことで機能的なハブ&スポークの運航ができず、先に破綻したアリタリア-イタリア航空ほどではないにしても、労働組合の硬直的な対応によって生産性を上げることにも失敗したと言われている。

エティハド航空は2016年に2,000億円近い大幅な赤字を計上したが、一方でエアベルリン(29%出資)とアリタリア-イタリア航空(49%出資)への900億円もの資金投下を行っている。これに、ジェットエアウェイズ(インド)、エアセルビアなどへの投資負担が重なり、ここ2年は厳しい経営環境にある。

エティハド航空は、日本路線を現状維持としているが、成田路線を維持しつつ羽田への拡張を進めたエミレーツ航空やカタール航空の後塵を拝し、ブラジル路線からも撤退、日本支社も規模縮小傾向と聞く。日本での提携相手であるANAとの新たな取り組みを聞く機会もないことから、現在はじっと身を縮めて体制の立て直しを図るのだろうか。

7月にエティハド航空を去ったジェームス・ホーガンCEOの後任はまだ決まっていない。サウジアラビアやUAEをはじめ、中東主要国から国交断絶を受けたカタール航空の今後も含め、中東エアライン情勢は大きく動く可能性があり、注視が必要だ。

双日と日本空港ビルデング、パラオ国際空港の運営事業に参画

双日と日本空港ビルデングは8月21日、現地政府と20年間の契約を結び、パラオで空港運営に参画すると発表した。2018年に空港内に商業店舗をつくるなど改修・拡張し、運営・管理も手掛ける。総事業費は約35億円。双日と日本空港ビルが海外で空港を運営するのは初めてであり、観光客が増えて堅調な需要が見込めると判断した。民間資金でインフラを整備するPPP(官民パートナーシップ)方式を活用する。パラオ政府が49%、双日と日本空港ビルの折半出資会社が51%を出資して設けた合弁会社が空港を運営する。

○一筋縄でいかない空港運営の難しさ

双日、日本空港ビル両社は高松空港の2次審査で敗退し、福岡空港に応募していないことから、次は静岡、北海道7空港、熊本などへの応募を検討しているとみられる。そんな中でパラオでの空港運営権を獲得し、国内外での空港運営についてひとつの弾みをつけたことは良かったのではないか。

一口に空港運営といっても、上下一体なのか分離なのか。基本的に国が運営する「下」、すなわち滑走路部分の収支(着陸料等vs基本施設整備)と、「上」である空港ビル収支は、海外のコンセッションにおいては一体で民間委託されるのが標準であるし、これまでの日本のコンセッションにおいても同様である。

他方、国によっては基本施設の運用を引き続き国が担うケースも、今回のパラオやラオス(豊田通商が受注)などで見受けられた。滑走路維持・空港営業のリスクを伴わない運営は、より商業側のスキルのある会社には取り組みやすいと言える。

一方、三菱商事とJALUXが受注したミャンマーマンダレー空港は、2015年から民営活動が始まったところだが、国営会社であるミャンマーナショナル航空は、「国営会社は空港使用料を払う義務はない」などの理由で、払うべきものを支払わないなどの乱暴な対応を行なっている。聞くところでは、日本側(三菱商事とJALUX)はそれを徴収できないなら、空港ビルが国に払うべき賃借料や空港費用をその分相殺で支払わないことで費用を回収するなど、難しい運営を余儀なくされているとも聞こえてくる。

また、タイではバンコクエアウェイズがサムイ空港を保有し、タイ国際航空に1日3〜4便の発着を許す以外、残る9割の便を自社運航し多くのエアラインのコードシェアを受けているなど、所有権による競争優位を築いている例もある。何が起きるか分からない外国政府との交渉には、日本ではまだまだ商社の役割が欠かせないのだろうか。

他方、日本では仙台空港の運営権を巡って、ANAがJATCO、三菱地所等とのコンソーシアムで経営産駒を企図したが、審査委員会では「大手FSC(フルサービスキャリア)たるANAがJALの投資制限(8.10ペーパー)期間中に中堅空港での支配権を持つのはどうなのか」との意見も出て、結局敗退した。今どちらがいいのかを論ずることは難しいが、筆者としては基幹空港でなければ一定の資本力による競争にエアラインも参加することを全否定することもないのではないかと感じる。

ただそのことで、LCCを完全排除するなど利用者メリットが制限されることは行われるべきではなく、今後適切なガイドラインとチェック機能に裏打ちされた「航空会社による空港運営事例」も、門戸を閉ざすことなく検討されてもいいのではないか。空港と航空会社は利益相反という意見もあれば、「飛ぶ会社があってこその空港」との見方もあるのだから。

○筆者プロフィール: 武藤康史

航空ビジネスアドバイザー。大手エアラインから独立してスターフライヤーを創業。30年以上に航空会社経験をもとに、業界の異端児とも呼ばれる独自の経営感覚で国内外のアビエーション関係のビジネス創造を手がける。「航空業界をより経営目線で知り、理解してもらう」ことを目指し、航空ビジネスのコメンテーターとしても活躍している。スターフライヤー創業時のはなしは「航空会社のつくりかた」を参照。