教師たちは「子どものため」と酷使される

「休日もまったく休めない」「このまま働き続けると体が壊れてしまう」――。多くの教員から悲痛な声が上がる。

過労死ラインを超える残業が状態化

今年4月末に文部科学省が公表した2016年度の「教員勤務実態調査(速報値)」で教員の勤務実態が明らかになった。公立学校教員の勤務時間は週38時間45分と定められている。だが過労死ラインに相当する週60時間以上(週20時間以上残業)勤務した教諭は中学校で約6割、小学校で約3割に上る異常事態が起きている。

『週刊東洋経済』は9月11日発売号(9月16日号)で、「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」を特集。大量の仕事に忙殺されながら、「子どものため」と酷使され過労死ラインを超える残業が常態化する教員たち。その負担軽減策に迫っている。


約6割が過労死ラインを超える残業を余儀なくされている中学校の教員。最大の原因は部活動だ。日本体育協会の調査によると1週間に6日以上行われている部活動(運動部)は7割に上り、そのうち週7日活動している部活動も1割ある。

一方、スポーツ庁の調査によると、教員が全員顧問に当たることを原則とする学校が9割近くある。土日もあまり休めない教員が多いのだ。

平日は授業終了後16〜18時ごろまで部活の顧問に時間を割く。その後に授業準備や採点など教員本来の仕事に取りかかる。そうすると、帰宅は20〜22時になる。休日も練習試合や大会があるときには1日通して付き添うことになる。

部活動というと運動部のイメージを持ちがちだが、文化部にも教員たちから「ものすごくブラック」と言われるものがある。それは吹奏楽部だ。夏場でも室内で行うため、エアコンなどの設備が整っていれば、熱中症などを気にせず何時間でも練習ができてしまう。教員は単に大人数をまとめればいいというわけではなく、楽器やパートごとに細かく指導しなければならないため、かかる負担は大きい。生徒にとっても、1人休んだら成り立たないのでプレッシャーになる。

部活動問題で深刻なのは長時間労働の一因になったり、休みが取れなかったりすることだけでない。「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)によって、時間外勤務手当や休日給は支給されないこととなっている。教員には学校外の教育活動や夏休みなど長期の学校休業期間などがあり、また「勤務時間の管理が困難」という理由から。その代わりに給料月額4%分の教職調整額が支給されている。

ただし、休日の部活動には手当が出る。たとえば東京都の場合、市区町村によって多少の違いはあるが平日の手当はなく、休日は4時間以上で4000円だ。ところが、それ以上は出ない。携帯電話の定額プランのようなもので、休日に6時間あるいは8時間活動しても手当は一律4000円。これは労働法規に照らせば大きな問題だ。たとえば、休日の部活指導が5時間に及んだ場合、時給は800円相当。東京都なら最低賃金932円を割り込んでしまう計算だ。学校外に練習試合に出掛けた場合の交通費も支給されない。

部活動が大変な理由として教員がよく言うのは、「未経験の競技は教えられなくて苦しい」というものだ。顧問をする部活動について希望は出せるが、たいてい希望どおりにはならず、空きのあるものに割り振られる。

日本体育協会の調査によると、半数以上の教員は未経験の競技の顧問をしている。専門知識がない中での指導は、生徒にとっても競技の基礎が学べず、ケガにつながるおそれもある。それでも顧問になったからには「生徒のためにできることはしたい」と、ルールや競技の基礎が解説されているDVDを見て勉強したり、スポーツクラブや地域のチームに入って習ったりする教員がいる。これらの費用は自腹だ。

強制的に部活動の顧問を持たせるのは大きな問題


教師の労働環境は過酷を極めている(写真:kou / PIXTA)

部活動は本来、自主的・自発的活動だ。中学校の学習指導要領には、「生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動」とあるのみで、明確な規定や詳細はない。生徒や保護者からは学校教育の一貫として授業や学校行事と同等にみられているが、希望しない教員にも半ば強制的に部活動の顧問をさせるのは大きな問題だ。

教員の負担軽減のための施策案はいくつかある。『ブラック部活動』の著者で名古屋大学大学院准教授の内田良氏が提案するのは総量規制だ。

「部活動は週3日ぐらいの緩い、大人の草野球のようなものにする。本来部活動は20代、30代、あるいは60代になっても続けられるような趣味としてのスポーツや文化活動につなげていく、その土台を作るもの。全国大会に行かなくても、近所で数カ月に1回試合をして、勝っても負けても『楽しかった』といえる設計が必要だ。頂点を目指すのは民間クラブチームなどに任せればいい」(内田准教授)


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部活動問題に詳しい学習院大学の長沼豊教授は、「まずは休養日を全国一斉に設けること」という。やりたい教員も含めて制限をかけて負担を軽減したうえで、外部指導員の導入や授業と部活のうまいすみ分けなどを検討していけばいいという。

教員の過重負担を考えると改革は待ったなし。問題をあぶり出し、早急に解決策を打つことが重要だ。

『週刊東洋経済』9月11日発売号(9月16日号)の特集は「学校が壊れる 学校は完全なブラック職場だ」です。