日々、騙し騙されかけひきをくり返す、東京の男と女。

彼らの恋愛ゲームには、終わりなど見えない。

これまで、行動&言葉を巧みに操る男女、草食男の意外な行動に振り回される港区女子、“誘い受け”の攻防を繰り広げる男と女、互いを“最高の恋人”と称賛する仮面カップル、職業を盛って騙し合う港区男女の話を紹介してきた。

第6回は、浮気を重ねる彼氏vs疑う彼女。

愛する男の裏切りに気づき始めた時、一途な女が取ったまさかの行動とは…?

彼らのかけひきは、どちらに軍配が上がるのだろうか。




彼女も“仮女”も両立する、やり手商社マン


康介(28)といいます。丸の内にオフィスを構える総合商社に勤務しています。

住まいは北参道。表参道に近いから、女性からの印象も非常にいいですよ。しばらくはここで、悠々自適な独身生活を堪能するつもりです。

男はやっぱり、20代のうちは遊ばないとね。

僕は早稲田大学卒・大手商社マンという肩書上、女性に不自由したことはありません。

…というのは言い過ぎかもしれませんが、一線を越えた女性とはその後もつき合いを深めていくスタイル。常に複数人の“仮女”(仮氏にちなんだ、僕の造語)がいます。

本命である彼女の沙紀には、ばれていないと思います。マメに連絡を取っていますし、週末は必ず沙紀のために空けるなど、要領良くやっていますから。

でも最近、悩みができて。 “仮女”達の動きが不穏なんです。

僕の家に、自分の存在を匂わせる痕跡を残していくようになったんですよ。


“仮女”達が残していく、大胆な痕跡とは…?


スキンケアにメイク品…痕跡を残す“仮女”達


例えば、お泊り用の使い切りのクレンジングの袋を、シャンプーの後ろに置いておくとか。

沙紀が洗面所の棚に置いているポーチの中に口紅を忍ばせた、大胆な女性もいました。港区界隈で知り合った…名前はマリだったかな。

「洗面台、貸して。家を出る前に化粧直ししてくる」




そう言って洗面所に行ったきりしばらく出てこないので不審に思い、後から洗面所を調べたら、口紅を発見しました。その口紅には、マリの名前が刻印されていたので、すぐ分かったんです。

女性って恐ろしい、と思いました。僕が見ない、沙紀だけが見るような場所に罠を仕込んでおくこともあるのですから。

僕は、本命の彼女がいることを伝えた上で浮気をするタイプ。だからこそ“仮女”達は、沙紀に自身の存在を知らしめて動揺させようと必死なんでしょうね。

そんなことが重なり、僕は次第に“仮女”達の仕掛ける罠に脅えるようになりました。

部屋のインテリアは極力シンプルにして、物を隠したり位置を変えたらすぐ分かるようにしておく。“仮女”達の帰宅後は部屋やベッドの下や戸棚をくまなくチェックし、何か仕掛けていないかを確認する。

そんな風に神経を消耗するのに疲れてきた頃、僕はいいことを思いつきました。


そう、「仕掛け返し」作戦です。


“仮女”達が物を隠しそうな棚の扉に、文房具の小さなクリップを挟んでおき、僕以外が開けたかどうかが分かるように細工をしたのです。

そして毎週土曜日、沙紀が家に来る前に、クリップが落ちていないかを確認することにしました。僕が他の女性とデートをするのは平日だけですからね。

沙紀が先週日曜の夜に僕の家を出た後、早速色々な場所にクリップを仕込みました。

すると、です。なんと一週間で、罠にかかった獲物がいました。

発見したのは、土曜の夕方。夕ご飯を作りに来てくれた沙紀にお茶を淹れようと、紅茶の入った戸棚を開けようとした時です。

挟んでいたはずのクリップが、床に落ちていました。

その瞬間の僕の気持ち、分かりますか?背筋がスッと冷たくなりましたね。

平日に“仮女”の一人こそ家に来ましたが、この棚は開けていません。僕は、“仮女”を友人や本命の彼女とは分けて考えているので、僕にとって親しい人へのおもてなしを意味する紅茶は、出さないと決めているんです。

平静を装って沙紀と会話を続けながら、さり気なく棚の中を覗きこみました。僕の家は1Kでリビングからキッチンが見えるので、ヘタな動きをすると訝しがられてしまいますから。

…ありましたよ。女性もののヘアピンが。

僕は沙紀がこちらを見ていないのを目の端で確認してから、素早くそれをポケットに入れました。

まさか、こんなに早く引っかかるなんて。とりあえず面倒くさいことにならないよう、今週会った女性は徐々にフェードアウトします。

しかし、男ってどうしようもないですね。こんなリスクを負ってまで、まだ浮気をやめようとは思えないのですから。

沙紀にはばれないように細心の注意を払いながら、しばらくはまだ、このスリルの蜜の味に酔いしれたいと思います。


浮気を訝しんだ沙紀が取った、まさかの行動とは…!




誰もが羨む彼氏を持つ、美人秘書


こんにちは。化粧品メーカーで社長秘書をしています、沙紀(27)です。

会社が日本橋なので、門前仲町に住んでいます。週末は必ず、康介のところに行っています。

彼は、大学のゼミの先輩なんです。当時から面倒見が良くてお兄ちゃんのように親っていましたが、つきあい始めたのは卒業後。もうすぐ2年になります。

彼は本当に私を大切にしてくれていて、その愛情に一点の曇りも感じたことはありませんでした。

そう、最近までは。

実は近頃、様子が少しおかしいのです。例えば、家の中で妙に、私のそばにいたがるのです。

まるで何かから守っているような、それでいて何かを見張っているような、違和感。

これが女の直感でしょうか。何か怪しい、後ろめたいことがあるのでは…と私は疑い始めました。


本命の女が彼氏へと仕掛けた、罠


とはいえ、それこそ浮気を直接確かめる勇気などありませんし、彼のスマホの暗証番号も知りません。

そこで私は、一度ジャブを打つことにしました。

キッチンの紅茶がしまってある戸棚の中に、ヘアピンを置いたのです。

彼は紅茶を一人では飲まないので、来客がなければその戸棚を開けません。

だからもしヘアピンがなかったら、彼か浮気相手が気づいて回収したということになります。

そして私は、先週の日曜の夜にこっそりヘアピンを仕込んでから帰りました。そして一週間後の今日、土曜日。

彼がトイレに立った隙に、不安に胸を高鳴らせながら戸棚を開けると…ヘアピンは、そのままの位置にありました。

潔白だと決まったわけではないのに、私の心には安堵感が広がりました。彼のことを信じたかったのでしょうね。

ほっとしてため息を漏らしながらふと床を見ると、クリップが落ちていることに気づきました。なぜキッチンに?と思いましたが、彼が戻ってくる気配がしたので、そのままにして急いでソファに戻りました。

彼は特に訝しがることもなく、私に笑顔を向けて言いました。

「お茶、淹れるね」

彼は、ヘアピンを見つけた時にどう反応するのか。それを直接見たい気持ちもあり、私は彼の方を盗み見ていました。

彼…どうしたと思います?ヘアピンを、素早くポケットにしまったんです。

心臓がどくどくと早鐘を打ち出す音が、自分の耳に聴こえてきました。

―私に聞かなかったということは、思い当たる節が他にあるからなの…?

絶望する私の胸の内に気づく様子もなく、康介はにこやかに紅茶を運んできてくれました。

いつもは心地よいはずのアールグレイの香りが、ぎりぎりと私の頭をしめつける。そんな感覚だけが記憶に残っています。

でもね。私、一つだけ決めていることがあるんです。

それは、彼と別れるつもりはないということ。

この覚悟は、惚れた女の弱みであり、強み。他の女に譲る気など、さらさらありません。

これからどうするか?そうですね、まずは浮気相手の尻尾をつかんで、どう駆逐するかから、考えようかな。


浮気を続ける男vs罠を仕掛けながらも許す女…勝負の結果は?


細工をして浮気を続けようとする男と、浮気に勘づきながらも男を泳がせる女。

貴方が思う本当の勝者は、男?それとも女?

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